その過払い金、どうされますか?
いろんなしがらみがあって今年前半までは他事務所からの紹介を通して受けていた債務整理のご依頼。今年第三四半期の新規受託実績はゼロです。自力での依頼誘致能力がつけば(つまり、何らか説得力あるウェブサイトのコンテンツを作れれば)、いずれは受託再開するつもりです。別段無理に忌避すべきしごとでもないし、年金&保険&労働の知識を動員して対処すべき事案も結構ありそうに見えるので。
依頼が一時的に下火になってきた一方で、入金はピークにさしかかりつつあります。数ヶ月前に受けたご依頼のうち、過払い金返還請求訴訟を起こして入金につながったものが結構出てきているため。なんだかんだと言いながらも今月と先月はそれぞれ7ケタの金額の入金があるのですが、つまり依頼人の皆さんのお手元にも相当の!お金が残っている…はずです。
が、しかし。
どうも気になることがあります。彼らが手にした、時には数百万円の過払い金は、時として右から左へ流れ去ることがあるようなのです。
類型は大きく三つに分かれます。
- 財務状況が一向に改善しない人。こちらに報告はないが、なにか債務を抱えており、百万円を超えるお金を手にしてもそちらへの支払いに消えるらしい。
- つつましやかにやっていける人。家族がしっかりしていて、本人が債務整理に入るにあたって周囲の精神的支援あるいは監督が得られる場合が多い。そうである限り老若男女不問で出現する類型。
- かえって財務状況を悪化させる人。過払い金の返金をなんらか『収入』と勘違いしているのか、生活態度(お金の使い方)が派手な方向に遷移する。なにより悪いのは、それを適当に正当化する理屈をもっており周囲の説得に耳を貸さない。この場合、依頼が終わって借金のない家庭は残ったが、金遣いの荒い家計を作り出すことになりかねない。
おそらくは人の一生において、過払い金の返還のようなかたちでお金を手にすることは一生で一度のことだとおもいます。そしてそれは、はっきり言えば法定金利を払った残りかすであって収入でもなければ貯金でもない。そのお金の使い道にはよほど注意しないと…なるほど生活を誤ってかえって不幸になりかねません。中には非常にしっかりした人がいて、『たとえ過払い金がどれだけ入ってきても、これまで通りの暮らしを続けなければいけない』と言う人もいます。一時金に頼らない財務状態を実現するという点で、これは正しい。
もう一歩すすんで、過払い金のみならずお金とどう向き合うか…を考える際に役に立つ本を、実は何人かの人に(お客さまであることもそうでないこともあります)紹介しています。
2001年に出た初代と2008年版とありますが、おそらく初代のほうは各地の図書館にあると思います。
さてこの本、特に2001年版のほうは言ってることは題名よりずっと『凡庸かつディフェンシブ』(文中の表現より)です。乱暴に要約すると
金融商品をあれこれ探し回るより
- 家計簿をつけ
- 節約し
- 仕事しろ
以上で内容の3分の2(苦笑)
ただ、これこそが正しいことは本書を通読すれば実によくわかります。僕の友人に、債務整理の依頼に来た人に『まず、家計簿をつけさせる』という対処方針をとってる司法書士さんがいますが、この判断と根っこで通じているものがあります。お金を増やしたい人にも借金を減らしたい人にも共通の重要な知識はたしかにあって、それを身につけさせる体系的教育はまだこの国にはない以上、自力で教材を探して学ぶしかありません。その最初の一冊として誰にもおすすめできる健全妥当な内容を、この本は持っています。2008年版はちょっと『投資』の記述の割合が増えてしまって少し残念な気はします。ただ、巻末の数ページにどうしようもない投資勧誘本たちの書評が追加されたのは結構笑えます。
ところでこの本、当事務所に置いてあったはずなんですがなぜか書棚にありません。これまで何人かの人に強引に貸して(押し貸しして?)きたので、誰かの所に行ってしまったんでしょうか?
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