電子印鑑はいかが?(代書やさんのDocuWorks その5)
最近わかったところでは、このブログの記事になんらか影響を受けてDocuWorksの導入をお決めになった同業者さんが少なくともお二人おられます。いずれもお会いしたことはありませんから、僕の友人の司法書士さんを含めれば三名。
ということでその三名様へ。もし『こんなソフト買っちまって、すずきの奴にだまされたんじゃないか…』と心が揺らいでしまったら
ひっかかったのは、あなただけじゃない
ということで安心してください(遠い目)
実際のところ、この手の汎用ソフトの使用が長続きしない大きな理由として『ソフトウェアの機能を、使用者がほしい形で使う発想にたどり着かない=だから使用者にありがたみがわかない(使用し続けるインセンティブが発生しない)』、ということがあります。よってそれをたまたま乗り越えた誰かが楽しそうに使ってれば、そのように他の人も使っていったりしてしまうもの。お三方には今しばらくだまされて、おつきあいください。
ところで今後のお話の方向を裁判書類の作成に持って行こうとしたのですが、上記お三方のひとりは行政書士さんだとのこと。ですのでしばらくは、司法書士さんにも行政書士さんにも適用可能なDocuWorksの使い道を探っていくとしましょう。いろいろ探すと、面白い機能が隠れています。(開発者に言わせれば、お前らが見つけてないだけだっ!というものなんでしょうがね)
さて司法書士も行政書士も、『職印』を持っています。ちなみに社会保険労務士法には、職印に関する規定はありません。戸籍謄本等を職権請求するときにも、請求書に鈴木の三文判を押してしまえばよいわけ。どちらの職務上請求もやってると、結構なカルチャーショックを受けます。
この職印、ときどき不便に感じることがありました。ファクスで送る文書に職印を押すことを考えてください。この場合に必要な通常の動作としては
- 原稿を起案して、プリンタで出力し
- 印鑑と朱肉を引っ張り出してきて、捺印
- ファクスにセットして、送信
- 送信後の文書を保存するか廃棄するかは、お好みで
という形になっているはずです。当事務所にあっても昨年まではそうでした。今でも、送付すべき書式がすでにある場合にはそうしています。
これが面倒くさくてもったいないと思うことがあるのです。相手方には電気信号が電話回線経由で到達すればそれでよいだけなのに、トナーやらインクやら朱肉やら紙を消費させられます。捺印さえせずに済むなら、PCで作った文書をファクスモデム経由でただちに発信してしまえるのに。
コンピュータ使用歴が長いひと(ブロードバンド以前からインターネットを使っている人)には身近なものだったファクスモデム、ADSLや光ファイバーが普及して一時は縁遠くなったかに見えましたが、こんどは『複合機が持っている一機能』として普及してきているようです。
このPCからのファクス送信機能をDocuWorksで使ってみます。職印の印影を、DocuWorksに取り込んでしまいましょう。手順です。
1.捺印
きれいな白い紙を用意します。なるべく鮮明に、いつも通り捺印してください。もし丸い印鑑を取り込む場合には、前もって数センチ四方の正方形の枠線を書いておいて、そのなかに捺印するのがよいでしょう。
2.スキャン
DocuWorksを立ち上げて、新しい文書として上記の捺印した紙をスキャンします。解像度は300dpi、グレースケールで十分です。新しい文書が一つできます。
3.切り出し
この文書を開いたら、『編集』→『部分イメージ』→『部分イメージ取り出し設定』で、解像度を300dpi、カラーに設定しておきます。その後『部分イメージ』→『部分イメージコピー』を選択すると、カーソルが十字と紙の形になります。この十字の部分を、印影の左上に持っていって左クリックし、そのまま右下へドラッグすると点線で囲まれた領域ができます。印影の右下まで囲んだら、ドラッグをやめればこの部分の画像データだけが取り込まれます。
4.印影登録
この状態で『オプション』→『DocuWorks電子印鑑』→『電子印鑑ケースツール』とたどると電子印鑑ケースの新規作成を促されます。電子印鑑ケース名、パスワードと確認入力、所有者名を適当に入力してください。立ち上がってきた小さなウィンドウが電子印鑑ケースツールで、これで印影を管理します。『編集』→『自分の電子印鑑を新規作成』で出てくる印影の欄にマウスカーソルを持って行って右クリックすると、さきほど取り込んだ印影を貼り付けることができます。幅と高さは解像度に依存して選択できますので、一番近い寸法で決定してください。電子印鑑名と有効期限は適当に決めます。これでOKを押すと、電子印鑑ケースツールの自分の電子印鑑のところに、印影が登録されます。
5.捺印(って言うのか?)
印影が表示されている状態で、印影を右クリック→DocuWorks文書に押印を選びます。開いている適当なDocuWorksの文書にマウスカーソルを移動させると、今度はマウスカーソルが羽根と点線で囲まれた領域のかたちになります。この領域の範囲内に印影が位置することになりますので、位置を決めたら左クリックして確定します。捺印されている文書は名前を付けて保存することになりますが、上書きしてもかまいません。これで捺印ができました。印影に『?』が表示されている場合は、右クリックして『署名の状態を表示』のチェックを外せば消えます。
6.できあがり
こうして作成された印影は、当然ながら他の文書にも使えます。印刷出力することも普通にできますので、出力先プリンタをお持ちのファクスに切り替えていつもどおり送信動作をとります。これを相手のファクスで受信すれば、いつもどおりに捺印された文書が…おそらくはいつもより綺麗に受信できている、ということになります。
ところが、高級な複合機のオーナーでも自分のPCから直接ファクス送信できることなど知らん、やったことない、という方もいたりして。まずお持ちの機材でPCからのファクス送信ができることを確認してみましょう。もったいないんで。
もちろん僕のところには複合機なんて結構な機材はないので、もう10年以上前に買ったOMRONの14400bpsのボイスモデムが健在で活躍中です。サブノートPCであるこれまた十年前発売開始のCASSIOPEIA FIVA-102にもファクスモデムが標準搭載されていて、Windows98SEで動くこいつにDocuWorks6.2を積んで歩くと職印持ってなくてもプリンタがなくても職印付き文書をどこか知らない駅の灰色公衆電話から普通に送信できたりします。やいのやいの言ってくる貸金業者さんたちにどこにいても迅速な対応ができて、債務整理の仕事が多かったひところは便利でした。
さて、これで一枚物の文書に捺印してファクス送信できる、ということになったわけですが、
ワープロと表計算で作成した文書(引き直し計算書と和解案、とかでしょうか?)に職印付きの送付書をくっつけてファクス送信、というような場合にはどうすればよいのでしょう?
当然ながらそんなこともでき、これまたなかなか便利です。この次は、そんな話し(複数文書の取り扱い)をしてみます。もしファクスモデムをお持ちでない方が今後複合機を導入する(あるいは、リースを受ける)際には、PCからのファクス送受に対応するもののほうがよいでしょうね。そうした機材が一台あると、なかなかの活躍をみせてくれます。もちろん中古のファクスモデムを一台ヤフオクで数百円で仕入れ、中古のPCと組み合わせて同様機能をでっちあげる、というのも楽しいです。
(2013.2.22追記)
この記事では印影のスキャンを通じて電子文書化した印鑑について扱っている関係上、印鑑や印影の扱いについて質問をいただくことがあります。申しわけありませんが、わたくしがご依頼を受けていない事案でそうしたお尋ねに応じることはできません。
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