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相続登記申請書自動作成サービスの価格変化にがっかりした件

e-相続、というサービスは去年で終わってしまったのでしょうか?去年始まったばかりだったはずですが(失笑)

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引用先(ascii.jp)によればこのサービス、会員登録したユーザーに相続登記の申請書を自動で作成するプログラムを利用させる(ので、サービス提供者は司法書士法の規制をパスできるというお立場を取る)、成果物はpdfで出力され利用者が印刷可能な登記申請書で、利用料は1万0584円、となっておりました。

その前々年くらいに商業登記でこうしたサービスの提供を可とする法務省見解が出て業界内ではちょっとした騒ぎになったはずですが、このサービスも申請データを入力するのはあくまでも利用者である、という体裁。

当時のウェブサイトをみた記憶では、被相続人などの戸籍謄本類の収集代行はオプションで1通いくら、といった感じだったかと思います。

このサービスの法的な是非は論じますまい。きっと合法なんです。

少なくとも個室付特殊浴場やパチンコ屋さんの近くにある景品買取屋さんと同じくらいには合法、なのでしょう。幸か不幸か僕には利用歴がないのですが。

ともかく我々はそういうものがそこにある、という現実を見据えて対処せねばならないのが令和の日本なのだ、という点では核兵器をもった独裁者や台所のゴキブリへの対処とだいたいおなじです。消えろと念じて消えてくれる相手ではありません。

さらに物騒なことをいえば、そのうち信託契約公正証書案から車庫証明申請書まで通り一遍の書類は上記のようなちょっぴり○○な半自動出力サービスで手に入れられようになり、その濫用が様々な紛争を誘発して…

非定型的な裁判書類を作るのが好きな事務所にはやりがいのある世の中になるのだろう、とは思っているところです。

お話を戻します。いま上記ページからサービス提供者へのリンクをたどると、別のドメインにリダイレクトされます。

別のドメインに。

そこには別の名前でおなじようなサービスがあって、提供価格は税別69800円、となっています。

見れば昨年のサービス発足時にはオプションだった戸籍謄本収集代行の報酬と実費がセットになってこの価格、ということです。

たぶんこの代行をしているのは食えなくなった行政書士さん、なのだと思います。

同様の業務として、会社設立案件で定型的な=寝てても書けるような定款の作成や電子化をそれぞれ数千円でやる(やらされる)行政書士の方、というのも商業登記申請書の出力サービスでは存在しています。

ともかく、この相続登記申請書自動作成サービスの最低価格がいきなり7倍になってしまったのがちょっと残念、というよりかなり不満なのです、昨年はe-相続の登場で、相続登記に関連するサービスの最底辺の選択肢が広がったのか、と少々期待していたのに…

今では当事務所の相続登記よりも、高くなってしまった気がするのです(^_^;)

ただ、ここにはなにかヒントがある気もしているのです。後日さらに考察します。

パンドラの箱、ちょっと開けてみた(不動産登記編)

前回記事に続きまして、別の抵当権抹消登記の話し。

前回と同様に、ちょっと危ない何かをみた話しでもあろうかと思います。ですので事実と経緯は十分に改変してお伝えします。

休眠抵当権抹消のご依頼を受けています。昭和9年に設定された債権額100円の抵当権の抹消、とかそういうの。

こんなの正攻法での抹消を目指す奴はいない、というのはどこかの役所の何かの別件で『消えればいいんだから消えれば、いいようにしてよね(何かの文房具とかで)♪』とカウンターの向こうで誰かが言うのと同じくらいの真実だと思います。

-上記の記載と前回、いえ当ブログの過去の全記事とは関係ない、ということにさせてください-

ちなみに正攻法での抹消というのは

  • 当時の抵当権者を草の根わけても探しだし
  • 当然その方は死亡しているのでさらにその相続人たちを探し
  • 抵当権者の法定相続人が5人だろうが50人だろうがとにかく全員の同意を取り付け、
  • 妨害するなら抵当権抹消登記請求訴訟を起こし、
  • 付随して必要があれば相続にともなう抵当権移転の登記を必要なだけやってから
  • 抵当権抹消(呆然)

そういう手続きになります。

お金がたくさんあって大規模山林所有者で実はブラック企業、そんな人から発注を受けたプロジェクトでならこの方針もよろしいかと存じます(もちろん皮肉です)

気の利いた制度はあります。この抵当権者(あくまでも、この例では昭和9年当時のひと)の所在が確認できないならば

  • 抵当権者の所在が確認できない証拠を用意して
  • 当時の債権額と遅延損害金から計算される金額を法務局に供託して
  • 抵当権抹消

そういう過程をたどることができます。楽です。

債権額が安いので、遅延損害金をたっぷり(とは言っても法律通りに)加えたって供託額は千円弱。あはは(乾いた笑い)

ただ、絶対条件として抵当権者の所在が不明であることが必要なこの手続き、誘惑や落とし穴はちゃんと用意されています。

  • 数年前にこの抵当権者の調査で何やら手抜きをした同業者さんが懲戒された事例があります。
  • ですが申請時の添付書類としては、登記上の住所氏名に送りつけた内容証明郵便が戻ってきたのがあればいい、ということになっています。簡単に見えてしまいます

まぁとにかく抵当権者への連絡調査はちゃんとやんなきゃねー(遠い目)という実情があると考えて、以下をお読みください。

調査結果。

今回の登記上の抵当権者、所在が確認できません(わらうところ 勝ち誇ったように)

見かけ上、当時の番地にはもう違う人が住んでいます。

当然抵当権者さんはもうお亡くなりになってますから、不在籍不在住(登記上の住所に本籍地や住民票を置いて生きている人がいないこと)の証明も取れます。なんなら現地の住所に行ってもいい。そこには他人が住んでおり、大余裕で調査不能の確認ができるでしょう。

ですがここで、ちょっといたずら心を発揮してしまったのです。

その抵当権者、ちょっと珍しい名字です。仮に諸葛亮(仮名:もろくず あきら)さんとしましょうか。

ご依頼を受けるその村は人口が多くないのです。仮に1万人としましょうか。

当事務所では電話番号と住所と氏名のいずれかから電話帳を検索できるソフトを持っています。

おなじソフトで違うバージョンを3種類保有して、だいたい20年前→13年前→6年前をカバーしているところです。検索結果も、電話番号・住所・氏名が表示されます。当然ながら検索を繰り返せば全国のが探せます。

まず13年前ので検索しました。

その村で諸葛さんの登録は5名出てきました。抵当権者本人は出てきませんでした(←ここ強調しておきます。僕を免責するために)うち2名は他の方と住所がダブっています。

実質的には候補が3件になったので、検索で捕捉できた彼らの『住所』の土地の登記情報を取りました。

調査対象地は抵当権者の住所と全然違う地番(←ここ強調しておきます。僕を免責するために)でもありますし興味の関心はブログの記事にできる点にだけありますから、もちろん費用は自腹です。

そうした全然違う土地の登記情報のうち1件で、昭和40年代に変更した前住所地が抵当権者の登記上の住所の番地と1番違いである人が出てきました。

-ここ、登場時のBGMを以下の曲『The Imperial March』としていただきたいです-

さて、見つかったその人の名を諸葛謹(仮名:もろくず きん)とします。ただし、この不動産は10年ほど前に、全く別の名字である孫亮(仮名:まご あきら 前述の諸葛亮さんとは別人)という人に生前贈与していました。

その村の立地として、二つの県=ここでは蜀県と呉県(それぞれ仮名)の境にあり双方交流があります。

ひょっとしたら名字の同じアキラさんとキンさんがある時期隣同士であっても全然不思議ではありませんし、実は呉蜀に分かれていても遠縁の親類あるいはご家族だったという妄想も一応成り立ちます(言い訳として聞き置いてくださいね)。

それともう一つ。6年前の電話帳データで再検索したところ、諸葛謹さんが消えており、違う住所同じ電話番号(電話番号でも検索できますのでこれがわかります)の諸葛花子という女性の登録が出てきました。

諸葛家において、おそらくは家長の死亡+転居があった、ということなのでしょう。


死亡と転居は最低でも6年前、ということでふつうに役所に調査に行けば住民票も取れず、やっぱり余裕で調査不能を宣言できるのです。

でも。当事務所には…こんなチープな特殊装備とその運用ノウハウ、それに余計な好奇心があったりするのです。

あとは、僕が一縷の望みをかけて電話帳データで探索した諸葛花子さん宅を訪問し、『ひょっとして諸葛亮さんって人を知りませんか?90年前まではご存命だったんです』と聞いたらどうなるか…

気にはなるのです。制度上は誰もそこまで求めていないのですが。


本件で関係者らしい人にたどり着く鍵になったのは『名字』と『電話番号』で検索可能な過去の電話帳データであるわけですが、公式な制度としては誰もそこまで調べろ・調べられるなどとは言ってません。重ねて申し添えます…僕を免責するために(苦笑)

これは過去の抵当権者のみならず、登記上の所有者についても・公示送達など裁判関連の手続きについても同じです。

当ブログに少数現れつつある林業関係者の方に説明を付け加えると、最近ようやく国も本気になったらしい山林の所有者探索で出されてる指針はさらにチャラい(登記上の所有者の子まで調べりゃOK、って一体どれだけ手抜きなんでしょう?所有者不明ってことにされた人の孫から訴えられたら負けるんじゃないかと思います)。

ただし当事務所では、公式に求められているかはさておいて、僕が必要を感じたらこうした調査案件で少しだけパンドラの箱を開け、中に希望が入っていなさそうならそ~っとフタを閉めるようにしております。

もしご興味のある方は、お問い合わせください。もちろん普通の休眠抵当権抹消あるいは過去の登記の抹消のための各手続きに関するご依頼も普通にお受けしております。

ほんとうに普通に受けてるんですから(って強調するほど普通じゃなくなるのは何故なんでしょう)

お前はまだ砂消しゴムの使い方を知らない(不動産登記編)

先日のこと。久しぶりに補正指示の電話がかかってきました。

内容が内容ですので補正を発出した法務局、担当者の性別等は一切伏せます。語調も加工しているとお考えください。

案件は抵当権抹消(ごくシンプルな登記に限ってハマる、という点は見逃してください)。ただし抵当権譲渡の付記登記があり、譲受人の承諾書をもらって一気に抹消する…登記がお好きな先生方には完全に日常茶飯事なんですが、当事務所では司法書士登録16年目にして初受託、そうした案件だったのです。

で、補正指示の内容。『登記原因と承諾書の文言が異なります』そう担当者さんが言うのです。

たとえば当初の抵当権者が抵当権放棄を登記原因として解除証書を出しているなら、抵当権の譲受人が出してる承諾書も『抵当権者が抵当権を放棄したので抹消登記を承諾します』といった文言であるべきだ、と。

僕はそこまで注目せず、承諾書を発出した大手企業さんにも聞きましたがこの文言の組み合わせで申請が止まった例はない、とは聞いています。ただ、その後の担当者さんの発言が、登録わずか16年目の未熟な登記書士には理解できないものだったのです。

『(登記が)抹消できればよいですから、善処してくださいね。抹消できればよいのですから』

…丁寧な表現にすると、そんな感じ。

僕はと言いますと、とりあえず承諾書発行先企業さんと打ち合わせ(なるべく困ったふりをして頼み込み、応じて貰えたことには関係者各位に大いに感謝する、という挙動を取って円滑順調に仕事を進めます…こうした場合。当ブログの語調からはほとんどの方が想像できないかもしれませんが)をして適切な文言で承諾書を再発行していただきました。

で、翌週。某法務局(本局か支局か出張所かは一切ヒミツ)に出向きます。差し替え用の承諾書を提出した瞬間、担当者さん曰く

『ああ、差し替えてくださるのですね?』

当然だろ、と思って首をかしげた僕に、さらに曰く

『(登記が)抹消できればよいですから善処してくださいと申し上げたのですが…砂消し(ゴム)とか』

聞いてはならないことを聞いてしまった、という表情を顔に出したのは、登録わずか16年目の未熟な登記書士としても失敗だったようです。僕としては寛政年間の江戸でロベスピエールに出会ったよりもショッキングでしたが…まさに革命的な、そして斬首につながりかねないご発言ではあったのです。

『あ、当職の独白です/(承諾書差し替えについては)わざわざご丁寧にどうも』

そうした発言で補正は軽く流れていきました。

もちろん僕は、既提出の承諾書(当然、第三者が作って記名押印した書類)の文言を削ってどうこう、などとは一切考えておりません。

そんなことは僕が二十数年前まで補助者として在職していたクソ事務所(司法書士ではない士業の事務所)でだけやってろよ、と思っていたのですが…僕はまだ、本当の砂消しゴムの使い方を知らないらしい、というお話しでした。

もう知りたくもないんですが…もし他の先生方と会食の機会があったら、十分にお酒が回ったタイミングでそーっと尋ねてみようと思います。

「ひょっとして先生は、犯罪行為につながる禁制品の使い方を何かご存じではありませんか(あ、冗談です)」

再考:登記識別情報通知のセキュリティ

登記識別情報。所有権移転の登記完了時に発行されるそれを、僕はお客さまに次のように説明しています。

銀行預金の口座番号と暗証番号のそれぞれ悪い特徴を併せ持ったどうしようもない何か

自分では選べない(口座番号)・他人に知られたら困る(暗証番号)、桁数が長いので覚えられない(どうしようもない)そういう何かだ、と(苦笑)

そんなどうしようもない登記識別情報を法務局が登記申請人に通知する紙、それが登記識別情報通知です。写真は制度発足から数年後にバージョンアップした二代目のもの。

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初代のものは大事な取引のときほど目隠しシールがはがれない、という無差別テロの加害者に法務局がなったとしか思えない物体でありました。

様式が変わって安全になったのか、といえばそうでなく、我々は引き続き財産管理上の脅威にさらされている、というお話しです。

この登記識別情報、権利者がその権利を譲渡するか抹消する登記申請の際に、目隠しされている英数字の羅列を提出する必要があります。通常は、目隠し部分を取り去ってコピーを提出する、というのが作業の流れ。

ある登記でその目隠しを取り去ろうとしたところ、妙なところが取れたのです。

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見れば黄色い部分はおそらく粘着剤で、登記識別情報を印字後に紙を折って黄色い部分を重ね、おそらく加熱(加圧だと紙がへこむはずだし、紫外線だと物騒なキカイを法務局局舎内に置く必要がある。その他の接着方法は手がかかるか費用がかかりすぎるから…という推定ですが、間違ってたら笑ってください)して接着=封緘しているのだと思います。

で、それがしっかりくっついておりません、と。

ですので、くっついていないところをよく探すと

そーっとのぞいて、みてごらん

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なんてことができたりしかねない、そんな個体も混じっているということがわかりました。

あ、これは勇気ある告発です(遠い目)

もっと進んで考えます。

熱で接着できる樹脂は当然限られておりますので適当な薬品を加えて加水分解するとか、ちょっと考えてしまいます。

そうでなければ…紙の発火点は450℃あたりにあるはずなんで、家にあるオーブン、というよりグリル機能(最大約300℃)か何かで加熱したら破壊できるのかもしれません。この粘着剤。

で、紙を変色させずに粘着剤を無力化できれば(以下、自主規制)

などということをさせないように、当事務所では登記識別情報通知を専用の封筒に入れてお客さまに交付し、受領後は封筒を封印してしまうように強く勧めています。

この場合、まず封筒を破らなければ登記識別情報通知に手を触れることができないので、紙を変色させずに粘着剤を無力化できるしほ…いえ、悪意ある誰かが現れたとしても作業のハードルが上がります。

紙の登記識別情報通知を昔の登記済証とおなじように厚紙の表紙に綴って渡すのは…ちょっといただけない、というより恐すぎる、というお話しでした。

期待(先行)のサービス、開始の件

連休後半はウェブサイトに手を入れる作業をして過ごしておりました。今後の業務の柱になる…とは思えないのですが、新しいサービスとそのページを公開しています。

一応は登記の仕事=休眠担保権や過去の仮登記の抹消、という体裁を取っています。
(http://www.daishoyasan.jp/service/operate/tariff3/s-seek.htm)

…ま、その部分だけなら同業者さんがお持ちの、よくあるページです。

その部分が何かの言い訳のように下半分に配置されておりますが、僕が関心を持っているのはそのページの上半分、所在不明(行方不明)な登記名義人の探索の業務です。上記のとおり、URLのほうには本音が出ています(笑)

さて、このブログで連休前半に扱ってきた過去の電話帳をはじめとする公開データをフル活用して登記名義人の探索に挑めるようにしたい、それはいいけどお客さまからすればそんな得体の知れないサービスにお金出す気になるまい、ということで当分のあいだは、当事務所のサービスには珍しい完全成功報酬制を採ってみることにしました。

もっとも、使うのは主に電話帳だし(補足で閉鎖登記簿謄本の取得や閲覧をするでしょうが)、僕が定期的にしている東京出張にあわせておこなう納期設定なので大怪我はするまい、と踏んでいます。ページの下半分=休眠抵当権の抹消かなにかのご依頼につながればむしろそちらのほうが純粋に儲かる仕事にもなりますし。

ただ、問題意識はそれなりに持っています。相続登記や名義人住所変更登記をしないことで隣接地の所有者や担保権者、その他自分の登記を制限する登記をしている登記名義人との連絡がつかなくなる問題は今後どんどん広がるはずです。まだご依頼に至ったことはないですが、所有権移転登記を自分でする人のためのコンテンツを経てきた方の相談で仮登記の残骸をどうするのか聞かれることもときどきでてきました。

しかしながらこれへの対処としては

  1. 士業が住民票を単純に職権請求する。費用数千円
  2. 探偵業者を動員して人間そのものの所在を探す。費用十数万~数十万円超

のサービスが存在しているに過ぎず、品質面でも費用面でも、この中間がほぼありません。士業の人が現地に行って聞き込み等をしてしまった場合、当然ながら突っ込んだ時間に比例して費用は2.にどんどん近づきます。

一部の探偵業者には「調査した場所に対象者がいないことを前提に」その場所周辺での聞き込みだけをして公示送達等申立の添付書類にするサービスは調査費用数万円からあるようですが、これは相手を探すサービスではありません。

やっぱり、上記1.2.の中間はないように思えます。

この部分をなんとかできないか、というのが、あくまでも先行している期待ではあります。

手続き全体を通じて、各所でご本人がやれることはやってもらうのをよしとする点はここでも変わりません。もし所在不明のままで終わり、公示送達の申立かなにかを要するようであればお客さまが現地調査されたらいいでしょう、行ってらっしゃい(^^)/、ということでまず検索エンジンの反応を見てみます。まずはここから、です。

過去の電話帳を用いた登記名義人の探索の可能性 3

国会図書館にしか所蔵がないことは無視して、過去の電話帳の活用を論じる初夏の自由研究は、今日でいったんおしまいです。これまで紹介してきた過去の電話帳の活用、では実際にどれだけの可能性を持っていそうでしょうか。

その手がかりを、少し探してみましょう。僕がコピーしてきたのは宮崎県某村の、昭和44年・55年・平成2年・13年・22年・28年の電話帳です。

このうち個人の収録件数が最大(730件余り)の昭和55年のデータから、アトランダムに35件(5%弱)の個人を抽出して、55年以降の収録状況を追ってみました。その結果。

平成28年の電話帳に収録されておらず、追跡不能なもの 19件(54%)

…そんなもんか(冷笑)と思われたかもしれませんが、そもそも平成28年の全収録件数が370件ほど、つまり母集団そのものが同期間で49%減少し、追跡不能になってしまっていることに注意する必要があります。あとは、

  1. 同じ電話番号の継続使用が確認できたもの 12件(34%)
  2. 関係不明の別人が同じ電話番号を使っているもの 3件
  3. 同姓の別人が同じ電話番号を使っているが相続ではないもの 1件

このようになっています。

1.は現存していて単純に住民票が取れる集団、ではありません。

この12件のうち、昭和55年から平成28年までに転居歴が見いだせたもの(市町村によっては、住所相違で住民票の発行請求を蹴ってくるもの)が4件、同姓の人に名義が変わったものが1件混じっています。後者は典型的な相続による名義変更と考えます。

追跡不能な19件のなかにも、いったん同姓の別の名前の名義になって平成22年の電話帳まで記録を追えたものが1件ありました。死亡・転居後5年は住民票の除票が取れることから、こちらの1件は現在(平成29年)でも住民票の除票が取れるかもしれません。

2.は関係不明で、名字も名前も住所も別の人が同じ電話番号を使っているもの。単に空き番号が割り当てられただけかもしれないので有利には捉えないことにしましょう。

3.の1件は想定していなかった挙動を示したものです。当初の名義人の生存期間中、すでに別の電話番号を使っていた別人がいました。この別人に自分の電話番号を譲ってから、譲渡人自身は電話帳から消える、そうした挙動が見られました。

例えるなら電話加入権を親族に生前贈与してから転居なり死亡なりすれば、こういう動きになるでしょうか。電話帳を丹念に追った結果、両名にはなんらか関係はあるだろう(おそらくは親族だろう)といえる、ということにはなります。

ひいき目に評価すれば、上記の太字にした件数合計7件(20%)は、昭和55年時点の住所氏名データからは現在の住民票やその除票が取れない状況にあり、電話帳を利用して関連を追えば誰か関係者の住民票や除票が取れる可能性がある、ということになるかもしれません。めいっぱい厳しく評価しても、同姓の人に名義が変わった1件(3%)だけは電話帳による調査が役立つもの、と考えられます。

昭和55年から平成28年まで転居も死亡も相続その他の加入権名義変更もなく健在なのは35件中8件だけしかなかったわけですから、それと比較すれば電話帳を使って追えるデータが7件、というのは少なくはないように思えます。現地調査の時間を減らすインパクトはある、といっていいでしょう。

とはいえ、これは単に同一の村内の電話帳をいじって出した数値に過ぎず、他市町村転出の可能性まで追えればもう少しましな結果は出ると思います。

紙の電話帳とは別の情報ソースでも調べたところ、追跡不能な19件のうち痕跡を残しているものが2件ありそうなのです。電話帳を使って別の自治体まで探索できれば、さらにいくつかは見つかるかな、と(笑)

たまたまこの記事をみてしまった普通の人にお断りしておくと、電話帳だけに頼ってこうした調査をすることは全然推奨できません。閉鎖登記簿謄本や官報も、公開データとして重要になってきます。

これらをさらに別のページで整理して、住民票がすぐにはとれない登記名義人の探索方法と探索代行受託に関するコンテンツを作っておこう、と考えています。これはゴールデンウィーク明けの仕事にしましょう。

明日は、カレーを食べてきます。相続登記のご依頼をくださった方への、接待で。

過去の電話帳を用いた登記名義人の探索の可能性 2

過去の電話帳で所在不明な登記名義人を探したい。

でも、そうした電話帳は国会図書館にしか所蔵がない、という不都合な真実からはいったん目をそらして、お話しを続けるとしましょう。調べたことが多いので前口上も長いのですが、簡単なHow to記事を期待する安直さでこの資料にあたることは、どうやら好ましくありません。

今回は資料としての過去の電話帳の特徴をまず説明します。

○所蔵されている期間

国会図書館ではおおむね昭和39年以降、昭和40年代前半からは全国の電話帳を所蔵しています。ときどき欠けている年もありますが、個人名・企業名とも昭和40年代以降、あらかた揃ってると思って差し支えありません。

それ以前のものについては、民間業者が作った「私製の」電話帳の所蔵を見いだせることがあります。これは大都市のものしかなさそうですので、よほど困ったときでなければ無視してよさそうです。

…などという安易な決めつけを口走るような人間をこの調査の担当者にしてはいけない、という話なんで気をつけてください(笑)

○収録件数の推移

昭和40年代の社会動向をちょっと考えてみてください。

  • 地方の山村では同時期の前から人口減少が始まっています。
  • 一方で、各世帯への電話の普及が一気に進んだのもこの時期です。

このため、今回調査した宮崎県の山村では昭和40年代から50年代までは電話帳の収録件数は増加、以降60年代にかけて横ばいから減少、平成に入ってからはどんどん減少、という傾向を示します。いわば昭和50~60年代が電話帳の黄金期でして、国勢調査の結果把握された世帯数に対して個人の電話番号の収録件数はこの時期、80%を超えてきます。

一言でいうと、「昭和50年代の農山村において、世帯の8割以上をカバーしうるデータ」が電話帳、ということになります。

明治時代に最後の登記の記録がある人にここまで生きててくれ、というのはちょっと厳しいかもしれませんが、農地改革で自作農になった人なら残り30年生きてくれれば電話帳で捉えられる圏内にかかってきます。

○収録形態の変遷

実は、電話帳に番地までの住所が掲載されるようになったのは昭和60年代以降です。この点に注意する必要があります。

それ以前は、一部を除いて大字までしか記載がありません。ですので電話帳から読み取れるのは

  • 氏名
  • 氏の読みの、第1文字目(鈴木なら、「す」)
  • 電話番号
  • 住所または、大字までの住所

これらのほか、場合によっては個人事業主の業種(建築、養豚、林業、薬局、など)もカッコで添え書きされていることがあります。たとえば鳴海町長田32番地の代書人なら、こんなふうに。

鳴海町

  • 鈴木 慎太郎(書士) 95-7896 長田

上記の住所に長田32-703という記載が加わるのは昭和60年代以降です。さらに、行政書士と司法書士が一緒にくくられていることもあったようです。

電話番号も少しずつ変化します。

昭和40年代前半までの農山村では地域団体加入電話というものがあり(僕も初めて知りました)どうやら一つの電話番号に数件の加入者がぶらさがっていて、交換手を通して通話する、ということだったようです。同じように地域で私営の交換台を経由する電話として、農村の有線放送と一緒に運用される電話やらなんやらがあった、と上記リンク先には書かれています。

ですので同時期の電話帳には、時々おなじ電話番号を与えられたたくさんの人の集団が載っています。最初は5桁あった市外局番が4桁になり、市内局番が1桁から2桁へ変わる、というのもありがちです。

ですが、番号の付け方はさておき電話帳に載ってくる人は

  • その電話が引かれている家で1人だけ、
  • おそらくはその家を所有していたり、世帯主である可能性が高い人、

と推測して差し支えありません。

※これは年齢40代より上の人なら経験に照らして納得できるはずですが、なかには「契約者死亡後、電電公社に対する名義変更を遅らせた」ために死亡後しばらく死亡者名義のまま、というパターンもあるはずです。ウチがそうだった記憶があります(笑)

電話帳にもう一つ大きな変化が訪れるのは1990年代後半、つまり平成初期です。

このころから、CD-ROMに全国の電話帳データが収録されたコンピュータソフトの発売が始まります。プレスリリースを見ていると、当初は個人・法人あわせて全国で4千万件を超えていた収録件数は、現在では3千万件を割るところまで減っているようです。

そんなこともありまして、当事務所ではできるだけ発売時期の古い電話帳ソフトをヤフオクで探索中です。これが手に入れば探索方法もずっと多様化するのですが、いずれにせよ昭和時代のデータは紙媒体を目視で見る、という作業を強いられることになります。

○利用方法1

たとえば昭和20年代に土地を取得し、今はその住所地に住民票がない、手紙を出しても宛先不明で返ってくる、という人がいるとします。名前を甲野一郎、としましょうか。

まずその人の住む市町村を収録した電話帳でその所在を確認します。

前述のとおり収録状況が充実しているのは昭和50年代の電話帳ですので、ここから調査に入ります。収録が無ければ念のため年代の早いものにさかのぼります。

ここでは氏名の記載が確認できるかもしれません。住民票は死亡後5年で廃棄されるのに対し、いま見ているのはまさに昭和50年代のデータだからです。

運良く見つかったら、新しい電話帳を数年おきにチェックして掲載を確認していきます。

同じ市内局番の区域であれば、転居しても電話番号が変わらないことは多いです。したがって、転居しても同様に…というより掲載位置すら変わらずに追い続けることができます。

ある時点で甲野一郎の記載がなくなり、同じ住所・電話番号で甲野二郎または花子の掲載が始まることがあります。

これは、相続で順当に名義が換わったことを示しています。

ですので調査対象を甲野二郎または花子に変えて調査を続け、住民票が取れる時期まで引き寄せます。関係者が生きていてくれればそれでよし、仮に記載がなくなっても、過去5年以内であれば住民票の除票が、この例では甲野二郎または花子で取れるはずです。

住民票には本籍が記載されているわけですから、あとはどうにでもなります。

※住所が番地までわかるようになったら、ここでいったん「住所地の土地の登記情報」を取るのは悪くありません。山林や原野は放置していても、自分が住む場所だけは相続登記している、というのはあり得るパターンです。こんどはその土地の所有者から、関係者がたどれるかもしれません。

○利用方法2

上記の例で甲野一郎の名前では掲載が消えてしまい、同じ名字の人もいない、というパターンがあります。

この場合は、少々手間はかかりますが次の年の電話帳で『おなじ電話番号』の誰かをひたすら探します。通常は死亡や転出で空いた電話番号をすぐ他の人に割り当てることはないので、翌年から同じ電話番号の誰かが出てくるようなら、これは甲野一郎と関係がある人物と一応推定します。住所まで一致していれば、まず無関係ではないでしょう。

ただ、さすがにこの人の住民票を請求するわけにはいきませんからこの人についてさらに電話帳を調査し、生存していそうなら手紙を出してみる、といったアプローチから始めるのがよさそうです。

○利用方法3

調査の始点を別の氏名から始めることはできるかもしれません。

調査対象者の住所地に該当する地番で、コンピュータ化に伴う閉鎖登記簿謄本をとってみたらどうでしょう。住所がある以上、そこには誰か住んでいたはずです。建物が登記してあればなおよいでしょう。

そうして同世代の人の記載を見いだせたら、その人または相続人を上記によって追跡してみる、ということも当然できます。電話帳自体は、閲覧はタダですから。

○利用方法4

電話帳に住所が番地まで表示されるようになったのは昭和60年代からだ、という限界はありますが、上記1~3で成果が挙がらない場合、あえてこの時期の電話帳から調査を開始することもできそうです。

調査対象者の住所とおなじ番地に住んでいる人をなんとか目視で探し出し、その人を追跡しつつその人の住所地の登記情報を取得して関係の有無を推定する、ということになるでしょうか。理論上は可能ですが、収録件数が多い大都市ではあまりやりたくない手法です。

○利用方法5

調査対象者が他の市外局番の地域に転出したらもう追尾不能ではないか、と言われれば確かにそうです。

確実に転出時期と転出先自治体がわかっていれば、「ある時期に転出先で新しく電話帳に掲載されるようになった甲野一郎」を発見して調査を再開することは一応可能なんですが、転出先や時期といったメタ情報の取得を期待するにはそれこそ近隣の方々への聞き込み調査をする必要があるでしょう。

条件付きで解決策になりそうなのは、前述の電話帳CD-ROMです。こうした装備があれば、収録時点でのデータに基づいて「同じ人名を、全国で」探すことができます。

とりあえず、全国で(苦笑)

あとは発見できた各候補者について紙の電話帳をさかのぼり、転出前自治体の電話帳から収録が消えた時期と転出後自治体で収録が始まった時期が連続する同姓同名の人物については同一人物の可能性大、と認定すればいい…ということにはなるでしょうか。

恐ろしい労力にはなりそうですが、一応可能です。

そんなわけで、当事務所では少なくとも収録時期について数年の間をあけた中古の電話帳ソフトを揃える必要がありそうだ、というお話しになりました。


追記

連絡不能・所在不明な登記名義人の探索および休眠抵当権の抹消に関するページの公開を、5月から開始しています。

過去の電話帳を用いた登記名義人の探索の可能性 1

事務所東側の丘はさみどりに萌えて、絶好の行楽日和です。
ゴールデンウィークの仕事が、もう一つ減りました。

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…ある労働訴訟。協議の場で口にしてきた未払い金額より1.●倍は多い計算表が、会社側から出てきています。

なにやらいい加減なもんだ、と裁判所の対応も含めて少々首をかしげざるをえませんが、ともあれ僕の仕事は1.●倍ラクになりました。

この表を直ちに詳細に検討して大規模に反論する必要はなさそう、ということで昨日の記事の続きです。


隣接地の所有者や過去の仮登記の権利者、ときには解散しちゃった会社の代表者…などとして登記上読み取れる他人に連絡を取る必要が、たまに発生します。

たまにしか発生しないのですが手続き全般に与える破壊力が大きい、というのがこの問題の怖いところ。あくまで「その手続き当時の」住所と氏名の組み合わせでしか表示されていないこれら所在不明者は、死亡したり転居したりしてしまえばかんたんに行先がわからなくなります。

一次情報として知ることができる対象者データは住所と氏名だけなので、死亡や転居にともなって住民票や除票がとれなくなったら公的な証明でただちに追跡することができないからです。

これを新しいツール(といっても古い資料)である『過去の電話帳』を活用して探せないか?というのが、ゴールデンウィークの僕の自由研究です。

登記上の所有者の所在がわからない、という問題は東日本大震災後にいったん注目されました。そのときの記録では、地権者2400名余りのうち最初は半数程度の人が現在の住所と一致していない、そんな情報があったはずです。

明治時代から相続登記をやったりやらなかったりしてきた農山村(の、中間貯蔵施設の予定地ということは住宅地や主要な農地からは離れているだろう場所)には、きっとどこでもそういう状況が隠れています。

不動産開発(原野商法とは言うまい)の跡地を巡っては、興味深い記事がありました。

『補償時報』108号(平成10年)所載の「山林分譲地の用地取得について--居所不明者の詳細調査等」によれば、中国自動車道の工事の予定地にかかった兵庫県の山間部、佐用町の別荘地(ただし、実際には別荘建設も道路開設も無く、机上で分筆と分譲があっただけであった模様)の地権者は64名。昭和40年代に分譲された=つまり昭和40年以降の住所氏名が登記上見いだせる地権者たちについて事業者担当者が平成初期にしたことは

○まず、登記上の住所氏名で住民票を取得した

 この時点での所在不明 23名

○次いで担当者が地権者住所地の役場に行き、住所地周辺の調査もおこなった

 この時点での所在不明 3名

ここで記事によれば調査地の役場で「かなりの情報」を得た、との記載がありますが民間人がこれを期待するのは野暮、というものでしょう。きっとかなりの情報があったんでしょうね(遠い目)

おそらくは徴税管理のために把握されていた情報かなにかをもらったと妄想しておいて、現地調査ではつぎのような人に話をきいた、とのことです。

  • 近くの派出所
  • 自治会役員
  • 米屋や酒屋
  • 近所の人。共同住宅なら管理人

このほか電話ボックス内にある電話帳を調べるなどの調査をへて、記事の時点で所在不明は3名に絞り込まれた、と。現時点でこの区間に道路は通ってますのでこの3名についてもなんらか解決が図られた、ということでしょう。わざわざ記事に書いてくださった、ということは電話帳もどこかで役に立ったはずです。

登記名義人たる所在不明者の探索方法としては上記のほか、国交省の所有者の所在の把握が難しい土地に関する探索・利活用のためのガイドラインのページ巻末の事例集には「お寺の過去帳」がわりとよく出てきます。これは調査対象者の生存時期が古い(明治から終戦直後あたりで登記が終わっており、あとは相続登記未了)の事例が多いからだと思います。

ガイドライン所載の事例は主に行政がやる所在不明者調査ですので戸籍謄本や登記事項証明書の公用請求が派手に使えるほかは、それで役所の記録が取れなければ現地で聞き込みしましょう、というのが現在の業界標準だ、と考えて差し支えありません。電話帳はあくまで「現在のものを、単に調査対象者の所在と電話番号を知るために」使われているだけです。

自分が住むための住宅など関心の高い不動産でなければ、昭和40年代の登記名義人も最初は3分の1が連絡不能の状態からスタートすることになる、調査の過程で聞き込みがどうやら必要になるとみんなが考えている…ということで時間もお金も限られている民間人には少々酷だと思うのです。

本コンテンツではこの部分、上記の例なら所在不明23名から3名以下に減らす作業を過去の電話帳の活用その他で置き換える、ということを検討するのですが…

すみません。実は過去の電話帳の所蔵は地方の公共図書館にはほとんどなく、東京の国立国会図書館にしか揃ってません。

結局それかよ(怒)と言われそうですが、まぁ僕のところで安く調査代行しますから勘弁してください、とごまかして話を先に進めましょう。


追記

連絡不能・所在不明な登記名義人の探索および休眠抵当権の抹消に関するページの公開を、5月から開始しています。

日本で生まれた未成年外国人の代理権限証書

表題の件。先月お受けした不動産登記はつぎのようなものでした。守秘義務に反しないように一般化します。生前贈与の案件、と思ってください。

  • 不動産を贈与する人は日本人の成年者です。
  • 受贈者=不動産をもらい受けるひとは日本国籍はなく、就労可能な資格を持っている人とそのご家族。うち1名が、日本で生まれた外国籍の幼児です。

受贈者側が日本人ならよくあるパターンです。幼児とその両親が記載された戸籍謄本を取得して、両親の法定代理権を示す代理権限証書として登記申請書にくっつけるだけです。

ですが、日本国籍のない日本在住者の住民票はあっても戸籍の記録はそもそもありません。

だったら両親の法定代理権を明らかにする書類をどうするの、という情報は、ウェブにはあまりはっきり書かれていません。この情報をウェブに放つ価値はありそうです。

外国で生まれた外国人の未成年者、ということでしたら原則通りにするしかありません。戸籍制度がある国なら現地の官公署でその記録をとり、そうでなければ親子関係について現地の公証人なりその外国の在日公館等で公証をうけて、それを日本語訳した訳文を添付して親子関係を明らかにする、ということになります。

もちろん本件でもそれをやっていいのですが、外国人が日本国内で出産した場合も日本人と同様に出生届の提出はなされます。その記載事項証明書を取得すれば、子供の氏名・生年月日と両親の氏名など、親子の関係がわかるひととおりの記載がなされています。もちろん、日本語で

そんなわけで、これを戸籍謄本に代えて、その外国人親子の関係を示すもの=親の法定代理権を示す代理権限証書として不動産登記申請書に添付したところ、申請そのものはつつがなく通りました。これが添付書類になることと受贈者について日本語の通称名を記載した以外は、日本人相互間の不動産贈与の登記申請書とぜんぜん違いはありません。

ただ、これはこれで問題があるような気はするのです。

…などと知ったふうなことを、申請通過を確認してから言う態度に問題ないのか、という点からはそっと目をそらしましょう。

さて、出生届の記載事項証明書は、あくまで『子の出生時点での』親子の関係を示すものにすぎません。その後片方の親が死亡するとか、子供が養子に出されるなどすればその時以降の法定代理人が誰かを示す書類とはならない、と考えなければなりません。

今回お受けした外国籍の方の国の家族法では、子が養子に出された場合は養親が親権を行使し、実親は法定代理権を失う、とされています(その養親が死亡したりすればまた別のようですが)。

こうした法律を持っている場合、ある時点での『親に見えるひと』の子供に対する法定代理権は

  1. その親に見える人が、子の出生時点でその子の実親で
  2. 贈与契約や登記の委任をする時点においてその親が親権を失うようなイベント(死亡なり養子縁組・その解消など)が発生していない

ことの双方を明らかにしないと、ほんとうはいけないような…気がします。

が。しかし。

今回の登記申請では、

  • もうそろそろ保育園にいくんじゃないのかな(遠い目)

という年齢のお子さんについて、出生届記載事項証明書を代理権限証書にして申請が通ってしまいました。

確かに不動産登記で添付する戸籍謄本の発行時期が問われることもないので日本国籍がない人にだけそれを厳しくする道理もないのですが、戸籍と違って出生のあとは絶対にアップデートされないデータ(出生届を出した時点の情報だけが記載されている記載事項証明書)をつかって、じゃぁ子供が17歳になったときでも親の法定代理権を明らかにできるのか?と言われたら…

そうした不動産登記のご依頼はちょっとね、などというと、きっと補助者さまに笑われることでしょう。

最後に、当事務所ではごくふつうの不動産登記のご依頼を積極的に扱っておりますほか、あえて土地家屋の名義変更を自分でやってみたい、という方に登記相談を行っております。それぞれ皆様のご依頼をお待ちしております(笑)

誰かが、何かを、間違えた

有川浩の『図書館戦争』をSFの一種だと思って読み始めたのは僕だけでしょうか?

現実と少し違う未来に進んでしまった日本を舞台に、架空の行政官庁の構成員の活躍を描いたもの…小川一水の『こちら郵政省特別配達課』と同じような。

両者の読者層がどれだけダブってるかはさておいて。巻目の『図書館危機』まで読み進んだあたりでこれは恋愛小説ではないかと気づき愕然としたものです(苦笑)

で、今日は1文字の間違いのお話です。


申請の当日にそれに気づいたのは、我ながらよくやったと思います。
先日お受けした、相続登記のご依頼のことです。

複数の不動産の名義を、親子や兄弟での遺産分割協議を経て1人の相続人に集中させる。よくある類型のそのご依頼では、登記情報によれば不動産のうち1つだけが所有者の住所が少々違った記載になっていたのです。

たとえば所有者の住所が千代田区永田町1丁目とあるべきところを、千代田区永田1丁目となっている、そんな状態を想像してください。

どのような経緯でそうなったのか登記情報からは読み取れないので、法務局でコンピュータ化前の閉鎖の登記事項証明書を久しぶりに取ってみました。

原因を作った登記申請はわかりました。コンピュータ化前に実施されたある登記申請の経由後、当時の紙の登記簿に所有者の記載が間違ってタイプされていたのです。

さて、住所が間違って記載された結果、実際には存在しない住所で被相続人の住所が記録されてしまっています。

被相続人の死亡時の住所と登記情報記載の住所が異なる場合、ではあります。しかし、単に被相続人の住所を証明する書類が調達できない場合に一般的な相続登記の申請とはやり方が違う気がします。

その日に申請を出すつもりだった事はおくびにも出さずに、まずは担当者さんと事前の打ちあわせをします。この問題にはずっと前から気づいていたふりをして(遠い目)

あちらも少々考えてくださったようで、さまざまお聞きした結果、以下の書類の追加があれば申請を受理しようということになりました。

  • 被相続人が、その不動産を取得した際の登記済証(いわゆる権利書)
  • 市役所で発行される、 その住所が存在しないことの証明書

不在籍証明書と不在住証明書ではないのがミソです。
今回は、登記情報に記載されている住所が誤ったもの、つまり現実には存在しない住所であるので、その旨の証明書をとればということになったわけです。

お客さまには早速、従前の登記済証がないか探して頂くようお願いしました。
すると、お願いした登記済証の他に、住所の記載が誤った原因となった登記申請の登記済証も送られてきたのです。申請書副本からつくられた登記済証が。
そこでの所有者の記載は、正しい住所になっていました。

結論。
誤ったのは、申請人ではない(笑)

そんなわけで、申請書には従前の権利書のほか、誤記が生じる原因となった登記の登記済証も添付して、つつがなく申請をを終えました。

その従前の登記申請、業界団体の役員をしておられた大先生の事務所から出されています。申請後に閲覧かけて照合したのかは不明ですが、まぁ忙しすぎるのも考え物ということかもしれません。

ヒマヒマな当事務所では、今回の登記済の引き渡しにあたって1文字ずつ記載事項の再確認を行うとしましょうか。十数年後に誰かを困らせることがないように(汗)

最近は登記の本人申請に関心を持って、この事務所のウェブサイトやブログをご覧くださる人も増えているようです。
少なくとも受験生や同業者のみなさんより、未来のご依頼につながり得るありがたい方々であります(笑)
今日はそうした方々向けの、法務局にある不動産登記の記録が、常に正しいわけではないというお話でした。


今週末の出張は10月9日、京都府・奈良県内で用事が入りました。同日は夕方以降奈良以東で余裕があり、10月10・11日はまるごと空いています。出張相談ご希望の方のお問い合わせをお待ちしています。

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