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給料未払い:二つの内容証明

 平成16年8月○日の給料日に支払われるべき、割増賃金債権の時効消滅を阻止する使命を帯びて天白郵便局から放たれた、二つの内容証明。

 一つは名古屋へ、一つは遠く首都圏へ、いずれも消滅の前日に到着して、まずはよくその任を果たしました。

 二つの債務者会社の対応は、まさに対照的なものでした。

 一つは、ためらいながらも平和へ歩き出します。

 もう一つは、自らの正当性を叫びながら、無謀な戦争へと。

 僕は給料未払い事案での内容証明による催告の効力を、積極的にはみとめていません。内容証明ぶつけたから社長がびびってお金を全額払ってきた、なんてのは行政書士が出てくる漫画の世界にしかでてこないファンタジーだ、と思っています。

 しかしながら、彼我の状況を勘案して『できるだけの』(←僕の仕事を実際に見た人は、この表現にそれぞれ感慨はあるでしょうがそれはさておき)工夫をこらします。

 急転直下の和解交渉へなだれ込んだのは、僕の名前を入れて放ったほう。

 会社側が言い逃れの主張をよこしてきたのは、ごく普通の素人が出す文案を装ったほう。

 だからといって僕の名前が出たことが決め手になったかどうかはわかりません。支払義務を認めてきたのは家族経営の企業であり、社長夫妻の精神性を考慮して最初に『社会保険労務士 司法書士 鈴木慎太郎』の名前を出すことで優位に立とうとしたことは事実ですが。

 その場しのぎの言い逃れに走った方は、外資が入っている結構な規模の会社です。組織で対応して来る以上は、間抜けで無害な素人を気取ったほうがあちらのミスが誘えるんじゃないかしら、と思ったのもまた、事実です。自発的に当方側有利に使える証拠を送ってくれたのはまぁ、天佑でしょうが、これで安心して提訴できる、ってもんです。ごちそうさま。

 会社側からみた紛争解決へのトータルコストとしては、前者のほうが安くつくに決まってるのですが、ある程度の大きさの組織の場合2~3発ぶん殴られないと自分の負けを認められない、そういう見本は我が国の現代史にいくらでも転がっています。

 さて、今回は『ある意味で』二つの内容証明はそれぞれ労働側の立場を勝利に向かって大きく前進させました。

 一つは、直接的に。順当に行けば来月早々に、請求額の7割を越える和解金の受け取りを終えて提訴前に解決、となるはずです。7割とはいえお客さまが持ってきたデータから、ちゃんと計算をしたものですから…当初のお見込みと比べたら…ね(笑)

 もう一つは、間接的に。単純に漫然と、当該労働者は管理監督者にあたらない云々、という反論を出して反撃主正面を自ら限定し、かつこちらが持ってない大事な資料を送ってもくれました。こちらの戦力を過小評価し初動対応を誤ったのが、敵の敗因と総括できるでしょう。ただし勝つだけ勝ったあとでちゃんとこの総括ができるのは提訴後…たぶん来年明けになるはずですが。

 上記はいずれも7ケタのお金の請求ですから、内容証明一つでポンと支払ってもらえることを期待する自体野暮というもの。だからといってなにも考えずに同じような文案でいつも出す、ということはこの事務所では絶対に、しませんよ。転んでもタダでは起きないつもりでやっているのが、今月はたまたま連続してうまくいった、ということのようです。

 ともあれこれで、訴状を起案する事件が一つ減ったのは事実です。ありがたいことです。

 しかし。

 今月新しく受託した事件はこれまた7桁の請求額になるのですが、これまた日報が紙袋に一杯(約2kg)あるんだよな…


残業代未払いでは初動の対応から、相手の状況をさまざまに考えてアプローチを試みるようにしています。常に内容証明を使う必要すらありません。こののほか、給料未払い事案に対する法的手続きは当事務所ウェブサイト『こちら給料未払い相談室』でも説明しています。

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