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一ケタ違うって!

 今日の相談は、名古屋法務局が入っている合同庁舎11階の食堂でおこなうことにしました。名古屋城を眼下に見下ろし遠く木曽御岳が見える昼下がりの食堂は、利用者もまばらです。

 内容はというと、例によって当事務所の専門分野たる労働紛争、それも割増賃金未払い事案に関するもの。さらに例によって2年さかのぼっての計算を受託するところからはじめます。お客さまはすでにタイムカードのコピーをお持ちなのですが…強烈です。

 各稼働日の拘束時間が妙に長いです。

 一週間6日出勤してます。

 で、月給制です。

・・・と、いうわけで。これまた例によって、各稼働日8時間を超えた部分の労働時間を労働基準法第32条第2項に抵触する時間外労働と捉えたのはいいとして、週40時間を超えた労働時間、つまり労働基準法第32条第1項への着目がごっそり抜けています。具体的にはこんな感じ(実際にはもっと悲惨です)。

  1. 日曜日 週休日
  2. 月曜日 労働時間9時間 所定内8時間 残業時間1時間
  3. 火曜日 労働時間10時間 所定内8時間 残業時間2時間
  4. 水曜日 労働時間9時間 所定内8時間 残業時間1時間
  5. 木曜日 労働時間11時間 所定内8時間 残業時間3時間
  6. 金曜日 労働時間12時間 所定内8時間 残業時間4時間
  7. 土曜日 労働時間10時間 所定内8時間 残業時間2時間

合計残業時間 13時間


~問題ないじゃん、とか思っちゃった人?

 もしアナタが労働者だったら、迷わず当事務所の有料労働相談を受けることをおすすめします。

 もしアナタが●●●士だったら…ご愁傷さま、としか申し上げられません。ただまぁ、内容証明作成を標榜するヘタレ業者どもを選別にかけるには丁度よいレベルの設問です。

 さてさてここでのミソは、上記の歴週のなかで所定内と書いてみた、というだけの労働時間の合計が8時間×6稼働日=48時間あること、です。つまり労働基準法第32条第1項の、週40時間の規制を超えています。よって、普通人なら契約所定内の労働時間と誤信してしまうであろう、土曜日の8時間の所定内と書いてみただけの労働時間は、労働基準法上は所定内どころか時間外労働割増賃金が支払われる労働時間、ということになります。

 ですが、一日8時間を超えた労働が割増賃金が支払われるのは(同じ日の中で、先行して8時間はたらいており、心情として残業だと認識しやすいからでしょうが)わかりやすいのに対して、週40時間を超えるとどうなるか、という扱いには今ひとつ理解度が低いようです。上記の例では、土曜日の勤務については

 朝から残業なんですよ。言ってみれば。

 と申し渡したら、お客さまが目を点にしておいででしたが、それも仕方がないことなんでしょうね。相談担当者側での簡単なチェックの仕方を挙げておくと、

-ある時間外労働割増賃金の計算のやりかたで、割増賃金が『支払われない』労働時間が週40時間を超えて存在する計算結果は、ほとんどの場合間違っている可能性がある-

 と思えばよいでしょう。フレックス・変形労働・小規模事業場の特例の有無を聞いておけば、例外部分の対応はなんとかなるだろうよ、という感じで労働相談にあたっています。ところでこのお客さまなんですが、月の時間外労働時間数が、労働災害の発生を心配すべきレベルに達しています。二年分合計して、概算で時間外労働割増賃金の総額を出してみたら…電卓の画面にはこんな数字がでてきました。

8●●…

 ~?

 動揺を顔に出さずにちょっと考え込みます。80万円ね。でも、少なすぎる気がするのです。

 計算をもう一回。電卓の画面はやはり

8●●…

 ・・・えーと80万円ちょっとですか・・・

 ついに口に出してしまいます。席の向こうから、心なしか落胆の気配が伝わってくるようなこないような。でも?思い直してケタをかぞえます。

●●●●●●

 ・・・アレ はっぴゃくまんえん??

 いちにーさんしーごーろくなな。妙にネジの緩んだ口調で電卓の数字を指差称呼しながら確認します。

数字が七つならんでます。七桁あります。ってぇことは!

 ・・・あぁ8●●万でした。すいませんすいません(大汗)

 席の向こうで二秒ほど、でしょうか。お客さまが固まったような。

いやはやなんとも恥ずかしいことを言ってしまいました。普段300万円から下の世界で仕事をしていると、この世にそうした数字があることが認識できなくなってくるようです(遠い目)。さてこの権利、この先どうなりますことやら。僕としては粛々とお手伝いするだけです。

 ですが、そろそろパートさんを募集することを考えています。そうでないと依頼受付停止に追い込まれかねません。正式な募集要項は、いずれウェブサイトで公開しますが、こんな感じを考えています。

  •  週の所定労働時間が8時間程度(←一日の、ではない)
  •  勤務可能な日・時間帯から上記の時間数勤務するフレックスタイム制を採る
  •  時給2000円程度
  •  業務は、PC入力・たまに電話番・たまに書類授受のため外出
  •  有資格者おことわり。少なくとも推奨しない(余計な失望されても困るんで)
  •  他に定職をもってる人おことわり(労基法を厳密に解釈すると、他の会社で週40時間働いていた場合に当事務所で直ちに割増賃金を支払う必要が出かねないんで)
  •  日本語に堪能なひとが理想

 ~と言った感じでしょうか。基本的には学卒の主婦の方なんかが来たらいいな、とは思っています。よその事務所を見ていると、フルタイムの人を一人だけ雇い入れた結果そいつが妙ちきりんな奴だった場合、クビにもできず労働力にもならず、かえって戦力を消耗しているというパターンが目に付きます。これは避けねばなりませんので、フルタイムではない労働市場にのんびりと募集の札をかけてみるとしましょうか。

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コメント

先日はありがとうございました(⌒‐⌒)
これからもお世話になりますのでよろしくお願い致しますm(__)m
ほんとあの金額が出てきた時は頭の中がドッキリマークでいっぱいでした(笑)

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