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第一 つねに実質を見よ

第二 迷ったときには上位の原則へ戻れ

以上。


・・・先日コメントで質問を放ってきた、登記は他の事務所へw司法書士さんに対する説明をこれで打ち切ったら、あるいは訴えられるかもしれません(笑)

あえて公開状態での回答を求めてきたこと、それに気づいたこっちを『鋭い』と評したあたりに若干きな臭いものを感じますが、あえて乗ってみますよ。その思惑に。

ではでは、まじめに行きましょう。

 


 お尋ねの、「職場のトラブル相談ハンドブック」P45の大阪地判平15.4.25(徳州会事件判決ですね?)について、一般的な意味での上級審判例は『ないこともない』です。労働時間の何たるか、についての大原則を高々と称揚したものとしては最高裁判平12.3.9 三菱重工業長崎造船所事件判決が超有名ですね。見といて下さい。

 ただし、これは単に僕が冒頭で言ったのと同じこと=労働時間とは労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間なんだけど、そりゃ当事者の合意や契約できまるんじゃなくて、(いわば、個々具体的に)労働者がやってることを見れば客観的に決まるもんだぜ、と言った点に価値があり、じゃあ客観評価のためにはなにが必要か・どこを見ればイイかは、同判例からは全くわかりません(笑)。ご期待の地裁高裁レベルの判例はそれこそ佃煮にするほどあって、これまた何を根拠に判定しているのかの決めてを導き出すことはできません(爆)。

と、まずはがっかりしてもらいましょう。ここから先が労働法の面白く意義深いところなん で。

 まず、今回の質問で登記は他の事務所へw司法書士さんが念頭に置いている事案は、例の『不良社員から零細企業を守れ』というものですね。そのために、労働側のワタクシに、信条をねじ曲げてあえて会社側に助言せよと…ああ、なんて切ないワタシ…よよよ…(泣)

↑冗談です。すんませんなぁ。

 これに対して参照資料の徳州会事件は、判決文を追っていくと看護婦さんたちの職場残留時間(というのは会社側の言い方で、労働側から言えば未記録残業時間)の何たるかを考えた際に、たぶん一番の決めてとして「(ナースステーションという場所柄、)何の理由もなく終業後にそこに残留していた理由があったとは考えられない」という点を裁判所は評価しているように見えますよ。

 つまるところ、徳州会事件判決は登記は他の事務所へw司法書士さんにとって、いま持ってる事件についての評価のメルクマールたり得ません。安心して下さい。もちろん、こんな零細企業での裁判例があるはずないので、何かに頼ってどうこうする、ことはかなり困難です。

 だったら原則に戻って考えましょう。そもそも、その不良社員は勝手に作業ペースを落としたり勝手に事業場外に出て戻ってきたり、という勤務状況だったわけですが、これは労働者として『使用者の指揮統制下にあった』と評価しうるのでしょうか?

 あるいは労働法のさらに上、たまには契約自由の原則まで戻ってみましょうか?働いた時間だけ金払う、という契約においても、サボって(まともに働かないで)金取っていい、ということはないでしょう?むしろこの不良社員のやってることは、単に民法に足場をおいたって債務の不完全履行としか言いようがないはずです。

 でも判例体系には、この点で使用者側有利な判決を出してるのって余り多くない、とおっしゃる?なるほど。でも、僕は判例体系(労働法)1427の77ページ所載の東京地裁平11.7.13は、労働者側の仕事量の実質に着目して労働者側の請求を蹴った注目の一品だと思っていますよ。これも目を通してみて下さい。この事案では使用者側は積極的に残業抑止の措置をとっていませんが、それでも使用者側が勝ってます。

 それにね。

 お持ちの事案では、使用者に事業場からの退出義務を課すかいなかもさることながら、見るべきはこの不良社員の労務の提供の質だと思うのですよ。むしろこれについては、サボタージュの有効性について論じた先例(懲戒処分や、組合活動に関するもの)を検索してみるほうが早いのかもしれず、単に労働時間とはなんぞや、というような、たまたま気づいた技術的な点だけからみていると行く末を見失います。

 最終的には佃煮にするほどの集積のなかからほんの少しずつ自分が手がかりにできる部分を拾っていって、最終的には自分が自分の見識で世に出すべき一品(訴状なり答弁書なり、労基署への回答書)を作るのが僕らの仕事であり、欲を言えばそうした一品のなかに、後世の同業者達が参考にしてくれるだけの価値を持たせるのが僕の理想なのですが、それを可能にするのは、時には現場に行くなりなんなりをやって『その事案では、実際になにがどのように行われていたのか』を見極める目と、それで迷ったときにはともかく大原則に立ち返ってゆっくり考えてみること、でしょう。

 僕はそう思っているし、それが必要だからこの分野(労働紛争の解決支援)が好きなんです。(ま、反対に、都合の良いときだけ形式的な契約書の文言に拠ったり事実から遊離した時間稼ぎだけは上手な会社側代理人に会うと、張り倒したくなるのですがね。ケッ!)

 だから事例を探しているだけだともうどうしようもないし、登記は他の事務所へw司法書士さんのように、他の先生お二人に相談してみて意見一致なら採用、だとこの分野ではたちまち動けなくなります。

 言ってみればこの分野の裁判例って、例え職場で少数派になっても、嫌がらせを受けても、首になっても、自ら省みてなおくんば千万人といえども吾往かん、的な先達が積み上げてきたようなのばっかりですからね。そんなこともあって、誰かが作った研修資料を見せて、これを作った人達はこの分野では有力なんだよ云々、とかいう発言には僕はとっても冷たいわけで(苦笑)

 以上でとりあえず、登記は他の事務所へw司法書士さんには、一応聞かれたことの答えと、参考裁判例の紹介と、それから若干のお説教(ですよ。そちらでお持ちの思惑の対象者がだれか他にいるならば、その人に対するものでもありますんでよろしく)をお届けして、本日はこれまでとします。それ以外の人には、まぁ僕はこんな感じで仕事やってんのよ、ということでご納得いただくとしましょう。

 ちなみに明日は、三河にて労働紛争に関する実地調査でございます。やっぱり見てみないとなんともならんものって、ありますからね。自称出不精な登記は他の事務所へwさんも、どうです?たまにはその事業場など覗いてみては。

2020.12.01修正

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コメント

天国から地獄、不幸中の幸いか?

まず、ご回答ありがとうございます。「現場を踏め」は、私のモットーでもあり、実践しています。私が出不精なのは、もう少し別の意味なのですが、また話しましょう。

「天国から地獄」
実は、例のハンドブックを空き時間に読んでいたところ、「定期健康診断云々」の事案があり、ふと自分が健康診断を受けていないことに気づき、今日の午前中に病院へ行きました。

結果は「不整脈」→「24時間心電図着用」と尿酸値↑との診断でした。不整脈は良性のものか悪性のものかを10月に精密検査しますが、「多分大丈夫でしょう?若いんだから。」と言われました。
よって、カフェイン、ビール、酒、急激な運動は厳禁となり、管理人さんと飲みに行くときは「ウーロン茶」になってしまいました。

公開質問状などという大それた意図はありません。この前お会いしたときに、管理人さんのスタンスは、「ガラス張り」だと言われていたので、むしろ、メールでコソコソ質問する方が失礼かと思っただけです。思った通り、ブログにてご回答頂きました。

但し、公開のブログを運営されている以上、誰が見るかはわからないというのは、仰るとおりだと思います。

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