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就業規則という名の空証文

 少々困っています。割増賃金の計算で、です。まぁ最終的には楽しい話で終わりそうなのですが。

 さーて、あるヘタレ会社では従業員を以下の条件で雇用しています。ちなみに契約書・雇い入れ通知書は『ありません』

  1. 定休日は週1日(いきなりキナ臭くなってきましたね)
  2. 拘束時間12時間、実働時間10時間が事実上の所定労働時間
  3. 場合によっては上記から2時間程度の残業あり
  4. 常用従業員数は10名を超え、変形労働等の定めはなし
  5. 賃金はすべて月給制

・・・さてこの相談をうけたときに、そもそも労働契約上の所定の労働時間がわからないままでした。しょうがないので労働基準法第32条第2項の上限値である、1日8時間を採用して賃金計算をやってたら・・・

 今になって就業規則を持ってる労働者が見つかった、とのこと。ここでマフィア映画なら

 そいつを生かして奪ってくるか殺して奪ってくるかどっちかしろ、今晩中に

 という指示を飛ばす局面ですがそこはそれ、なるべく穏便に拝借つかまつるようお願いいたしておきます。そりゃもう穏便に穏便に(ぐふふっ)

 苛烈だったかどうだったかわからない指示をうけてお客さまから、とにかくその日のうちに就業規則が届きます。労働時間をみてみると

  1.  拘束時間 10時間
  2.  休憩時間合計 2時間15分

げ、げっ!ってことは実働7時間45分?実情と全然ちがうじゃん!

 まぁ実情がどうであろうが規定として存在しておれば、裁判所ではそれに頼ってかまわない、というのが労働基準法や就業規則の偉大なところではあります。よって今回もそうします。

 割増賃金の計算手法を定めた労働基準法施行規則第19条第1項第4号はあくまで『年間の(各労働契約や就業規則でさだめた)所定労働時間の平均』でもって割増賃金の算定の基礎となる通常の労働時間の賃金を計算するよう命じています。つまり所定が8時間より短い契約条項や就業規則の規定があるならその時間数を使ってかまいません。というよりそうすべき。本件ではその結果、年間所定労働時間合計は短くなるので{(月給額)÷(年間所定労働時間÷12)}で表されるところの通常の労働時間の賃金が…あがってきます。3%ほど。

たかが3パーと笑ってはいけません。消費税より少ないけれど所有権移転登記の登録免許税より多い(笑)この料率、特に本件事案では僕が受け取る裁判書類作成開始時の料金に匹敵する金額です。ホラ、無視できません。

 しょうがないので再計算してみます。今晩も…眠れない夜になりそうです。はぁ(溜息)

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