尋問準備中のあなたへ
今日はひさしぶりに『この本をおすすめします』のカテゴリーの記事です。おすすめするのは黒木亮 著 『貸し込み』。
土地と株がどこまでも値上がりするとみんな信じていた…あるいは信じていたかった、バブル経済末期。意思能力を失った資産家の女性に乱脈融資を行った大銀行と、良識あるがゆえにその銀行を追われた元従業員、すべてを失う羽目になったにしては全然同情できない(失笑)資産家の夫、酒臭い奴・オタクのアイドル・田舎芝居・有能だが解任されるなどさまざまな個性と能力の弁護士さん達。そんな連中が登場人物です。
もちろんバブル華やかなりしころの銀行がどれだけ無茶をやってたかを物語る小説として読んでも十分面白いのですがここで注目すべきは
裁判における尋問の描写がいかにもそれらしい
点です。僕はこの本を、本人訴訟で当事者尋問あるいは証人尋問をしなければならなくなった人、およびそのために陳述書を準備しなければならなくなった人に有用な本としておすすめします。名古屋市立図書館には蔵書がありますので、借りてみるのもよいでしょう。
この本はあくまでもフィクションなんですが、実のところ反対尋問を有効に行える弁護士はあまり多くはないと思います。いわんや素人においておや、というべきで、この本(特に下巻)に出てくる被告側弁護士さん達の描写は僕にとってはコメディーに近い(だってリアルすぎるんだもん!)のですが、実在の訴訟でもそれがよほど大規模あるいは特殊でなければ、準備に怠りなく虚偽の主張を持ち込みでもしていないかぎり、素人が弁護士の追及を振り切るのはそう難しい営みではありません。
ですがその前に、
- 尋問って誰が何をするの?
- どんな手順で進んで行くの?
- 何を聞いたら、あるいはどう答えたらいいの?
そんなことが疑問になったら、傍聴に行く前にまずこの本を読んでみるといいでしょう。ある訴訟で争点になっていることと、それをどう尋問において聞き出すか・答えさせるか、敵側からの反対尋問はどのようになされるか、敵性証人をどう反対尋問するか、といった、いわば『尋問とはなんぞや』、ということを知るための、これは良書です。
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