大きくないかもしれない敗北と小さくないかもしれない勝利のはなし
今朝と昨日、裁判事務をめぐってお客さまから連絡がありました。
一つは、控訴審での逆転敗訴を告げるもの。もう一つは、債権差押命令の申立をしたら差押債権額99万円のうち2万円弱しか預金残高が無かったもの。
話だけみればおそるべき失敗なのでしょうが、さてそうでもない、という話です。
1.逆転敗訴!
逆転敗訴と簡単に言いますが、そもそも逆転敗訴の判決を取るためには第一審たる地方裁判所では勝訴判決を取っている必要があるわけで、その意味では登記申請専門とか任意整理専門とかいう同業者さんとは別世界のお話。ですが今回、裁判所にそれこそアッというまにひっくり返されて当方側敗訴の判決をもらってしまいました。内容としては金●百●十万円からの請求をかけられた僕のお客さま(被告)に対し、第一審では『10万円』のみの支払を命ずる判決をとりました。地方裁判所でお客さまは本人訴訟、原告側の弁護士を敵に回してこれなら大変結構な戦果、です。請求Aと請求Bについては、お金が原告側から被告側に動いた証拠が残っており、それを使っての追及を振り切って…いわばかなり黒い灰色の事案をこっちが白だと言いくるめてしまったかたち。
さてこの控訴審、第一回で口頭弁論を終結して和解勧試もせず判決言い渡しとなりました。てっきり原判決に変更なし、こっちが勝たせてもらえるもんだ、と思っていたら…名古屋高等裁判所というところは開業4年弱の司法書士風情が胸を張って歩いてはいけないところだったようです。控訴審での判決は請求の大部分が認容されています。第一審では10万円しか支払わずに済んだのが●●0万に激増しています。当事者尋問の内容をめぐる裁判所の判断がごっそりひっくり返ったのが効いているのですが…
でもこれって、今回せっかく勝った控訴人(敵対当事者)側は、財産がないから取れない、という部分が相当あったりします。こういう場合、弁護士サンの成功報酬は回収できようができまいが支払うもの、なのでしょうか?その場合、敵対当事者の実質的取り分はさらに減少してしまうことになります。つまり、喧嘩を吹っかけた側には名目的勝利の判決を出し、取られる財産がない側は実質的に影響なし、しかも、相当苦労させられたであろう弁護士サンの成功報酬は一気に増える、と。
そうした事情を見越してこの判決を出してきたならそりゃ神だよ裁判官、という点ではお客さまと見解を一致させたのですが、さてこれは単純に敗北したと総括すべきなのか、結果的に使える判決がでてしまったとほくそ笑んでよいものか。不謹慎ながら一番身に付く経験をしたのは、すばらしい勉強材料を手に入れた代書やさん、かもしれません。証人尋問一つとっても、証人の振る舞いを直接みている第一審の裁判官と単に文字になったものを見るだけの控訴審の裁判官とで、原告被告どちらを信用することにするかが正反対に変わってくることが現実にあるのだ、というのをほんとうに見せてもらうことになりました。また、こうした目に遭う可能性が日常的にあるかどうか、に司法書士が法律家たり得るかどうかが関わってくる気がします。年に一回こんな事態に巻き込まれていれば、大抵の弁護士は自然に技量を上げて行くだろうし、そうしたことがあると真剣に認識できない場合、ちょっと呑気な立場で裁判というものを論じてしまう『街の法律家』ができあがってしまう、そんなふうにも思えるのです。いやはや裁判って本当に奥が深い。
2.差押失敗?
続いて、90万円を超える金額(請求債権)で預金の差押を申し立てたところ、差し押さえることができた金額が2万円にも満たない、という話。
これは明確に勝利だ、と認識し、お客さまにも説明しています。
要は、とにかく一発ぶん殴ることに意義がある、そうした状況だから。少なくとも差押申立にかかった印紙・切手代が回収できたことは確定したので、それは結構ではないか、少なくとも損はしなかったぞ、と喜んでいるところです。
しかも今回の差押申立では、ほかに『あと二ヶ所』の金融機関にも差押命令が放たれており、それらは取れれば取れただけ成果になるので、これは楽しみな状況です。費用倒れになってしまえば確かに後の攻撃ができませんが、そうではないとわかってしまえばあとは吉報を待つだけ。あとはその二ヶ所の結果を待って、財産開示の申立を行ってみる予定です。
なお、この事務所ではすでに先行して裁判書類作成の依頼を受けている場合、差押命令申立書類作成でお金を取る、ということをしていません。実際にお金が取れればもらう、と言うかたちになっています。
ですのでお客さまと僕がその気になれば好きなだけ差押命令申立を乱打できる(『司法書士になんかなんの力も無いで』と僕の依頼人に言い放った債務者に対して、支払が滞る都度差押申立をぶつけている例があります)という、敵にとっては信じられない状況を作り出すことが可能です。これをうまく使って全般作戦の勝利に貢献し、最終的にその成果からお金をもらう、あとは債権差押命令申立書に執行費用として計上できる1千数百円の経費がもらえりゃそれでいいのよ、という態度、なんでしょうが…
ま、業界内での相場とは異なる決め方にはなっているはずです。もちろん単発で差押命令申立書だけ作成の依頼を受けたら僕でも2~3万円いただくとは思います。
さて、明日から出張兼旅行です。いろいろなしがらみで相談だけは聞いている控訴審期日、というのを傍聴してくるのがその最大の仕事です。この訴訟は、誰かが何かを得ることができるのかが最大のナゾ、です。
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