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カテゴリー「本人訴訟」の記事

和解予報をもう一度

ときどき、和解予報士として仕事をしています。

もちろん僕の造語です。出てきた書類その他の要素から紛争の相手側の状況をよく読んで、主としてあまり教科書に載ってないような、。「期日の前日、バイク便で相手が準備書面を届けてきた」などといった状況下で和解成立を予報する、まぁそういった営みです。

今回は債務者側での活動となりました。今日はそうした話です。


本来なら毎月払わなければならない、あるお金の支払いを延滞してしまった方がいました。債権者は何人かの延滞債務者をまとめて、弁護士に回収させるよう行動を開始した、記録からはそんな経緯があったようです。

相手側代理人弁護士はまったく定石通りに行動を開始します。

まずは内容証明郵便で催告書を出し、2ヶ月後に支払督促をぶつけてきた、と。

お客さまが相談に来られたのは、支払督促の送達を受けた直後です。さて、どうしましょうか。

  • 客観的には払わねばならないお金です。そこはご理解いただいています。
  • その気になれば一括払いも可能です。それは心強いことです。

ところで本件、民事法律扶助による法律相談でお話しをお聞きしています。

支払督促って言ったってさ、と説明を開始します。

放っておいたら強制執行可能にはなるけど、相手にバレてる預金口座でもなければ差押えなんかムリだよね、と。

…給料未払いその他で支払督促の本人申立をした労働者が怒りそうな話をするわけです(笑)

この状況で上記の危険がないことを確認しておいて、督促異議をだそうか考えます。

異議を出したければ予納郵券を添えてだせ、と裁判所からの書類には書いてあります。

この千何十円、もったいないよね、という話になるわけです。なにしろ法律扶助による法律相談、つまり相談料をもらわない相談ですから、コスト最重視で。

相手の代理人の弁護士さんはなかなかうらやましい忙しいタイプの方のようです。

お客さまの債務=相手にとっての回収債権額は、弁護士さんが扱う事案としてはいささか少額です。ならば。

次の相談までに和解案を練っておくから、それを投げてみましょう、自分で、と策を授けて了承を得、1回目の相談を終了しました。

相談2回目。練っておいた和解案を示し、すみやかに相手側代理人に送付するよう指導しました。回答期限は、こちらが督促異議を出せるぎりぎり2日前にして。

…あと、内容はこちらに好都合だが決して荒唐無稽ではない分割払いのご提案、というかたちにしています。

本人が自分で代理人にアプローチしても全然構わないし、こっちの都合での分割払いの提案であっても向こうからみて乗れる条件なら乗ってくるから大丈夫、支払督促にはわざと異議を出さない旨を示しておけば、先方も督促異義後に訴訟起こして和解するのとほぼ同じ内容を持つ和解にたどり着けるから、きっと応じてくるだろう、と予報を出して2回目の相談を終了しました。

で、回答期限1日後の今日。

予想通り=こちらの提案通りの案が出てきた、とお客さまから連絡がありました。

ただし一点、予想を外しました。

先方から出てきたのは和解契約書ではなく、債務承認弁済契約書だった、と。まぁ中身は同じだと確認したので、これに応じて終了していい、とメールで指示を出しました。

もしわからないことがあれば、3回目の法律扶助による法律相談やりますから来てください、と冗談で付け加えたことであります。

支払督促と裁判外の和解をうまく組み合わせると、公正証書を作るよりラクに「不払いがあったときは強制執行できる内容を持つ、相手と合意した約束」を作ることができます。当然ながら、相手とは最低限の=それこそ公正証書を作ることに合意できる程度の協力は得られる関係にある必要はありますが。

こちらの方式は、債務者側はたんに支払督促をご自宅で受け取っていただけばそれでよく、あとの契約書のやりとりも郵送で済むため平日昼間にみんなで仲良く公証役場に行く必要がない、ということで債権者側ではときどき使っていたのです。ものわかりがよくて仕事を早く終わらせたい、いえお忙しい方が債権者側代理人だときっと成功するだろうな、と見切って仕掛けたらそうなった、めでたしめでたし、というお話しです。

ほんとうは和解案を書面でお客さまに渡すとき、簡易援助を使えばよかった(4320円売上が増えたはずだ)というのが反省点といえば反省点でしょうか。

ウェブには出ていない情報なので、これもどこかで記事にしておきたいと考えています。

続 民事法律扶助制度 取り扱います

創業13年にしてようやく、というべきでしょうか。

毎月、誰かしらリピーターのお客さまに会えるようになってきました。ありがたいことです。

が。しかし。

元々は不動産登記のご依頼を経て、今回は法律相談にやってきたそのお客さまから、例によって衝撃的なお言葉を賜ったのです。

(そのお客さまからすれば、当事務所は登記の事務所だと思ってたので)
法律相談なんか申し込んでいいのか疑問だった、と。

2秒ほど相談室のテーブルに突っ伏してから、「もともとこの事務所は(主として労働)紛争の事務所で、登記は(とっても嬉しいんですが)あとからコンテンツを作ってたんです!」

と申し上げたところです。そのあとで、

「労働紛争のお客さまが後になって『先生のところで登記やるなんて思ってなかったから、相続登記はほかの事務所にやっちゃいましたよ♪』とか言われるのもかなり打撃ですが」

と付け加えました。

多くのお客さまにとって、登記から入ってきた人には登記の事務所に、紛争から入ってきた人には紛争の事務所に見えてしまうのかもしれません。

今回のお客さまには粛々と民事法律扶助による法律相談を適用して費用負担なくお帰りいただきましたが、さて。

そういえば、最近あまりこの制度について言及していない感じがします。そんなわけで。

この記事は平成25年9月23日付『民事法律扶助制度 取り扱います』の続きです(苦笑)

○民事法律扶助制度について

・建前

かんたんにいうと、家族構成によって定まる『毎月の収入』と『資産の額』が一定水準を超えない方々のご依頼について、法律相談・裁判所提出書類の作成・裁判外あるいは訴訟代理の費用を出したり立て替えてくれたりする公的な制度です。実施主体は法テラス、日本司法支援センターです。

・本音

  • お客さまのなかにはこの制度、冴えない実務家のための制度という人もおります。
  • 一方で、扶助の利用者の資質や態度について疑念を呈する実務家もいます。

僕がどちらに与しているかは恐くて口にできません(遠い目)

また、面接による無料相談を標榜している一部の事務所では、制度の詳細を説明せずに法律扶助による無料相談の申込書を書かせて=相談を申し込んだ人が使える無料法律相談の回数を1回消費して他へたらい回しする、という事務所さんもあったりします。

○代理援助について

・建前

弁護士や司法書士による、裁判外での交渉の代理・訴訟代理の費用を立て替える制度なのですが、僕のところではいまだに利用実績がありません。

・本音

冷静に見積もると、扶助のコスト水準のほうが高い(笑)という身もふたもない構造的問題を解決できていないためです。

以前一度だけ、共同不法行為の被告になった2名の1人が法律扶助による訴訟代理、もう1人が当事務所で裁判書類作成(法律扶助適用せず)という事案を受け持ったことがありますが、「本人訴訟」を視野に入れてしまうとさらにコストの差が開く、ということで当事務所に来られるお客さまにはおすすめできない、ということになっています。

○書類作成援助について

・建前

こちらは訴訟代理ではなく、訴状や破産・調停の申立書など「裁判所に提出する書類」の費用を立て替える制度です。

ご熱心な同業者さんたちは破産の申立書類作成でこれを使っておられると聞き及びます。

・本音

僕のところではいまだに利用実績が無いのとその理由は代理援助と同じです。

債務整理にあんまり関わってないからだ、という理由も付け加えます(苦笑)

労働審判手続申立書など労働紛争では使ってみたい気がするこの制度、成果にかかわらず定額の費用が発生ししてしまうところにも(僕やお客さまからみれば)致命的な欠点があります。

○相談援助について

・建前

いわゆる「無料法律相談」を実現してしまう制度です。利用者は相談料金を払わずに済み、相談担当者には法テラスから所定の料金が支給されます。申込みは各相談担当者の事務所でただちにすることができ、収入や資産は自己申告で足り、さらに資産については、預貯金のみを判定の対象にします。

・本音

理想的に機能するなら、いい制度です。予算が払底するようなことがなければ(遠い目)

そんなわけで、僕の事務所ではもっぱらこれをつかって来所のお客さまに法律相談をおこなっています。

ちょっと恐いのは、利用者に費用負担が発生しないので生活保護利用者と医療扶助に似た関係がその気になればできること、でしょうか。そのうち貧困ビジネスと結託して何らか処分される人が出てくるだろうな、と思っています。

あとは、同じ紛争について最大3回まで、という制限について説明を受けていないお客さまがときどき(年に一人か二人)来られるため、他事務所での利用歴がすでにありそうな方はちょっと気をつけるようにしています。

なぜか利用歴について正確な説明をされない方がいるのです。

理由はわからない、ということにしておきますが、最初に「法律扶助なんか使ったことない」と言いながら相談が進むにつれて「別の事務所で(無料で聴いたときに)言われたのは…」などという発言が後から出てくるのは、決して愉快ではありません。

そんなわけで、法律扶助による相談を使い慣れていそうな方には引き気味に接する、制度を知らなかった方には説明して制度を適用する、というのが当事務所の基本的な立場です。本音をいうと。

○当事務所で相談援助を適用する法律相談について

・対応可能分野

あの…労働紛争に限りませんから。

というと労働紛争から入ってきた人は妙な顔をされます(笑)

借金・家賃・請負代金・交通事故など金銭上の請求をした側・された側の相談はふつうにお請けしています。請求額が140万円以下であること・簡裁以外の裁判所に手続きが係属していないことだけが守らなければならない要件なので、登記や労働紛争と関係なくても全然かまいません。請求を受けた側でも大丈夫です。

あとは、「この事務所に来られること」が月収や資産と並ぶ重要な要件です。出張・訪問での相談は別に許可を要することになっており、これを試みたことはありません。

そのかわり、事務所にさえ来てもらえるなら他県の方にも制度を適用できたことがあります。

要件を満たしているようにみえて適用されず、請求を蹴られた事例が1件あります。

これは労災保険の適用に関するもので、国が扱う制度に関する相談である以上民事上の(つまり、民間人対民間人の)相談ではない、というのが法テラスから示された理由でした。

僕のリクツでは、労災保険法自体が労基法に定めた、「使用者=民間人による労災補償の義務」を代替するために設けられているのだから労災に関する紛争はそもそも民事上の紛争だろ、と考えたのですがそうはならなかったのです。

…相談の調書に「労災保険法」という文字を使わず、「労働基準法第○条による使用者への請求」として法テラスに提出したらどうなるか、見てみたい誘惑もありますが。

・相談時間

当事務所の有料相談では基本を2時間としていますが、民事法律扶助による法律相談は弁護士並みの時間と費用=30分5400円を一つの目安としています。

これは建前です。

僕の仕事は遅いので(笑)

もう少し時間は延びます。2時間にはならない、とだけ言わせてください。

・相談回数

当事務所を含め、同じ紛争では、最大3回という縛りがあります。

ですので当事務所が最初の1回だった方には、次の相談を弁護士のところで受けてみて、そこが嫌だったら3回目でここに戻ってくるのはどうか、という提案をしています。

すでに馴染んだお客さまの場合は必要に応じて相談を連打します。継続的な交渉や簡裁通常訴訟で相手から対応があるごとに相談を入れる、その相談だけで解決してしまう、とか。

・簡易援助

なんでも最後に援助、とつける理由は不明なんですが、「相談中に、本人名義で作れる、かんたんな書類」の作成もできます。簡易援助、といいます。

僕が名前を出していいわけではありませんし、提出を代行することもありませんので内容証明郵便などはちょっと面倒(お客さまが自分で集配局に行く必要がある)なのですが、年に1度くらい利用しています。相手の請求に対する簡単な回答でもいいですし、労基署が書いて出してみろと言った未払い賃金の催告、その他の交渉の申し入れ、などでもいいでしょう。

業界紙には先頃、支払督促に対する異議申立書作成にこの簡易援助を使ったという記事がでてきました。

強烈にかんたんな裁判書類作成だったら簡易援助で行ける、ということでしょうか。たとえば「時効の主張だけする答弁書」とか。ちょっとやってみたい気はします。

これを作成すると、お客さまには2160円の費用負担が発生します。相談そのものは無料です。

○最後に

扶助の適用対象になるかどうかは法テラスのサイトでチェックできますので、何か法律上、気になることがありましたら

  1. 上記のリンク先で見られる収入等の水準に当てはまっていて
  2. 金額140万円以下の、行政を除く法人や個人との争いで
  3. 地裁・家裁・高裁に係属している手続きじゃなくて
  4. 当事務所に来れるなら

とりあえず、ここで相談受けてみる、というのが僕には理想的なご対応、ということになります。

繰り返しますが、この事務所の業務は労働紛争だけでも不動産登記だけでもありません。さすがにファイナンシャルプランニングの相談でこの制度を使うわけにはいきませんが。

ちょっとした思惑を込めて受託した無償リファレンス業務に関する件

昨日の東京出張では、別にもう一つ用事がありました。国会図書館での書見ですが、本人訴訟遂行中のお客さまからのお尋ねによるものです。

守秘義務に反しない範囲で説明すると『ある事業者にその監督官庁が出した行政処分の内容を知りたい』と。

その事業者、士業ではありませんよ。ならもっと簡単です(笑)

さて、調査を準備してみます。

まず、だいたいの違反発生時期と事業者名はわかっています。有料サービスとして提供されている(当事務所ではオンラインで、大規模図書館では無料で使える)一般の新聞記事全文検索データベースで事業者名をあたってみます。

…該当なし。

業界紙がある、とお客さまに言われたので、所蔵を検索してみます。

ありました。最寄りでは、大阪府立図書館に(爆)

もう一件、これは期待通りに国会図書館に所蔵されています。愛知県内には所蔵なし。

問題は、業界紙だからといって行政処分が公表されているとは限らない点です。士業と違って、業界団体が出している業界紙ではないのです。

ただ、仮にご所望の記事が見つかった場合、いま進めている訴訟でひどく有利になるだろう、とのことです。どうしましょう?

一見のお客さまならさっさと撤退、または作業時間制で料金計算して1時間あたり3千円、といった感じにすべきです。対応可能な料金制度は設けておりますが、これで3万円ポンと投げてくれる方がいたらそれはちょっとした豪傑と言わねばなりません。

そうした方には、2年にお一人くらいしか出会えません。

ですがこの二人のお客さま、この一年にわたって相談継続中です。相談料だけで●万円に達していますし、そろそろちょっとした便宜をはかってもいい時期ではあります。

そんなわけで、成功した場合の見返りのみ提示してこの作業をお受けすることにしました。

東京滞在、1日目。

国会図書館でも普段訪れない新館4階が、新聞とその縮刷版の資料室です。まずその業界紙1年分の縮刷版を出してもらいました。

午後の3時間かけて、1年分の検討が終わらないことに気づきました(愕然)

ただ、毎月の行政処分の発表は地方版の記事として掲載されていること、その内容はおそらくお客さまが希望しているほど詳しくないことがわかってきました。

縮刷版の精査を本気でやりたいときは、名古屋を朝出るバスでなく前日夜出るバスで東京に来たほうがいいらしい、ということもわかってきました(苦笑)

2日目。

…事実上タダで受けおそらくはタダで終わる作業ですが、やりきって帰ったほうがよさそうだ、ということで作業続行を決めました。

昨日閲覧を完了しなかった1年分と、その次の年の分も出してもらいました。

昼ご飯をとらずに6時間ほど記事を読み続けた結果、その業者に対する行政処分が出た日付は特定することができました…が、処分の内容は訴訟に有利な形では読み取れませんでした。

念のため、関東中部一円で他社に出ている同様の分野での処分を読み取って抜き書きし、今朝のメールで納品して作業を終えたところです。

見返りなし、確定。あはは(←乾いた笑い)

まぁ、処分の日は特定できたのであとは管轄官署に情報公開請求を試みるなりなんなりしてもらえればいいかもしれません。さしあたってはお客さまに再びバトンを引き継いだ、という状況です。

本人訴訟とは申せ、何か立証してみせるのも決して簡単ではない、準備書面にちょちょっとなにか書き足したから立証できたなどということはもう絶対ない、というお話しなんですが、さて本件、もしご希望の記事をご希望の形で見つけた場合の『見返り』、なにをお示ししていたと思いますか?

お客さまは二人、事案は労働関係訴訟、ということで。

それとは全然関係なく、記事が見つかったら相続登記を一人20件ずつ持ってきてください。それが辛ければ生前贈与と財産分与が混ざってもいいことにします(←高飛車)そうお客さま方に申しつけて…いえ、お願いしていたところです。

当然ながらこのお客さま方、相続だの不動産だのとはぜーんぜん関係ないお仕事に携わっておられます。

さようなら、僕の相続登記40件、推定売り上げ80万円(笑)

冗談はさておいて、ある資料を閲覧してきたいがその所蔵が東京だの大阪だのにしかない、ということでお悩みの地方在住の皆さまからもしご相談があれば、こうしたリファレンス業務は常に受け付けております。

当事務所ウェブサイトにページを設けたのは今年からですが、実は業務そのものは数年前からやっていたし訴訟の勝敗に影響を与えてもいた、そういうものだったりします。

この作業、費用は主に成果にかかわらず作業時間によって決まり、標準は1時間あたり3千円としておりますが、お客さまのご事情や訴訟の展開、その他私の気分や思惑によって、

まれに、異なる条件をお示しすることがあるかもしれません(遠い目)

10月の数字(裁判所の数字を少し)

今週風邪になってよかった、と言ってみる。

来週、出張だから(苦笑)

ここ一週間ほど睡眠多め仕事少なめに過ごしておりました。いっそ敵側代理人に感染しますように、と邪念を込めて(←ウソ)残業代請求訴訟の準備書面を一つ送り出したのが月曜日、ようやく空咳もなくなってきたのは昨日、水曜日のことです。

相談室から見える東の丘が、いつの間にやら秋らしい色になってきました。

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さて、数字をとおして労働紛争をめぐる諸制度の実情をのぞいてみるお話、今日は裁判所のそれを見てみましょう。

データの出所は当事務所、つまり僕と補助者さまが例年この時期に調べている開廷表調査です。調査方針は別のブログの記事に書きました。簡単にいうと『名古屋の地裁・簡裁・高裁の開廷表から、労働関係訴訟とわかる事件名等を毎年一定期間ピックアップしてみた』というもの。

この生データが7年前から251件ありまして、表計算ソフトのデータベース機能をあれこれ使って件数を整理してみます。

そんな本記事で想定する読者は…かなり少ないはずです。具体的には

『裁判手続の利用を視野においた労働相談を行う方』(そんな読者いないって?)


では。まず件数の推移。直近3年では簡裁横ばい、地裁減少、のようです。

以下は10月の調査で発見できた件数ですが、平成27年だけ調査期間2週間、26・28年は1ヶ月です。27年の件数をおおざっぱに二倍していただければ傾向が見えるでしょうか。

_____簡裁  地裁

  • 26年 9件 24件
  • 27年 6件 11件 (調査期間2週間)
  • 28年 9件 16件

決して小さな裁判所ではない名古屋簡裁でも一ヶ月に労働関係訴訟が10件ない、ただこの傾向は変わってない、と認識しておけばよさそうです。地裁の減少は気になりますね。

事件名を読む限り、簡裁では特定の類型の事件が増えた・減ったということではないようです。

数年まえの士業向けコンサル業者のセミナーで見かけた残業代バブル(笑)はどこへ行ったでしょうか?

少なくとも残業代のみを請求しているとわかる事件名はここ3年で簡裁は0件、地裁は7件。件数の推移は

  • 26年 5件
  • 27年 1件(調査期間2週間)
  • 28年 1件

…残業代バブルは、無かったのです。少なくとも名古屋では。

ここ数年で生えてきた『残業代請求専門』の同業者事務所を僕がこのブログで笑いのネタとしてしか扱わないのは、連中が上記の通り事件数の傾向とは関係なく、単にまとまった請求が立ちそうな分野だけ切り出したいのが見え見えだから、です。まさに過払いのときとおなじ、ということで。


どんな事件が多く係属しているか、その関心は高いはずですが、地裁・高裁でその調査は困難です。

訴訟代理人が複数の請求をまとめたうえで事件名として一番主になりそうなものをつけてしまうため、事件名のみで集計したこの調査は『主な事件の類型』でしかありません。そう思ってください。

ここからは、過去7年分のデータを使います。

事件名からみる主な類型 簡裁(全56件)

  • 賃金または給料 45件
  • 解雇予告手当 7件
  • 残業代 2件

簡裁での労働事件は8割方が賃金請求だ、と考えればよいでしょう。

したがって、実務家としてはこの分野がわかれば簡裁労働事件は8割方対処できる、と
(↑会社側準備書面によくある詭弁です!)

賃金請求については、簡裁備え付けの定型訴状の事件名とおなじ『未払賃金』が31件あります。定型訴状の利用が相当数あると推測します。

上記の結果は、訴額が少ないという理由だけで残業代請求訴訟を簡裁に持ち込みたくないよな、という思惑を裏付けるものでもあります。残業代に限らず、労働関係で変わった分野・非定型的な請求の訴訟を簡裁に持ち込むのは避けたいな、と。

裁判官側の経験にも注目すれば、そう言わざるをえません。ただし地方の独立簡裁で、最寄りの地裁支部から填補されてくる裁判官が簡裁にいるような場合には逆に安心だったりします。

事件名からみる主な類型 地裁(全134件)

  • 地位確認 39件
  • 賃金または給料 27件
  • 残業代 22件
  • 退職金 7件
  • 解雇予告手当 3件
  • 解雇を除く懲戒処分の無効確認 3件
  • 損害賠償 26件

3割強が地位確認=解雇や雇い止めの無効を主張するもの、あとは賃金・残業代・損害賠償が20%程度を占めている、ということなのですが、なぜか残業代だけがここ2年間で減っています。

一部の事件類型で重複が生じています。このほか5件、企業側原告、労働側被告とするものがありました。


本人訴訟

地裁・高裁では代理人の有無がわかります。代理人欄に記載がないものを本人訴訟と考えてみましょう。

地裁本人訴訟(全134件)

  • 原告が労働者側で、代理人がいないもの 21件
  • 被告が使用者側で、代理人がいないもの 26件

少々意外な印象を受けたのですが、労働者側が訴えを起こし使用者側が受けて立つ労働訴訟では、使用者側に代理人がつかないものが労働者側より少し多いようです。

高裁本人訴訟(全44件)

_______________労働者側 使用者側

  • 控訴人で代理人がいないもの   8件  1件
  • 被控訴人で代理人がいないもの  1件  3件

地裁の、つまり第一審での割合でそのまま上がってきているわけではありません。

控訴人=つまり地裁の判決に不服がある、はっきり言ってしまえば負けた側で労働側本人訴訟が顕著に多い、と読むなら当事務所のような本人訴訟支援型の事務所には好ましいデータではない、ということになるのですが…

もう一つ、別の読み方があります。

事件名からしてあきらかに妙ちきりんな、当然ながら代理人がついていない訴訟、というのを地裁でちょくちょく見かけます。

こういう請求をかける人は、たいていの場合実務家の助言をきかなかったり解任したりして孤立状態で本人訴訟を進め、和解もできず、順当に敗北します。

その敗北を認められずに控訴してさらに負ける人、というのも傍聴で見かけるものでして、こうした『ダメな集団』も高裁での観測結果に混じっていると僕は推測します。

地裁本人訴訟の原告でご自分の正しさを確信してらっしゃるような方にはちょっと気をつけて読んでほしいデータですが、そういう人はだいたいこんな細かい検討なんかしません(笑)

ひょっとしたら、第一審の使用者被告側で本人訴訟が多く見えるのは、企業が破綻しているなどで欠席判決が出る訴訟があるからかもしれません。

このデータはちょっとショッキングではありますが、これを根拠にして労働者側が上手に負けを認められず経営側がいくらかましだ、とは言い切れないとは思います。立場上、そう思いたいです。

…あ、でも。

僕のところの本人訴訟は上記のデータと全然違うので、それを売りにしてみるとか(笑)


冗談はさておいて。もう一つ不思議なデータがあります。『損害賠償請求』訴訟の行方、とでもいうべきでしょうか。

地裁の労働訴訟でこの名前の訴訟は、労災での安全配慮義務違反や最近ではパワハラ等の慰謝料の請求など、さまざまな非定型的な請求を含むものです。この件数なんですが

『損害賠償請求』を含む訴訟の件数

  • 地裁 26件(うち、損害賠償 24件)
  • 高裁 4件(うち、損害賠償 1件)

カッコ内に入れたのは、正しく『損害賠償請求』だけが事件名であるもの。損害賠償請求等、とか、地位確認および損害賠償請求とするようなものは地裁2件高裁3件あったと考えてください。

地裁では2割程度を占める類型であるはずの『損害賠償請求』事件が控訴される件数・割合が妙に少ないように思えます。

判決に納得して終わったのか和解で押しつぶされて消えたのか、それは推測すらできませんがこの類型の労働訴訟では控訴される実情が顕著に少ない、ということは覚えておいていいかもしれません。

自分のデータが入らないように(第8次開廷表調査準備の件)

明日から10月。過ごしやすくお天気のいい季節がやってきます。

だから、というわけではありませんが例年この時期に、名古屋簡裁・地裁・高裁の開廷表調査をしています。第8次となる今年は、調査期間を一ヶ月とることにしました。偶数次の調査で1ヶ月~4週間、奇数次の調査では2週間のパターンができてきています。

さてこの調査、とってもアナログな手法でおこないます。用もないのに毎日裁判所に通い、裁判所ロビーに出てる開廷表から労働関係事件を探し、見つけたら事件番号&当事者名with代理人名をメモってくる、というもの。

…お馬鹿なことでも続けてみるもので、訴訟記録が破棄されてないここ5年分だけでもコンスタントに100件を大きく超えるデータを集積できています。これをアップデートするのがいつもの目的。

加えて昨年は…残業代バブルは実はなかった(笑)ということを確認する、という目的もありました。

今年の関心は、簡裁訴訟代理(特に労働事件)への弁護士の進出状況です。

司法統計によればあの人たち、簡裁訴訟全体では司法書士と違って関与の件数を減らしていません。なにやら下値抵抗力が強い相場を見ているようです。

司法書士の訴訟代理件数はここ数年、ほぼ過払い訴訟の消長に従って伸びたり縮んだりしてるようにみえるのに。

…あの人たちが意外とまじめだったのか、単に地裁以上の活躍の場が狭まってるだけなのかは不明です。ただ、割合によれば20%ほどのシェアは持っている、ということで、簡裁で10件の訴訟記録を閲覧したら1件出てくる可能性は相当高い、と思えます。

※簡裁の開廷表には代理人名が出ないため、代理人の有無を知りたければ時間を合わせて傍聴に行くか、訴訟記録を閲覧するしかありません

そんなわけで、まずは件数が集まらないと閲覧にも適しないのですが、代理人の就任状況にも興味があります。例年名古屋簡裁では、1週間あたり2~3件くらいしか労働関係訴訟が検出できないのでこの件数そのものがどう変わっているか、も興味深いところです。

ところで。こうしたデータそのものは他庁での開廷表から引いてきたものと合わせて250件ほどあるわけですよ。

事務所としての関与件数が多い代理人ランキングはすぐできるのですが、これは実際にその訴訟を担当してる方と単にボスとして一番上に名前があるから開廷表に名前が載ってるだけの方が違うはずなのであまり意味がありません。

手持ちのデータにしたがって閲覧できる訴訟記録を全件閲覧かけたら、事務所あるいは代理人ごとの勝訴率が出せるのでしょうが…これは世の中によっぽど恨みがある時でなければ公開してはいけない不都合な真実、いえ研究テーマです。

あとはこれ、裁判所外の公開データと突合するとどうなるんだろう?

たとえば登記情報提供サービスの法人のデータをつかって

  • 賃金請求訴訟の被告になった企業の5年生存率

とか出せるんでしょうか(汗)業界団体の名簿と突合すれば、訴訟代理人のも(だからそれはダメだって)

世の中には定期的に会社設立→給料不払い→会社休眠または廃業を繰り返す方もいるようです。調査費用がふんだんに使えるなら、被告になった会社の登記情報を片っ端から取得して代表者名を調べ、それをつかって東京商工リサーチのtsr-van2で代表者名から企業を検索することでこうした廃業リピーターと彼らが次々に設立した会社も見えてくるかもしれません。

そうした何に使えるかわからないデータに自分のお客さまの案件を入れたくないという(←勝手な)理由もありまして、今回の調査期間は10月3日~31日としています。

そう、順当に行くと11月に口頭弁論期日がくる案件が僕のところにひとつあるのです。

関係ない・とは思わない・かもしれない

お客さまが持っている情報を適切に聞き出す。書類に反映させる。

開業13年目の現在にしてなお、けっこう難しい営みです。今日はそうしたお話しです。

1.「関係ない」とは思いませんが

先日のこと。労働紛争で裁判書類を作成していたお客さまからの要請を受けて、電話相談を設定します。解決後の対応をめぐって、また相手がおかしなことを言ってきたとか。

こちらとしてはその主張の当否を検討し、根拠がないならそれを指摘して改善を要請したり…あるいはだまって放置しておき、適当なタイミングで銀行預金に差し押さえをかけるなりする必要があります。そんな状況なのですが。

「それは関係ないんじゃないですか」

僕からの質問に対する、お客さまの発言です。即決で否定します。

「(相手の主張と資料に)関係があるかないかを探るために今この相談をしているんですよ。なのに検討前に関係がないと決めつけてしまったら、そう決めつけてしまった資料や情報が僕に伝わらなくなってしまいます…それって損だと思いません?

ひょっとしたら太字部分で、お客さまを脅かしていたかもしれません(遠い目)

このお客さまはわりと丁寧に資料をくださる優秀な方なのですが、裁判に関する相談で恐いのはこの手の予断です。あなたが無関係と決めつけて切った情報のなかに、実は重要なものがあるかもしれません。

せっかく頼んだ弁護士に十分な情報を伝えずに負ける、という経験を何度か積むと、こういうことは身にしみてわかるかと思っています。

紛争の直接当事者ですら、ときにこうなってしまいます。もっと問題なのは、友人やら家族やらの紛争について、本人に代わって問い合わせを投げてくるひと。この方たちがあることがらを「関係ない」だのなんだのと言いだすことで、さらに情報が伝わりにくくなります。誰かの代わりにしてあげる相談が、うまくいかない理由の一つです。

2.「関係ない」説明かもしれませんが

弁護士であれ司法書士であれ、自分が依頼した、あるいはしようとする相手に正しい情報が伝わらない。それ自体はよくあることだと思います。

ただ、故意にそれをやった奴には敵であれ味方であれ、相応の報いがあってしかるべきだと僕は思っています。

先日のこと。弁護士に依頼するというご意向を示した方から、再度依頼のご希望が入りました。

ずいぶん興味深いことがメールで書いてあります。依頼をとりやめることにした際のお客さまからの報告は、事実と異なるらしいのです。

弁護士をつけることにするかつけないことにするのか、というのは日本語としては単純で誤りようがないものだと僕は認識しますが。

とは申せ。せっかくのご依頼希望です。優しく対応してあげることとしましょう。自分の認識と相手の主張が食い違うからといって、それを直ちに相手のウソだと決めつけるのは間抜けな素人がやることです。

まずは連絡直後の電話打ち合わせで、先にいただいた報告について説明を伺います。

優しく優しく、事実に関するご見解を承ります。

ご説明には口も挟まず、さえぎりもしません。なにしろ僕は、優しいので

数分かけて一通り、ご主張をお聞きしました。

僕からは優しく一つだけ質問すれば十分です。

「で、その説明で僕が納得するとお考えですか?」

お客さまにはいささか長めの沈黙を味わっていただいて、ご依頼受託としました。

この方を含め当事務所の全ての裁判書類作成業務委託契約書には、依頼人が故意に事実と違うことを僕に告げた場合、僕は契約を解除できるという条項を定めています。

それが実際に危険なことだと認識していただくためには、説明を片っ端から否定するよりほかにもいろいろな方法がある、僕は考えています。

さてこの事案、地裁での準備書面作成です。司法書士には自由な法律的判断ができません。今後の法律相談は不可、依頼人が指定した事項にしたがってのみ書類を作成すると明示し、書類作成の嘱託に際しては事前に弁護士による有料法律相談を経由してくるよう申し渡しました。
若干の費用増加にはなるかもしれませんが、僕には関係ないことにします。

僕がいくら優しくても、依頼人から言われてもいない法的主張を勝手に書いていいわけではありませんからね(遠い目)

3.関係ないことにしたい、のも仕方ないですが

先日のこと。行政書士さんが、労働相談のお客さまを連れてこられました。

僕がお茶を用意しているあいだ、その行政書士さんはお客さまに相談にあたっての心がまえを指導しておられるようです。曰く、

  • 知っていることを
  • 隠さずに
  • 正確に

話すようにと…そんなことを。

「それって裁判所(の宣誓)か何かですか?」

軽く茶化して相談室に入ります。ここからは僕の時間です。

お客さまにはお茶を入れながら、ちゃぶ台をひっくり返すとしましょう。

「あ、言いたくないことは言わなくてかまいませんから」

先ごろ豊後高田市で開催されたちゃぶ台返し選手権にエントリーできるくらいのちゃぶ台返しをお見舞いした自覚はあります。

その行政書士さんとは目を合わさないようにして、さらに続けます。

「さまざま事情があって相談で言いたくないことは普通にあると思います。そうした箇所に触れる質問には、『答えたくない』とか『(書面に)書いて欲しくない』と言ってくれればそのように対応します。ただし、事実と違うことを言われても言われたようにしか対応できませんから、それはやめておいたほうがいいです。ご自分のために

…あ、これは当記事の第2項のお客さまに言ったわけではありません。相談に際しての一般論を述べただけです。

聞かれたことに対して知っている真実をありのままに述べ、隠したり付け加えたりしない、そんな陳述なんざ裁判所でもそうは期待できまい…と、すれっからしな代書人は思ってしまうのです。代書人になるまえに、自分が原告になる労働訴訟を二度経験したからかもしれません。

お客さまにも相手方にも、間違えることも言いたくないこともあるに決まっているので、お客さまが仮に事実に関する認識の伝達を誤っても、それが勝敗に直結しない限りは僕から契約解除にまではしないようにしています。

そんなことばかり考えているからでしょうか。初回の相談を30分で終わらせる、などという芸はいっこうに身につきません。先日は上記三件以外のお客さまについて、久しぶりに初回の相談が3時間に達しました。

その相談中、この事務所が忙しくならない理由を説明する必要がありまして。

「さまざまなやり方で、顧客を選ぶから(←虚勢)」

と申し上げたところであります。当事務所の実情に関係がある説明だったかどうかは、実際にご依頼になった方だけがわかるかと思います。

裁判所から、補正指示

珍しく労働審判手続申立書を2件続けて出した、その裁判所。

書類作成はいつも通りおこなったはずですが…裁判所から補正指示があったとお客さまから連絡が入りました。先日のことです。

地元の裁判所に労働審判手続申立書を出すと、申立書受理後1~2週間でまず申立人側に説明の追加や裁判所に対する質問への応答を求めてくるようになった気がします。

他庁ではつつがなく受理して期日を決めてあとは答弁書の提出待ち、という質の書面を作って出しても、必ずなにか聞いてくる感じです。それが具体的な質問になってきたのは去年から、だと思えます。

それを『補正に関する事務連絡』とお客さまに言うのです。裁判所が(苦笑)

訴訟代理をあまりおこなわない僕の事務所では、提出書類をめぐって裁判所側とやりとりするのは当然お客さまになります。もしおかしな書類を作ってしまったらお客さま側にすぐわかってしまう一方で、裁判所側(カウンターの向こうにいらっしゃる書記官・事務官の方々)からのいい評価もお客さまに直接伝わることになります。

今回出したうちの一件は裁判所側から「(申立書は)わかりやすくよくできているが」補正に関する連絡がある、と言われたとのことで…複雑な気分です。

この事務連絡、間違いがあるからそれを補正せよ、という指示にはとどまっていないのが問題です。ここ一年間にあった何件かの連絡を見ていると、立証の不十分なところや不利なところを刺しにきてる感じもします。むしろ補正が主な用件ではないのです。

もっとも、書類作成に徹せねばならない僕の事務所では(時には不満はあるとしても)お客さまが主張する内容を整序して書類作成せねばなりませんので、そうやって出した書類で僕たち(僕や補助者さま)が危惧していた箇所をきっちり突いてこられると、やっぱり納得せざるをえません。

むしろいいことなのだと思うのです。やっぱりそのへんの代書人から言われるのと裁判所から言われるのとでは、ご自分の主張の危うさに対する危機感は全然違いますから。

完全に自分で申立書類から作成されている本人申立当事者の方々には、この事務連絡をあまりかんたんに考えないほうがいいと思うのです。聞かれたところが危険なところ、と考えるくらいでちょうどよく、できれば誰かに相談して対処することをおすすめします。

…だからこの事務所に相談においで、という記事にはなりません。これはまさに法律的判断を問われる部分なので、請求額にかかわらず地裁での手続きである労働審判手続申立書提出後の事務連絡にどう対応するか、といった漠然としたお尋ねに法律相談として応じることは僕のところではできないのです。

1月・2月と各1件ずつ、労働審判手続申立書作成のご依頼をお受けすることができました。今月も1件はお受けできるといいのですが…さて、どうなるでしょうね。

手抜きの向こうにある墓穴

ただいま残業代請求を準備しています。

裁判手続きで主張したい労働時間数と、手持ちの複数の記録の不整合を表にまとめてお客さまの釈明、いえ説明を求めるメールを発して今晩の仕事もおしまいです。

-気付けば出張三日前。高速バスネットで早売3の予約も終えました-

きっとこのお客さまは、シャープなレスポンスを返してくれるはずです。多少の齟齬はあっても説明可能な範囲におさまってくるはずですので、特に心配しません。のんびりブログなど書いていられます。

そうでない場合に問題があります。

労働時間の記録に例を取れば、その記録が見かけ上正確でなく正確でない理由が僕にも示されないようなのは最悪です。

お客さまに説明を求めるのですが納得いかない場合、お客さまから確認したとおりに『これは必ずしも正確な記録ではない』と備考を付記して出すこともあります。

なにしろお客さま自身がそう言った、ということで僕はそれを喜んで代書するわけです(ええ、喜んで)

労働紛争に関してウェブでさまざま情報を探しておられる素人の方々がきまって想定しないのは、皆さんには敵がいてあなたをさまざまな方法で刺しにくる、ということです。

だから、在職中の仕事やその記録の収集や裁判手続きの準備を適当にやってアラがある状態は僕のところで=裁判所に持ち込む前に対処できるだけしておくべきだ、と。例えば正確でない記録を出したいなら、相手からそう言われるまえにこちらから言った方がまだましだとも考えています。

こうした助言に納得されない場合には上記カッコ書きのような注記を提出書類の中に入れられるよう、僕がどこかで努力するかもしれません(遠い目)

とはいえ僕は特に地裁案件で勝手な法律的判断を出せない立場(司法書士の裁判書類作成はそういうものです)なので、たいていはお客さまへに対する提示資料の不整合箇所の指摘あるいは質問という形を取ります。

で、不満はあるが逃げ腰ではない状況下で質問等の件数が著増する、と(苦笑)

この事務所でお受けした労働関係の裁判手続きで所期の成果を挙げない方に共通する要素が、「ほどほどにやったけど、もういいではないか」という気配です。厳しく言ってしまえば手抜きです。

  1. ほどほどに自分の解釈で労働時間を記録したからいいではないか、残業代請求できるだろ、とか(僕が理解できない解釈は、きっと裁判所にも理解不能です)。
  2. ほどほどに仕事をサボってたが、これは代書人に伝えなくてもいいだろ、とか(会社側であら探しされるほど結論が不利に傾きます)。
  3. ほどほどに遅刻はしたが、解雇無効を主張してもいいだろ、とか(心情的には会社側を応援します。受託せず)
  4. ほどほどに協力者を捜してみたが、一人か二人でいいだろ、とか(声かけをサボった三人目が勝利へのカギを握っていたりします)
  5. ほどほどに書類作ってもらったが、もう書かせなくてもいいだろ、とか(これは必ずしも結論を左右できるものではないのですが…一種の残尿感のようなものが残ります。僕に

最後の一項はさておいて。ご依頼をお受けしていて、単にお客さま側の作業が遅れる程度ならいいのですが(むしろ自分の都合であおってくるよりいいです)このくらいでいいや、と適当に流されるのが困るのです。

それで解決金の額を減らすなら、いささかもったいないことだと思っています。


少しお話しが変わります。

今月終了した労働関係での裁判書類作成は労働審判2件、新たにお受けしたのは簡裁での訴訟1件・労働審判1件となりました。

経営上好ましいことではあるのですが、ある程度金額がまとまった残業代請求や正社員の解雇のご依頼が少し戻ってきている感じがします。もちろん、人の不幸なので素直に喜ぶべきものではありませんが。

完全成功報酬制と電話無料相談を標榜する全国展開型の法律事務所が、この分野を手じまいつつあるのかもしれません。この人達が小額の依頼を訴訟にしていないことは過払いバブルとの大きな違いとして把握されていたのですが、受任しても儲からないことが広く知られてきたのかな、と推測しています。

この分野では手抜きが上手にできないことが知られてきた、というだけかもしれませんが。

そういえば、3年前には解雇や残業代請求の相談無料と標榜していた大事務所のラジオCMも…いまはB型肝炎がテーマですか(苦笑)

見方を変えると、あちらの業界には逃げ足の速い大事務所があって、その動きを少し遅れて他事務所の集団がついていっている感じもします。

文案が選べます

お客さまの態度や方針に否定的見解を示すには、いくつかのやり方があります。

僕のところでたまに行うのは、お客さまの問題点を思いっきり指摘して当初案とは全く異なる文案を提示することです。

お客さまにすれば論調が全然違う(場合により、自分が糾弾されてる)文案が転げ出てくることになるわけではありますが、僕としては既に提示済の文案と新たに示された文案から選択可能、という立場を採っています。

…そう、あくまでも自由に選べる、と。選んだ先の一つが地獄の門だなんてだれも言ってません(遠い目)

先頃終了した地位確認請求労働審判事件のお客さまには、もう少し丁寧な方針をとりました。

大きく分けて3つの文案をお示ししたのです。

…他事案比1.5倍の否定的な見解を示したかった、というわけではございません(遠い目)

  • 第一案は市販の書式集に近いもの。こちらの弱点など言及しません。
  • 第二案。まずお客さまの側にある問題点を積極的に取り込んでいます。
  • 第三案。労働者側・使用者側の問題点とそれが生じた経緯について第三者的な立場から解説を加えたもの。裁判書類というよりは、大学時代にやった社会調査のレポートに近いスタンスです。

ちなみに各案を一通り見ている補助者さまには、その変化をよく味わわれたようです。雇い主の人格が多重だと疑われてないことを祈らずにはいられません。

各案それぞれに狙いはあります。

  • 第一案はお客さまの心情に悪影響を与えません(笑)ま、それだけの裁判書類
  • 第二案はあらかじめ予想される反撃に備える長所を持ちますが、第一案の後にお示しすることで落差が際だちます。敵に取られるくらいなら破壊してしまえ、という焦土作戦を連想する方も出るかもしれません(汗)
  • 第三案は、当事者が書くものとしてはあまり見ない内容に仕上がることがあります。自分と相手がやらかしたことに妙に突き放した解説記事が加わっている、と。ページ数が増大し、テンポよく読み進められなくなる可能性が高まるのは短所です。

で、お客さまはこのうちの一つを選び、このほど(僕の評価としては)裁判所の印象を致命的に悪くせず、相場並みの解決を得ることに成功されたようです。

…どれを選んだかは当然、ヒミツです。

特に労働審判のような速攻型の手続きでは、会社側から思わぬ反撃を喰らって右往左往するよりは労働者側で把握できている自分の弱点を羅列してあらかじめ対策してしまう、という態度は悪くないと思っています。最初からそうした方針が採れるなら、文章の表現も多分に調整できるものなのです。

当然ながらお客さまが採用しなかった文案は、僕にとっては無駄な作業=ボツ原稿なので、否定的見解だのなんだのとはいえそこそこ勝ってほしい、と思っている方にしかこうした作業はしないのですが、と言い訳しておきましょうか。

電話相談無料で完全成功報酬制の全国規模のローファームが好んで口にしそうな、「労働者としての権利を専門家として強く主張する」だけの書面は第4案にも第5案にもありません。そんなもんなら、素人にも書けます。

労働審判手続は決して簡単ではありません。自分に権利があると呑気に信じている脇の甘い人が順当に失敗する、ということは労働側でも当然ありえます。わけもわからず言いたい放題言った結果、周りの悪印象を招いて解決金額に影響することもあるでしょう。

もちろん、黒いものを白いとただ書いただけでそれが通っていく世界でもないのですが、黒っぽいものを「黒いが実害はない」または「黒くは見えるが以下の理由があり、労働者側にのみ責任があるわけではない」等の解説を加えることでいくばくかの対策はできる…らしいのです。

依頼人の秘密ではないので付け加えますと、今回も相手方に代理人がつき、彼らが提示した金額は裁判所からみて、若干の増額を要するものだったようです。

で、彼らは我が第一案に近い態度の書面を出してきています。よくある話です(苦笑)

「そのまま行ったら、負けるから」

裁判書類作成の仕事をしていて、これは気をつけねばならないな、と思えるお客さまがいます。

その一つが、こちらが作った書類を訂正指示なく採用される方です。

これは僕の仕事に問題がないことを意味していない、と僕は考えています。
言ってしまえばお客さまの書類チェック能力が低い可能性がある、と。

ですので僕の場合、ご依頼を受けてはじめてお渡しする訴状や労働審判手続申立書案をノーチェックで採用されてしまった場合は(それとは告げずに)要注意フラグを立てておき、そのお客さまとのやりとりで問題が明らかになったときに適切な表現で注意喚起する、ということにしています。表題のような。

脅してるじゃないか、と言ってはいけません(遠い目)

訴訟なり労働審判といった裁判手続きの場合、相手がいることですのである程度敵味方のレベルが高くなればミスの少ない奴が勝つ、または派手に負けることを避けることができると考えています。

自分には権利があるからそれを適当に書いたらみんなが分かってくれて自分が勝つ、なんて考えは補助者時代にどこかへやってしまった覚えがあります。
ファンタジーの本棚に置いてそっとカギをかけたか、そうでなければ燃えないゴミに出してしまったかもしれません。

それはさておいて、過去の自分の経験と現在の相手への要求について他人が書いた文章を読んで、そこになんの訂正や不満も見いだせない、というのはすでに不安全状態で、そんな依頼人が出したOKを信じてさっさと作業を進めるのはまさに不安全行動です。

書類作成者が気づいておらず依頼者が言っていないあれやこれやの落とし穴、が前途に待ってることが労働紛争でもそれ以外の裁判事務でも多々あるわけですよ。自分は勝てると呑気に信じてる方ほどこの傾向がひどい気がします。説明しなくてもわかるだろ、というのはまことに一般的でわかりやすい態度ですが、これこそが敗北に直結する危険思想だと僕は思っています。

極端な話、ご自分以外の全ての人間(僕も含めて!)はあなたの権利なんかに興味はない、余計な仕事はしたくないし複雑な書面も読みたくない、そうした態度の読者を想定しておいたほうがいいのかもしれません。丁寧に書いたって、人によっては読んでくれない実情はあるのだから。

そうしたことを(お客さまの関心に応じて)適切に申し述べると、時には表題のようになる…のです。

もっとも、お客さまにこう申し上げる場合はまだその事案、盛り返せると思っておりまして、その意味ではまだいいのかもしれません。少なくともその方を見捨てていないし敗北させるべきではない、とは考えています。

上記のようなことを一度か二度述べたあと、僕が黙って粛々と仕事するようになったらどうか、はヒミツにしておいたほうがいいのかもしれません。

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