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『絶対ないっ!』-失言・失言・また失言-

 理由も過程もよくわからないが、とにかく僕を手玉に取れるようになった…そんなお客さまが複数いらっしゃいます。全員女性で、しかも労働紛争のお客さまです。

 この前の回の記事を真面目に読んだお客さま方には申し訳ありませんが、記事の調子を本来の=33歳未婚独身男性彼女無し旅行書士事務所の呑気な日常の描写に戻します。なお本稿の閲覧については、文中で必要な箇所に【】で番号を付け、同箇所に関する公式見解・補足事項・解釈例規・流言飛語・誇大妄想等々について記事末尾に注釈を施しましたので、併せてご覧下さい。

 さて、昨日はそうしたお客さまの一人がいらっしゃいました。この方は先日もブログのネタを提供してくださったとっても綺麗な【1】お客さまなのですが少々遠くからおいでのこの方のために、黄色いミニカトッポを駆って駅まで行くところから、既に不穏な気配がただよってきます。先日発生の『参観日発言事件』(ブログ参照)後最初の来訪ということで、先方が【2】どんな格好で出陣してくるのかは気を付けていたつもりだったのに…この日も開戦劈頭、先手を打たれました。

第1幕 -表見妊婦さん対心裡留保書士-【3】

 電車は既に到着しているはず、ということで若干焦りながら、駅までの狭い通りをすり抜けてやってきました。駅の看板が見えてくるのですが、小さな駅前駐車場に目指すお客さまの姿が見あたりません。

 そのかわりに、黒いタートルネックのインナー(カットソーと言うのでしょうか?)にパールのネックレスが遠目にもよく映える、その上に濃い緑色のチュニックをふわりと着こなしてデニムのパンツルックという、いかにも妊婦さんとおぼしき体型の女性が、これまたいかにも嬉しそうな顔をして携帯電話を使っています。いいお天気の小さな門前町に、いかにも似合いの平和な光景です。もちろん、やさぐれた旅行書士がハンドルを握るイエローキャブなんぞには、目もくれません。

 が。しかし?

 前方30メートルから精密観測する限りでは、どうみても僕のお客さま、の顔をしていますよこの妊婦さん。

 でもこれまでに見たことのない=このお客さまとはもう半年以上のおつきあいなのですが、おしゃれの傾向があきらかに異なる方向を指向しています。思わずアクセルから足を離して…クリーピングでそろそろとアプローチします。やっぱりこの妊婦さん、僕のお客さまだ

 さてどうしよう。このお客さまは独身のはずだから、いきなりこの話題を振るのはマズイし知らないふりして帰るのは論外だし、そうこうしている間にお客さまが【4】こっちを捕捉しました!回避運動は間に合いません!

 ・・・どうも~お待たせしました~

 とかなんとか適当に言ったでしょうか。駅前のポストにハガキ一枚出してくる精神的余裕すらない【5】状態ですが、とにかく車にお乗り頂きました。ところが彼女、なんだか動作が緩慢です。腰のあたりを気遣ってゆっくり乗り込んできます。これっていよいよ、身重だから?

 逡巡する僕が介助の必要があるかないかを問う前に、素敵な笑顔でおっしゃったのです。ぎっくり腰の一種になった、と。

 なるほど、その陳述があったことは、うけたまわりましたよ【6】。僕よりも、6年ほど発生時期が早かったことになりますな。

 お話をお聞きしながら目線を合わせるつど左手に目をやって確認しますが、指輪は中指にはまった状態です。やっぱり独身だ…たぶん。疑心暗鬼になりつつもどうにか動揺を押し隠して事務所着。エントランスを歩きながら、練りに練ったつもりで、切り出してみました!

第2幕 -『参観日』の次は-

 ●●さん、今日はえ~と、なんだか少女趣味的な服装で

 と言った次の瞬間、破綻は現実のものとなりました。上記表現は誉め方としても腹の探り方としても失当だったご様子。二週間前にはフォーマルに決めてきたこの方に対して『参観日のお母さんみたい』と言い放って憮然とさせ、今日また『少女趣味』と言ってしまいましたよ思いっきり!漢字四文字で!

 鼻白む、表現がまさにぴったりのお客さま【7】。その後ご指導いただいたところによればこうした場合は、若く見えるとほめたらよいとのこと。嗚呼。

第3幕 -『絶対ないっ!』-

 この事務所では、昼ご飯に行きつけのお店をいくつかもっています。ヘタなところに連れて行って見くびられてはたまらないので、かなり慎重に選択してある手札(お店)を、お客さまの嗜好や前日の晩ご飯等【8】に応じて切り出して行くのですが、きょうはインド人が経営するカレーやさんでランチにすることにしました。ここは既に何人かのブログ閲覧者さまからも好評をいただいているお店です。昼間での打ち合わせが長引いたこともあって、十人ちょっと座れば満席の店内にはもう、誰もいません。

 このお店に行くまでは、ゆっくり歩いても数分なのですが、この時点からなぜか会話が弾んだまま、前々回お会いした時のお話が続きます。お客さまの話によれば、一番最初に電話した時の僕の印象は結構『きつかった』そうです【9】が、約半年経ったその前々回から若干変わったとのことで。

 で、その際にお客さまの依頼の見通しについて大事なことを伝えたときのことを思い出しながら、例によってこのお客さま特有の、関西風のノリでおっしゃることには

 (その見通しを伝えるさいの僕の様子がいかにも重大そうだったので)
 告白されるのかと思った【10】

 と。

 こうした冗談には免疫ゼロのワタクシ、一瞬で言い放ったのが今日のブログのタイトルの一言です。風を切らんばかりの勢いで水平から約20度右下方にクビを思いっきり振って、半ば無意識に

 絶対ないっ!

 ひとり馬鹿ウケなのは、こうした話題にはどうやら海千山千、労働相談依頼人と旅行書士なみの経験差をもって場の雰囲気を掌握することに成功したお客さまです。ケケケと笑って

 ~あ、これ関西のノリやから。

 それが関西のノリなら、来月から関西方面の受託はしばらく停止したいんですが(泣)【11】

第4幕 -誘導尋問は禁止です!-

 これで完全に僕を統制下においたお客さまの追及はなお続きます。なんだかものすごくご機嫌な表情で、「今日、どこか違ってるところに気づきませんか?顔以外で」と身を乗り出さんばかりに聞いてくるのです【12】。先ほどの一撃で冷静さを失った僕は思わず

 顔と髪型以外なら…(と腰のあたりに目をやって)服装がにんっ

 口走って思わず右上方に目をそらしますが、急場しのぎの対処は遅すぎでした。ええ、自白させられました。当初妊婦さんと誤解したことを【13】。

 なお、ここでの正解はこのお客さまがパーマをかけるようになったこと。気づいていたのに真っ先に選択肢から勝手に外した僕は文句なしの大馬鹿野郎ですよ【14】、ふん。

第5幕 -『違いますっ!』-

 カレーやさんでランチ、というよりは取調室でカツ丼、という精神状態の僕なのですが、傍目から見ているとなにやら楽しげな男女に見えてしまうらしいのです。

 ちなみに、このときの僕の格好はベージュのスラックスに水色のワイシャツ、というごくラフな格好で、一見するかぎりその辺のおっさんにしか見えないということだから、でしょうか、ついに店主がとどめの一撃を放ってきたのです。恐るべし、店主【15】。

 僕がこのカレーやさんが好きなのは、ちょっと遅めの時間にきっちりお客がひけて自分たちだけでゆっくり食後のチャイが飲めるからなのですが、例によってチャイをすすりながら、お客さまと二人でそのお店の看板娘(くりっとした目のキュートな三歳児さん)に話しかけていたら、店主話題を引き取って僕とお客さまに目をやりながら

 オトーサンですか?【16】

 ち違います違いますっ!

 予期せぬ本日第二撃に、誰が見てもそれとわかるほどムキになって否定する哀れな33歳未婚独身男性彼女無し旅行書士。お客さまはますますウケに入り、「そー言われるかと思った♪」とあくまで微笑を崩さずに、半ば満足げにチャイを楽しんでいます【17】。店主もやっぱりにこやかに

 な~んだ、カップルかと思いました

 と涼しい顔。ますます僕は自滅への道をばく進します。何を思ったか

 だだだから幸か不幸か違うんですって!

 幸か不幸か、ねぇ【18】

 と、微笑を絶やさずに突っ込んでくるお客さま。どう見てもネズミを捕らえた猫の目です!誰か助けてえっ!

 


 

 その後一日、このお客さまから『絶対ないっ!(笑)』のネタでいいようにいたぶられたことは言うまでもありません。まぁ必要があれば、コメントで突っ込んでもらいましょう。

 ただし、その後本記事執筆時に検索したウィキペディアで『チュニック』の項に

-緩やかな形状ゆえ、マタニティウェアとして用いられることもある。-

 と表記されているのを見てちょっと安心している自分がいます【19】。

さ、明日はちょっと、掛川まで行ってきます。

 


【1】当事務所服務規程により、3歳から88歳の女性のお客さまにはとりあえずそのように言っておくことにしています。よって他意はありません。出張相談に行った老人ホームで大正生まれのお客さまに「『春が来れば、女はみな美しくなる』って浅田次郎の小説(オリヲン座からの招待状)にも書いてありましたねぇ」と言ってウケを取ることを、同じお客さまに毎年やってたりしますが何か?

【2】ってこの人お客さん…だったよな。でも被告より脅威度が高いのはなぜ?

【3】表見代理・表見代表取締役といった言葉になじんでいる方は、適当に想像して楽しんでください。心裡留保も、場の雰囲気を適当に想像して同様に。

【4】だから敵ではないはずなのに…でも脅威度が(以下略)

【5】ま、社労士会連合会への書籍申し込みのハガキなので。

【6】敵対側の人間と話しをするときに多用する表現。「話は聞いた」ということは伝わるが、承服したわけではないところがミソ。

【7】33年半生きてきて初めて見る種類の表情ですな。鼻白む、って。やっぱり脅威度が(以下略)

【8】ただ、いきなり前日の晩ご飯を聞かれて即答できる人が以外と少ないところを見ると、あんまり気にする必要がない気もします。

【9】これに同意されるかた、他にもいらっしゃるんです。ごめんなさい。

【10】実際には、お客さまはこれよりもう少しわかりやすい表現を使われたのですが、とりあえずこの辺で許してください。ああ、やっぱり脅威度が(以下略)

【11】本件については、半分冗談です。

【12】つまりどこかこれまでと違ったところがあるに決まってます!

【13】この時点でのお客さまの見解によれば、アンダーバストから背中に回るリボンをあしらって切り替えになっているこのチュニックを採用したのは別途思うところがあったようですが、倫理上陳述を差し控えます。だって脅威度が(以下略)

【14】髪型の変化は明白過ぎて思わず外した=その結果墓穴を掘ったのですが、離婚直前の中年夫婦ならこの辺に気づかないことはあり得るんでしょうか?

【15】ちなみにこの店主夫妻、どうも一度訪れた顧客をかなり覚えているフシがあります。誰かリピーターにして試してみたいのですが、今回のお客さまを再度お連れするには少々勇気が足りないことを認めます。

【16】ちなみにこの店主、日本語能力は十分です。よって本発言にはなんらか日本人並みの作為を感じざるをえません!

【17】本当に関西ではこのノリが標準なんですか?だったら来月から関西方面の受託は(以下略)

【18】どう答えても不利になる陳述の一例。裁判書類、とくに準備書面作成時に、敵にそういう状況を強要する求釈明をぶつけるのが大好きなのですが、実際やられた奴の気持ちがよーくわかりましたよ。

【19】・・・でもこのお客さまには、今度お会いしたときによーく謝っておく必要があると思っております。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいよおぉ(泣)

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