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三年で 破産。

 いよいよ会社をつぶすことになりました。

 おお、すずきの事務所もついに逝ったか、と思わないように(苦笑)

 もちろんよその会社の話です。より正確に言うならば、僕が破産に追いやった、という話。

 さて、大阪所在のこの会社およびその社長に対しては、今年2月の受託以来のべ三名の労働者から併せて

  • 一般先取特権による、売り掛け債権の差押え(請求債権約185万に対して全額回収)
  • 一般先取特権による、銀行預金債権の差押え(請求債権約275万に対して175万回収)
  • 110万円の支払を命じる勝訴判決の取得
  • 売掛債権に対する、債権仮差押え
  • 社長が従業員として働いている会社への給料債権に対する、債権仮差押え

といった手続きで回収・追及をはかってきたところようやくお手上げになったらしく、破産手続きに入ると言ってきたようです。

 さて破産されたら給料は回収できないのではないか、という考え方もありましょうが、この会社に関しては『9月末までに破産させてしまったほうが、全労働者に対する回収給料の総額は最大化できる』理由があります。

 関心がある労働者さんならご存じの、未払い給料の立替払いの適用になる退職労働者が、上記三名のうち1名、さらに手続き外でもう1名いるからです。この2名の退職時期から計算したタイムリミットとして、

 9月までにこの会社を破壊して、かつ社長を追い込んでお手上げにさせること

 という選択肢も、持っておりました。この時点で社長の自宅すら競売にかかっており、単に社長がダメだからつぶれる会社だ、ということは明白だったので。もちろん奇跡的に立ち直って全額弁済してくれることも一応考慮はしましたが…7月に至って分割払いを滞らせてくれました。なら今月中に、知れている取引先&勤務先を債権仮差押えで絨毯爆撃しまえば、のこり2ヶ月でぶっ倒れるだろう、と。仕掛けてみたら案外速い反応でした。もう一月ぐらいじたばたするかとおもっていたのですが、たぶんこの社長には交渉能力が欠けているのでしょう。他人事みたいな感じで破産に入ることを通知してきました。

 コンテンツのネタとしては絶好のものを提供してくれたこの社長ですが、あちらさんにはまだ誤解があるようで、今回断行した仮差押えではべつに債権を確保できずともかまわない(あればハッピーですがね)、というしくみになっています。前述のとおり

 取引先に信用不安情報をばらまければ、それでOK

 ですから。よそより安く仕事するだけが取り柄であるうえに、取引先がわりと特殊な世界の零細ベンチャー企業なので、怪しいぞと噂をたてればみんなドン引きします。つまり、仮差押えにはそうした副作用もあって、今回は積極的にそれを狙って使った、少なくとも、計算に入れて申立時期を決定した、ということ。

これで給料立替払いが使えなければ、

破産だけはなにがなんでも避けろ

という方針にならざるを得ないのに対して、使えるならば

破産させてしまえ。どうせ潰れるならば速く

と、文字通り正反対の方針になります。なお今回零細企業なので、事実上の事業停止でも立替払いの対象になるところ、この社長すでに労基署にご出頭のうえお手上げの意思を伝えたということ(労働保険料も滞納してますのでね)で、僕のお客様が立替払いの適用を受けるのは確定です。

 かくして。現状で延べ2回の強制執行と3件の仮差押え、1件の勝訴判決と1件の債務弁済契約後の任意弁済若干、最後に未払い給料立替払いを使って、現時点では手取り給料の約70%弱(当事務所の料金・実費等手続き費用考慮後)を回収できた、ということになります。単純に債権額と回収額だけを比べると、59%。

 破産寸前で年収1年分の債務超過と社長の給料1年分以上の使途不明金があって、銀行預金はつねに残高数千円、売り掛け債権はあるのかないのかわからない、社長は謝罪ひとつ口にしない不良外人で、関係企業の経営者もスピンアウトしたのかリストラされたのか不明の無責任男だの日本語の契約書一つ満足に書けない怪しい御仁だの、しかも敵の所在地は大阪で当事務所は名古屋、とひとしきり無茶苦茶な条件を取りそろえてのこの成果、なので一応お客様にはご納得いただきたいのですが…だめかしら?

 だってこの案件、たとえば弁護士に委任して勝訴判決取って25~20%、その後強制執行してさらに数%~10%は確実にもってかれるんですからね。もちろん、手続き中に破産されたらもっと悲惨な結果になることは当然です。そこでは、彼らの着手金の高さがそのままコストロスになって効いてきます。

 うまい具合に一般先取特権での差押えに慣れた弁護士さんに会えればコスト面ではまだしもですが、どうもそれってあまり期待できない、ということは大阪地裁執行部における(ナ)号事件=債権及びその他の財産権を目的とする担保権の実行及び行使事件の番号をみれば推測できます。毎月20件程度としか思えない申立のすべてが給料債権担保のための一般先取特権実行というわけではなく、先取特権として比較的知れている動産売買の先取特権に基づく申立が相当数入っているはずだから。

 とか、言ったって。
そりゃお客さまからみれば悔しいし不本意に決まってます。メールなんかで気を遣って喜んでみせてもらえると、こちらも一層つらい。

 もちろん適当に引き延ばして破産されるよりよほどましなのですが、なら破産を避けていれば全額払ってもらえたんじゃないの、というファンタジーの存在可能性を突きつけられると、そりゃ可能性としては絶対ないとは申せません。お客さまの心情として、これだけの犯罪行為に関与した企業が破産という形できっちり消滅することになにがしかの価値を見いだしてもらえるか、それは彼らの内心の問題です。少なくともこの案件では、僕がお客様と気持ちよく勝利を共有することはできないでしょう。残念ながら、ね。

 さてさて、いろんな悩みや迷いはあるのですが、とにかく敵が破産に向かうことになった、これで『実績としての、最低の回収額』が確定しました。

 そう、ここからなにもしないならば、確定。

 ここから先は仕掛けて成功すればさらに上積みを目指せるので…

 僕としてはまだやるよ、破産と言われたからってそれで勝負を投げるつもりはないよ、と申し上げておきます。

 さしあたってはこの社長個人の破産申立に際して、免責不許可事由にあたると言ってみましょうか。いま手を見せられるのは、そのくらいですかね。

 世の司法書士さんの大多数は『破産を手伝うひと』。

 これに対してぼくは『破産においやるひと』。

 うーん。われながら妙な立場になったもんだ、と思います。それで労働者が助かるなら、今後もそうするよ、と、これだけは確信を持って言えます。

 さ、今回潰すことになった会社は、登記上の設立から3年ちょっと。

 僕の事務所は8月1日で、創立から3年立ちます。

 今年初頭によその事務所の3周年式典、というのにでましたが、これはこれで○○な、という感じ。まさに三者三様の三年ですが、そっちの事務所は鉄壁の財務基盤を確立しつつあるようですから、次の三年ではまず僕が脱落しないように注意しませんと。

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