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給料未払い:悩める民事調停申立人

 給料未払いへの対応について検討しているお客さまにお尋ねします。

 『民事調停』をご存じですか?当事務所では、今月三件のお客さまの調停期日が設定されています。請求額も合計1000万円弱と、なかなか馬鹿にできません。

 さて内容証明やら少額訴訟といった、ヘタレな依頼誘致型ウェブサイトの説明を見ると一見華々しかったり強力そうだったりするような手続き達に隠れてしまっている、ちょっと地味なこの法的手続き、当事務所ではわりと重視しています。労使間に穏便な解決を模索するために。


↑うそつけーっ!

とおっしゃったごく一部の(一般先取特権を行使された方、完全勝訴後訴訟費用額確定処分申立までご依頼の方、訴訟係属中に附加金の請求をつける請求拡張の申立をなされた方、仮差押えを打ちまくって信用不安の惹起を狙った方等々)お客さま、ちょっとだけ黙っててください(笑)


 お話がそれましたが、僕もしょっちゅう過激な活動を企ててばかりいるわけではございません。原則としては、お客さまと会社側にあまり負担をかけないで紛争を解決できるのが理想だと考えています。

 ですので、裁判書類作成受託にいたる過程で会社側からなんらか譲歩を得ることができそうな場合には、民事調停を選んでもらう方向の提案をすることがあります。また、こちらから提案した民事調停が不調になって訴訟になる場合に、追加で料金を請求することはありません。あくまでも民事調停申し立てから不調に伴う訴訟提起、その和解ないし判決までを一連の手続として扱うようにしています。

 ただ、どうもその民事調停選択の成果が、お客さまにわかりやすい形ではあがっていません。正直言って少々困惑しています。

 先ごろお客さまの希望により民事調停を経由した申立について、期日三回で不調にして通常訴訟に移行することに決めたところなのです。

 さてこの調停、一回目は会社側欠席、二回目はペラ1枚のしょうもない答弁書出してさらに引き延ばし、三回目の期日まえにようやくペラもう2枚の準備書面を出して適当なこと言ってきた、という展開。どうみてもこのブログにネタを提供してくれているとしか思えませんが、今回の相手方、経営理念に『人のいのちとくらし、人間らしい労働を、最高の価値とします。』などとうたってます。

 あーりーえーねー(絶叫)

 少なくとも見かけだけは労働者が労働者のために作った団体を装うこの連中の対応をみるかぎり、どうみたって昔なつかし労働貴族(むかし陸軍いま総評、なんて言葉が健在だった頃のね)のたまり場です。代表者さんは元全共闘の闘士だったご様子ですが、
結局のところあんたも日和ったの?(冷笑)
と突っ込みをかけたい気分です。

 一昨年からこっち、割増賃金支払い請求の訴訟をおこせば共産党系の事務所が向こうに回るわ調停を申し立てれば相手が自称労働者団体の仮面をかぶってるわ、まぁこの国って誰がホントに労働者側に立ってるか全然見えないことを痛感させられています。一体何が悲しくて、労働訴訟で労働側に味方して、●●労働弁護団所属の弁護士さんと戦わねばならんのか(溜息)

 まぁそういった、立場が流動的な職業代理人のセンセイ方にも助けられて…

 会社側は民事調停の場で、しばらくは不毛な言動をとり続けることができるようです。そのあおりを食って民事調停期日は、しばらく漂流を続けるわけ。

なにしろ基本的には労働紛争に関する民事調停の手続きでは、進行上相手方に対して強制的になにかすることができないので、それこそやりたい放題におちょくられることもあります。欠席したってかまわないし、引き延ばしだってOKだし、その日の気分で調停不調にしたって相手方なら別にかまわない。これはお客さまからみて、民事調停の欠点として認識されてしまう面です。

 ですが、お客さまの不満をなだめることができれば、まだ訴訟提起のまえに民事調停を経由するメリットはあります。その最たるものは、調停委員の皆様からこの申立(が、訴訟になった場合)への心証をある程度聞けること、でしょうか。地裁の本庁が遠く、労働審判を選びにくい裁判所でこの申し立てを選ぶこともまだあるかもしれません。

 ほんとうなら、勝ち負けを正しく見切ることができる相手であれば民事調停でちゃんと解決でき、そうしたほうがよほど出費は少ないのにね、と相手方会社の対応に哀れさを催すこともありまして、ちょっと複雑な気分なのです。

 簡単に言うと、徹底的に叩かれなければわからない相手には民事調停は不適に見えてしまう、ということ。訴訟にしてしまえば確実に勝てるだけの証拠をだして民事調停を起こした場合、会社の取るべき対応としてはさっさと話し合いに応じていささかの譲歩を労働側から得るのがいいのですが、それがお馬鹿さんにはできないのです。もちろん上記のように、訴訟にした場合どうなるかの感触が見えて便利なのですがそのへんの説明がお客さまに足りないと、なにやら無駄・または不可解なことをしているように思われてしまう。

 さて来週、あたらしい給料未払い事案を受託します。内容証明による催告発送段階で、会社には早くも弁護士さんがついたとか。ってことは会社の認識として、それだけのコストパフォーマンスを代理人に期待している(って無理なのに)ということなのですが…

 つまりこのヒトも、通常訴訟を起こされないとわからないのかしらん?

 それでもやっぱり民事調停を、一度は通してみようかどうか、またお客さまと一緒に悩んでみるとしましょうか。


2016.4.1.加筆

労働紛争での民事調停はこのブログ執筆後、現時点で一件の申し立て書類作成のご依頼をお受けし、その一件は調停成立となりました。受託件数が減った理由としては上述の『相手がダメなやつであることによる、成立のしにくさ』のほか労働審判手続の導入により、特に地裁本庁がある簡易裁判所で民事調停を選択する必然性が薄れたと考えています。

調停不調後通常訴訟に移行したものは、全件で労働者側の主張をほぼ認める結論を得ています。

労働紛争とは関係ない紛争で民事調停(家事・特定調停除く)を選択する案件もありますが、こちらは全件で調停成立となっているのが特徴的です。相手は自動車メーカーからその辺の個人までさまざまです。

派手に争いたくない・相手を追い込まずにすむ、という民事調停の特徴は、健在なのだと考えています。

2020.12.01修正

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