会社がない!?
あなたの会社は、じつは存在しないのかもしれません。
今日はそんな話です。
給料未払いにかぎらず、会社をはじめとする法人を被告として訴訟を起こすさいには、訴状提出の際に添付書類として『その法人の、登記事項証明書』を裁判所に提出することが必要です。今日発送する約束の訴状にもこの証明書をくっつけるために法務局に行ったら…窓口氏が少々ふてくされた顔で僕を呼び、淡々と大騒動の開始を宣告します。聞けば
新宿区でこの会社名、ってのは見あたりませんね…本局(ここでは、東京法務局)ならこれが出てきましたが
彼が示したのは今回のターゲットとは全然無縁な瀬戸物やさんの登記事項証明書。なんで?
血相変えて事務所に舞い戻ったのは17時12分。郵便局19時までに差し出しを行わないと、約束した明日に書類が到着しません!
まずtsr-vanを立ち上げて、会社名で全国検索します。今回の会社とおなじ名称の法人は、青森のNPOから兵庫の有限会社まで6社。東京都内だけで3社あるようです。肝心な相手会社の本店は、これでしらべてもやっぱり新宿区。お客さまから教わった通りです。さらに社長個人名でも全国検索してみます。やはり、今回の相手の会社一つしかありません。
仕方がないので登記情報提供サービスへ。試しにtsr-vanで取れた社長の自宅がある都内某区で検索してみます。
エラー
各支店の所在地を入れてみます。
名古屋市・横浜市・大阪市…
エラー
だんだん背筋が冷えてきました。嫌な汗が背中ににじんできます。17時45分を回りました。
さて、登記情報提供サービスは法務局が持ってるデータをみられるわけで、ここでヒットしなければ必然的に法務局でどう騒いでも登記事項証明書がとれません。ただtsr-vanとちがって最低でも市区町村単位で指定しないと、法人の登記情報の検索そのものができません。つまり
本店所在地は不明だが、とにかく登記を探せ
と(呆然)
ところで登記情報提供サービスは、所在地の入力としては市区町村まで必要ですが、入力後の検索結果は管轄がおなじ法務局単位で、複数の市区町村にわたって出力されてきます。
さーて。東京法務局のウェブサイトに行ってみます。管轄のページを参照しながら、商業登記の管轄ごとに一カ所ずつ、まずは東京23区をしらみつぶしにあたってみることにします。つまり千代田・中央・文京区はどれか一個を入力すれば東京法務局本局から検索でき、次は板橋区を入れれば板橋出張所管内から検索でき…
って恐いぞ東京!ほぼ各区ごとに出張所があるじゃねーか!
何度かの入力と何度かのエラーを繰り返すこと、さらに15分。
目的の会社は、会社のウェブサイトにもお客さまの話からも預かってる資料からも全然関連を察知できなかったベイエリアに本店を置いていることが判明しました。
おかげで訴状表紙は出力し直しです。まだ提訴もしてないのに被告会社社長への鬱憤がたまる一瞬です。
しかし、そうしてみると登記上の本店を与那国島でも礼文島でも適当な、事業活動とは全然関係ないところに置いておいて、その本店所在地を秘匿したまま商売を続けるならばその会社の登記事項証明書を取得するにはとてつもない労力が必要になる、それこそ全国しらみつぶしで探索する必要がある…そんなこともあるのかもしれません。場合によっては、会社を名乗りながらじつは登記そのものが本当に存在しない、というパターンも、絶対ないとはいえません。いったいどれだけ調べたら、確信をもって『この会社は存在しない』と断言できるのか?
願わくば向こうしばらくのあいだ、そんなご依頼がこないことを祈ります。
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