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少額訴訟債権執行 完了!

 朝一番の電話は、文字通りの吉報でした。市外局番02●●の電話番号に飛びつくと、ここ2週間で聞き慣れた銀行の担当さんの声です。

「きのう○○社長にお越しいただきまして、債権者さんへの振り込みをしてもらいました。私も確認しましたが、たしかに振り込まれています。」

 ひゃっほー♪

叫びだしたい気持ちを抑えて丁重にお礼を申し上げて電話を切り、いそいそとお客さまへのメールを起草します。依頼から14ヶ月超、判決確定から11ヶ月超、そして債権差押処分発令から2ヵ月半、ようやっと差押債権全額の支払をみたのです。

 その金額、実に23万418円。
お客さまには就労期間一ヶ月分の未払い基本給と時間外労働賃金が主な内訳です。

・・・ただし、僕とそのお客さまを敵に回した社長の認識では、本来労働者に支払ってやるべき給料はおそらく15万円程度だったはず。

 じゃ差額8万は一体?と言うのが今日の話題。給料未払いは時として非常に高くつくのだよ、というお話しです。

-たまに誤解される方(残念ながら同業者さん含む)がおられますが、この記事はお客さまの了解を得て、若干詳しく公開しています-

 さて今回無事に回収した23万円余の内訳ですが、より厳密に見ると次のようになります。大ざっぱに示してみましょう。

  1. 少額訴訟で支払をもとめた未払い賃金 17万9千円
  2. 訴訟費用額確定処分を経た、訴訟費用 1万1千円
  3. 上記1に対する、年利14.6%の遅延損害金 2万5千円
  4. 少額訴訟債権執行の際の、執行費用 1万4千円

合計 約23万円

 賃金の支払の確保等に関する法律第6条第1項の規定により、退職後の給料未払いに対しては年14.6%の遅延利息が取れることになっています。

しかしながら、今回敵に回した社長は

  1. 少額訴訟では欠席(このため欠席判決で全面勝訴)
  2. 任意の支払はせず
  3. 訴訟費用額確定処分の送達を二度妨害し

判決確定から訴訟費用額確定まで、無駄に7ヶ月引っ張ったのです。

そう、年14.6%の利息の支払いを命じる判決が出ている意味に気づかずに。

 支払いを引っ張るだけ引っ張って破産で踏み倒しきるならともかく、この超低金利時代に年14.6%で資金をまわすとどんなことになるか、は上記のとおり一目瞭然で、このお客さまは給料未払い発生から少額訴訟債権執行申立まで約11.5ヶ月を要しました。

きっちり計算して請求をかけたら、利息だけで2万5千円になった、というわけです。

 訴訟費用全額被告負担と認められた訴訟費用は、訴訟費用額確定処分を申し立てれば強制執行できるということでこれも遠慮なく申立てました。

 訴訟費用の1万1千円のなかには、四千円弱の出頭日当をはじめとして切手代・印紙代・登記事項証明書取得費用から距離比例の交通費480円まで、とれそうなものは片っ端から計上してかき集めたら、こうなったわけです。

 執行費用がちょっと高くないか?と、見る人は思うかもしれません。

 はい。高いのです。今回の少額訴訟債権執行申立では、『少額訴訟判決』と『訴訟費用額確定処分』の二つの債務名義をつかって一件の申立を、一つの第三債務者を定めておこなったため、債務名義二つぶん=4000円×2=8000円の申立手数料がかかっています。

 もちろん、差押えがヒットすれば手数料は真っ先に回収できるので、これまた遠慮無く費用計上します。

 債務者会社の預金残高が4000円余計に減りますが、こっちの知ったこっちゃありません。自業自得です。

 結局こうやって費用は積み上がり、23万円になってしまったのですが、そもそも裁判上の請求について、労働契約で約定した総支給額を計上しています。

 つまり、本来なら労働者が負担し、給料支給のさいに使用者が控除すべき健康保険・厚生年金保険・雇用保険各保険料および源泉所得税については踏み倒すなんにも考えないで請求をかけてみました、というわけ。

実はこの部分が推定2万円超ありまして、本当ならこの月の労働者の手取額は15万円ちょっとになるはず、だったのです。

 こちらはそうした控除と納付が適切になされているか知らされていないので、なんにも考えないことはやむを得ない、とリクツを用意しています。

 もしこの無責任社長がちゃんと口頭弁論期日に出席して、保険料等の控除を考慮した和解を持ちかけてくれば、それは応じざるを得なかったはず、なのですが欠席だの引き延ばしだのするからこんなことになっちゃった、というわけなのです。

 おかげさまで、と言いましょうか…本件一連の申立てでは、僕がいただく報酬は

  1.  書類作成開始時に 1万円
  2.  書類作成終了時に 3万1千円

 合計4万1千円なのですが、上記の遅延利息だけですでに2万5千円、結果として控除を免れた賃金が約2万円ある結果、お客さまからみると実質負担ゼロ(失笑)で手続を終えたことになってしまいます。

 ~実は本稿執筆の段になって気づいたのですが、この控除されるべき賃金部分が結構大きかったんですね。

 というわけで、今回は文字通り完全全面勝訴でめでたしめでたし、となりました。

 たった一ヶ月分のお給料、という見方をする人もいるかもしれません。
弁護士の法律相談においてそうした、泣き寝入り推奨的発言がでてくることもあります。

 あるいは本当に、着手時の1万円の料金と、数千円の実費が出せない人もあるかもしれません。

 だからと言って、当然のように『お金がないので料金の支払は回収後にしてください』などと書いてくる、そのくせタバコやスマホに毎月数千円ずつ使えるような人は僕も相手にしません。自分で最小限のリスクが取れない人と一緒に戦う気はありませんから。

 それらを乗り越えて、あえて自分の手間とお金をつかって闘うことを選び、焦らずに一つ一つ手順を踏んで権利を実現した人になら、こうしたハッピーエンドもいいんじゃないの?と思います。欲を言えば、提訴時に法定時間外労働割増賃金として2025円の請求をつけておいたのですが…

これ労基法第114条の附加金請求かけときゃよかったかも

と、お客さまに突っ込まれる前に言っておきましょう(笑)


2018.5.31追記

この記事はもう十年以上まえのものですが、『少額訴訟債権執行』の検索キーワードでいまだにアクセスをいただいています。

数年前から少額訴訟債権執行申立書作成の費用のページを設けており、書類作成のご依頼をお受けしているところです。

差押債権の類型としては預貯金から売掛金・業務委託報酬・テナントに入金する売上金等で成果を上げています。この手続きは地裁に申し立てる債権差押命令と違って司法書士でも法律相談ができるため、当事務所でもお客さまのために経験を生かして自由に助言・調査ができ、司法書士としても安心してご依頼を受けられる面があります。

この事務所は十年この方変わらずにこの分野の業務を行っております。ご興味がありましたらお問い合わせください。

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コメント

「ひゃっほー」楽しく拝見しました。年利14.6%の遅延損害金について端数の処理(計算方法)を教えて下さいませんか?11.5ヶ月を要し、利息だけで2万5千円になった計算方法は、賃金 17万9千円×0.146=26134÷12カ月=2177.8×11.5カ月=25.045円ですね?納得しました。その上でひと月とか半月なら計算しやすいですが例えば後、8日間分足すとしたら端数はどうしますか?この場合、2177.8÷31日分=約70.25円。70.25円×8日=たまたま562円と割り切れましたが
切り捨て等に決まりはあるのでしょうか?当方、計算にうとく、出来ましたら何卒ご教授
宜しくお願い致します。長文失礼しました。PSこれからも雑記帳ブログ楽しみにしております。

 長い間お世話になりました。どんなに高く見積もっても手取り16万円だということは、わかっていましたから、お給料が増えた喜びを実感しています。依頼時や途中でお支払した費用の事は、しばらくたっているので忘れかけていますから、なおさら得した気分です。
 インターネットで検索して、先生のホームページの送信フォームから相談しなかったら、ハッピーエンドにはならなかったと思います。16万円は私にとっては大金ですが、その為に親身になって、私が支払える料金で書類作成を引き受けてくれる先生は、日本全国を探しても おそらく見つからないと思います。しかも、23万円にまで増やしてくださいましたし♪
 先生に相談をご検討中の皆様、笑顔がさわやかで、心が温かく、とても信頼できる先生です。安心して相談されると良いと思います。
 先生、本当にありがとうございました。

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