傍聴ツアーはいかがですか?
昨日の出張では、ある意味でめったに見られない情景を見てしまいました。
昨日午後の日程は、本人訴訟未経験のお客さまのために花の都の某巨大簡裁で傍聴体験をしてもらい、以後自分で傍聴できるようにすること。そこで…
潜り込んだのは少額訴訟。敷金返還請求です。原告は賃借人、被告は家主。証人兼補佐人という位置づけでしょうか、不動産業者がでてきています。いずれも本人訴訟で、原被告双方とも司法書士が傍聴に来ている気配はありません。傍聴人は僕とお客さまのほかに、得体のしれない初老のおっさん1名と、サラリーマン風の無表情な中年男性1名。初老のほうは一見して異様な感じ=アウトローな気配がつゆだく山盛り♪というか、例えるならサラ金から支払督促を申し立てられて通常訴訟移行して被告席に座っていたり競馬場のまわりの牛丼やで昼間からビールをあおっていたりするような…そんな奴。ただこいつが、なぜかしきりとメモを取っている、しかも、提訴の際に渡される訴訟進行の際の照会書(和解希望の有無や交渉過程、予想される争点を書かされる)をなぜか大事に持っている、そんな法廷でした。
これでは僕のお客さまがわけがわからないので、手帳にメモをしたり図を書いたりして無言の解説を行いながら、当事者と裁判官の主張に耳を傾けていくと、次のことがわかってきました。
本訴の争点は
- 賃貸借契約の特約として記載させた『敷引き』=敷金を1ヶ月分だけ、無条件で返さない特約の有効性。原告は無効を主張し、被告は有効を主張する
裁判官の見解は当然ながら
- 当該敷引き特約は、特に十分な説明が賃借人になされていなければ無効
というもの。ただ、契約書の字面としては記載があり、署名捺印もとってある以上契約としては有効だろ、と言いつのる初老の家主、裁判官の心証開示にもかかわらず口調がヒートアップするのです。曰く
- 不動産業界はアバウトなんですよ
- そうでなければやってられません
- 退去の際の補修費用だって30万円かかるところを値引きして半額にしてやった(←じゃ当初の見積もりってなんなんだよ!と突っ込んでみたい傍聴人)
- 敷き引きの説明はなされており、署名捺印を経ている
- よって既存の判例は関係ない
- 自署したことの重みを裁判所はどう評価するのか
云々。最後はもう怒鳴ってます。これを最初は懇々と諭していた裁判官、なにを言っても被告本人の不正発言が停まらないのでだんだん眉毛がつりあがって来て…ついに。
話を聞きなさいっ!
~法廷で当事者を怒鳴る裁判官って、この商売3年やってますが初めて見ました。見てるこっちがどきどきしましたよ。
お客さまにはいきなりへんなものをみせてしまって悪影響を与えないか心配になったのですが、その後すぐに和解勧試となって間が空いたのでフォローができたのですがまあ馬鹿な家主もいたもんです。おそらくは敷金返還訴訟の被告になるのは初体験だったのでしょう。
ところでもう一点、この訴訟には妙な展開が法廷外で発生しました。和解勧試ということで別室に連れて行かれる原告さんが、傍聴席に座っていた怪しいオッサンとなにやら打ち合わせを始めたのです。原告さんは、りゅうとした身なりの長身の紳士。競馬場は競馬場でも、イギリスの競馬場が似合ってしまうようなお方でございます。この二人が仲良く並んでひそひそ話に興じる光景は…異様そのもの。怪しさの花、満開!って感じ。
しかも、このオッサンやってくれました。別室にいく際に廷吏さんから原告との関係を問われてあっさり
友人です
と言って和解勧試の場に潜り込むことに成功してしまいました!どーなってんの花の都の某簡裁?興味津々だったのですがこの時点で閉廷となり、退出を余儀なくされました。
その後。
1階ロビーで今日の感想などお伺いしていたら、その後ご機嫌な表情で颯爽とあるく原告さんが出てきました。その後、背筋の曲がった家主with仲介業者のユニットが…こちらは寄り添うように(支え合うように?)ゆっくりと歩き去ります。
このとき私はみたのです。
この原告さんと自称友人たる怪しいオッサンが別れる際に、依頼人が司法書士に向けるような礼を交わしたのを。
・・・僕の推理では、このオッサン闇で訴状作成やってるエセ司法書士ではないかと睨んだのですが・・・どうでしょうか。少なくとも、友人の別れ方ではなかったことは確かです。
なんとなく選んでしまった傍聴ですが、お客さまには妙なものを一杯見せることには成功したようです。よかったような悪かったような。
なお、当事務所では裁判書類作成をご依頼のお客さまに、原則無料で傍聴へのエスコートを行っています。遠隔地の方にはなかなか日程を合わせるのが難しいのですが、費用としては、お茶代程度もらえればよいかな、と。
これから依頼をご検討の方、参考までに。
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