独断専行ハ不可ナリ
当事務所では、たまーにですが書類添削というかたちで労働訴訟を支援します。主として、請求額が低く単純な類型(基本給のみの支払いをもとめるような)の訴訟が多いのですが、そうしたなかでもごくまれに
本当は難しいにもかかわらず、そのことに気づかずに提訴してしまった事案の収拾
というものもあります。9月最終週は、福岡と名古屋でそうした裁判の期日が入っています…いずれも傍聴には行かない、はずですが。
今日はそうしたお客さまが相談にいらっしゃいました。これで三度目の相談で、今回で準備書面をまとめて提出しないと進行上まずいのです。前回の相談で、作成方針は指示してあります…が。文案を拝見して
?
やってくれと言ったこととまったく違うことをやって、その結果どうみても主張として通らなさそうな書面が上がってきています。
事情を聞くと、書面を作っているうちに、なにやら妙な色気がでた模様。このお客さまは日本でも指折りの(それも片手の指で数えられる)一流大学を卒業された方なのですが、それでも妙な方向に突っ走ってしまうことがあるのね、と、相談室から遙か遠くのツインタワーの灯りを眺めて深い深いため息をつきました。
「仮にも日本で最高級の知的エリートを生み出す学校をお出になって、これ(準備書面を指す)ってことは… 我々は旧日本陸軍を笑えませんねぇ」
「本当に… そう思います」
四畳半の相談室に、夜の秋風が吹き抜けます。蛍光灯のノイズと、虫の声が聞こえてきます。とりあえずそのお客さまには、兵力分散と現地部隊の暴走とをきつく戒めたうえ、準備書面案を口述して改めて作成指示してお帰りいただいたのですが、帰り際にお客さまに声をかけてみます。
「まぁ、まだ今はマリアナ沖海戦といったあたりではありませんか?通常の兵力を動員して通常の戦闘ができる。空母をおとりにする必要はまだないようで」
「なるほど」
妙なたとえで話が通じる代書人と依頼人。ただ、明確な戦略なくして戦端を開いたことの不適切さについても見解は一致したのですが、彼がいうようにもう少し早くご相談いただきたかったものです。ある訴訟の途中で介入して劣勢を挽回するのは、依頼としては受けますがそれなりに難しいですし、インターネット上に氾濫する『本人だけで訴訟をやって、勝った』人の記録というのはまさに『勝ったから』情報を公開する気になっただけであって、株式投資と同様に勝った人の情報だけが広まっている、よって鵜呑みにしてはならない、ということに気づかないといけません。やれやれ。
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