さよなら、過去の事件袋 (代書やさんのDocuWorks その4)
僕の部屋には机とテーブルが三つあります。一つが写真のパソコンデスクで、液晶ディスプレイが二つ、右側のプリンタに見えるものがシートフィードスキャナ(Kodak i-40)です。プリンタではなくスキャナが手が届くところにあるほうが、文書をどんどんスキャンしていくには便利です。左のディスプレイは画面を90度回転でき、こちらでワープロを立ち上げておいて文章を打ち込みながら右側はDocuWorksで証拠書類を検討したり加工したりしながら訴状や準備書面を作っています。WindowsXPは標準でマルチモニタ(一台のPCから複数台のディスプレイを制御し、各ディスプレイで違う画像を表示しておくことができる)の機能を持っていますので、もしノートパソコンを持っているなら
- 本体のディスプレイ
- 本体のディスプレイ出力端子につないだ外部ディスプレイ
でマルチモニタ環境を容易に実現できるので、これをやるためだけに古いディスプレイを復活させてもいいくらいです。二台のPCとディスプレイを単に並べてあるだけの環境より断然便利です。
で、今日は縦長ののディスプレイでこのブログを書きながら、右側のディスプレイでDocuWorksを立ち上げて作業をしています。
前置きが長くなりました。これは12月28日付けの記事のつづきです。
さて僕が昔はたらいていた、先生が朝補助者におはようと言わないという素晴らしい●●書士兼●●●●●●士(司法書士兼社会保険労務士ではない)事務所は、天井裏の一部が大きな書庫になっていました。そこにはその事務所が出来てから二十年の間に受けた依頼で作った書類がすべて保存されている、という触れ込みなんですが、この膨大なアーカイブの検索キーは『依頼人の氏名と住所』しかありません。法務局でくれる封筒に依頼人の名前を書いて、市町村別に積み上げてあるだけです。もし可哀想な補助者がサービス残業に泣きながら「以前つくった犬山の農地転用と開発許可の資料が見たいなぁ」と思ったら、はしごをかけて天井裏に登り犬山市の資料の山のなかから、依頼人ごとに大判の封筒に突っ込んである書類をひたすら探していくしかない、ということになります。
業歴の長い事務所は、どこもこんな感じなのかもしれません。僕の事務所もそろそろ過去の事件の資料が段ボール箱二箱分(笑)にはなってきました。ですので電子化のうえ、返却または処分する計画を少しずつすすめています。
方法は簡単です。DocuWorksを立ち上げてユーザーフォルダ内に依頼人の名前のフォルダを作り、そこに片っ端からスキャンした文書をおいていくだけ。
コツがあるとすれば、スキャンしてPCに収容するにあたって『なるべく、人手をかけない』ことです。依頼時期やら提出先官公署やらキーワードやらを入力しようとすると
面倒くさくなって、やる気が失せます。
この『詳しいデータを持たせようとしすぎ、入力物件の多さに耐えきれず挫折』というのが文書電子化最大の障害です。これを避けて、なおある程度の検索性を持たせなければいけません。どこかの事務所のようにはしごをかけて書庫に登るよりはまし、という程度の改善で、いまはとにかく一通りの文書を電子化してしまうことを考えます。
具体的に一つ、事件袋をカラにしてしまいましょう。手元にあるのはある債務整理事案の袋です。スキャンするにあたっての設定は前回までの記事で述べた通り、基本はグレースケール300dpiで活字の文書はOCRにかけることにします。
まず本人確認書類。これはe-文書法に対応可能な(用紙の全面をスキャンできるか、A3対応のスキャナでA4の文書をスキャンできるような)場合を除いて原本を保存しておくのが万人向けですが、これにこだわらずDocuWorksでもスキャンしておきます。これをやっておけば、データが増えても依頼人の名前を検索してフォルダを発見しやすくなる、というのが理由です。スキャンが終われば『scan-1』という文書名が自動で付与されます。この名前は変更しません。面倒です。
相談のときや事案の処理にあたって作った、手書きのメモや手控え。手書きの紙をOCRにかけても認識しないので、設定を変えておく、というのもよいのですが枚数がすくなければ設定変更せずスキャンします。
設定を変えるのが面倒だから、というのが理由です!
どうせ手控えであるかどうかぐらい、サムネイル化された文書を見ればわかります。この文書に『scan-2』の文書名がつきます。
取引履歴が数社ぶんあります。これは会社ごとにスキャンすることにします。送り状を一緒にスキャンすれば、会社名がOCRで取り込まれます。検索でひっかかります。これら『scan-3』以下の文書名がつきます。
これは結構な物量になるかもしれませんが、僕のところにあるスキャナではA4判片面をグレースケール300dpiでスキャンするのに1枚3秒弱しかかかりません。各月の利用明細の写しをそのまま送りつけてくるよな一部の信販会社の取引履歴を除いて、一業者の履歴が10枚あってもスキャンは30秒ですみます。
スキャナによっては、サイズが混在する文書でも連続してスキャンしてくれるものがあります。京都が本社で滋賀に管理部門があるA社の取引履歴には、たまに債権管理先変更のご連絡という小さな紙がホチキス留めされています。『どうする?A社~』とスキャンしてみましたところ、僕のスキャナではつつがなく読み取りました。DocuWorksのほうも、各ページの大きさにしたがって文書ができあがっています。問題ありません。
こちらのA社は縦に文書を使っていますが、大銀行の子会社になったA社のほうは用紙を横につかって細かい字で履歴をならべてあります。送付状は用紙を縦に使っています。この場合、DocuWorksの設定で『スキャン取り込み』タブの『スキャン後の後処理』について、『読める方向に全ページを自動回転する』にチェックをつけておけばスキャン後、『ちゃ~んとA社♪』とばかりに文書を並べ替えてくれます。ただし、これには3ページにつき2秒ほどかかってしまいました(使用CPUがAthlon MP1200ですので、単に遅いだけとも言えます)。後でもできる処理と割り切って、なにもせずにスキャンだけ終えておくのも一手です。
任意整理をしておいでの諸先生のところには、和解書や完済後の契約書がやってくると思います。これもなにも考えずにスキャンしておけばよいでしょう。ただ、契約書は裏うつりするかもしれません。これだけは裏紙を当てるか露出を変更せざるを得ないと思います。
僕は特定調停と不当利得返還請求訴訟でことを進めています。裁判所や被告会社から来る文書も、基本的には同じようにスキャンすればよいことになります。事件番号と当事者名、管轄裁判所のOCR結果が間違ってなければあとはどうだってかまいません。
こんな感じでやっていくと、単に事件袋から資料を出してスキャンさせることの繰り返しに過ぎませんので、他の作業や読書の合間に作業ができるかもしれません。5~10社ぐらいが相手の債務整理事案でやりとりした書類なら、手際よくやれば本を読みながら十数分で作業が終わると思います。もし資料の数が少なく重要性があまり高くない(たとえば、よくある抵当権抹消登記事件とか)書類であれば、分類せずに書類一式スキャナに突っ込んで一事件一電子文書を作っておしまい、にします。
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