見栄の代償 1500円
いまのところ全国唯一の『旅行書士』を標榜しております当事務所。知らないところにいって現地調査から裁判所での手続きからいろんなことをしてあるく、という仕事の性質上、大小様々な失敗を出張ごとに繰り広げています。というより僕が出張でやってることの半分は『失敗をなかったことにする』ための諸作業といってもよいくらい。
7月7日の出張では、その『失敗をなかったことにする』ために…ちょっとお金が必要でした。
当日行ったのは、大阪駅にほど近い某所での現地調査。これから予定している債権仮差押え申請のために、敵の潜伏先=債務者会社の新しいオフィスが入居しているビルの現状を調べてくるのが目的です。名古屋発朝8時ちょうどの名神ハイウェイバスはその日、45分ほど遅れて到着。調査にさきだって、お客さまと打ち合わせをかねて昼ご飯にします。
これからの申請に備えて、縁起を担いで『カツ』に。とんかつ定食をいただきます。これが午後12時30分頃。
調査先は、そこから徒歩で10分くらいでした。ビルの外観・面積・管理業者・表札・集合ポスト・入っている郵便物等々・写真にとれるものは写真にとって…データを整理したいのですが、いくら冴えない雑居ビルとは申せ、集合ポストの前でそんなことやってたら間違いなく不審尋問を受けます。さて喫茶店とかないかしら、と探して歩くのですが、時間が時間だけあって勤め人の皆様で満席になっているかコーヒー一杯500円、みたいなところばかり。
探し歩いているうちに。ちょっと落ち着いた雰囲気のお店が。上はホテルということのようですが、カフェレスト、って言ってるようだしランチ1200円ということは、飲み物一杯ならそう大した出費でもないでしょう。
入って30秒。犯した間違いを自覚するのに、時間はかかりませんでした。
メニューには、コースを基本とするランチ4種類の選択しかなかったのです。お値段、すべて1200円。幸いにして、食後のドリンクはふくむようです。
思わず意識が遠くなります。
右向こうのテーブルには、ちょっと怪しい実業家風の脂ぎった男とその愛人風の若い女。
左奥のテーブルには、こちらは奥様3人組。今年のサラリーマン川柳に出てくるような光景ですな。妻はセレブでおれセルフ、って奴だ。会話自体はセレブでも何でもないのですが。
とかお客の品評をやってる場合じゃありません。思わず袖まくりしていたワイシャツをちゃんともどし、かつネクタイを締め直して背筋を伸ばします。ここではある程度真っ当な人間を演じないと…バブル紳士や騒音おばさんと一緒にされたくはございません。
で、どうするか?選択肢は3つあります。
- 強攻。さっさと退出する。費用0円。ただし、この場でもっとも場違いな人間になる。
- 偵察。飲み物だけあるか聞いてみる。聞くだけなら費用0円。ただし、これまた自分が場違いな人間であることを、従業員に明示的に知られるのがイタイ。
- 同化。いかにも飯を食いに来た、という顔をして、そのまま飯を食って出る。費用1200円。外聞という点での問題は皆無。出費と腹具合に若干の難あり。
迷っているうちに…ウエイトレスのお嬢さんが鈴のような声で話しかけてきます。ご注文はおきまりですか?と。思わず答えてしまいました。
こちらのランチで…飲み物は、アイスティーを。
ところがところが。ウエイトレス嬢さらに『プラス300円で前菜の三品がつきますがいかがいたしましょう?』と。毒を食らわば皿まで、じゃないけれど…
お願いします(って自爆だ)
これだけだったら、ただの悲劇(馬鹿話ともいう)でおわるでしょう。ところがところが、です。
実はとってもおいしかったんです(ばんざーい)
前菜に出てきた鮭のルイベの食感は、思わずにこにこしてしまうくらい。ブロッコリーの冷たいスープには、ちょっとほっとさせられました。メインディッシュは牛ヒレ肉のステーキを選択したのですが、「ああ、良いお店の肉は(少ないけど)違うねぇ…」正直、ご飯のお代わりが欲しかったです。デザートまできっちり残さず平らげたら1分後。
「こちらは当店特製のロールケーキでございます…」
二品目のデザートとして出てきたロールケーキにも綺麗にシナモンパウダーが散らしてあるところなんか、さすがにシティホテルだよな、と、またも幸せな溜息が出てしまいました。
当日は緊急出張でバタバタしていたし、そもそも昼ご飯にコースメニュー、などというのは初めてなのですが、ああやってしっかり時間をとっていただく昼ご飯、というのもいいもんですね。とはいえ野郎一人で行ってもあまり楽しくない(おいしいけど)ので、お客さんを巻き込んで行ってみるのは悪くない、気がします。
なんだかんだといいながら、この日の昼は90分の間に2人分、しかも第一の昼食はとんかつで第二の昼食はステーキがメインのコースというオソロシイことになってしまったのですが、この話、夜にお客さまと打ち合わせしたときに披露したら馬鹿受けでした。
でも、本当においしかったんです!(ってまだ言うか)
皆さんなら、こういうときどうされますか?
« 引き分けた、って 言っていい? | トップページ | 元気に育てよ、僕らの投信 »
「旅行書士 業務日報」カテゴリの記事
- 依頼人との約束を(お金の力で)守り切った日(福島出張2泊3日 1日目)(2024.12.10)
- 西川口のよさに初めて気づいた日(新潟東京出張6泊7日 6日目)(2024.11.25)
- 週末はバスより在来線が安いから…越後中里(新潟東京出張6泊7日 2日目)(2024.11.21)
- 見つかりそうなのは秋の残りと次の仕事(新潟東京出張6泊7日 1日目)(2024.11.20)
- 乗り継ぎの成立しない一日(鹿児島大分出張3泊5日 3日目)(2024.11.06)
コメント