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労働関係訴訟追跡調査実施の可能性を考える(第10次開廷表調査のまえに)

東京大学社会科学研究所は今年、裁判所の協力を得て労働審判制度についての意識調査を実施しています。

8年前にも実施されたこの調査は、労働審判手続の利用者にアンケート用紙を配って回答を募り、8年前の調査では労働者/使用者にインタビュー形式の取材を試みたものでこの結果は単行本として刊行されました。

これとは別に、非売品としてインタビュー部分だけ国会図書館に所蔵されています。

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この調査の大きな特徴として、労働審判手続の解決金額を集計して平均値・中央値の統計をとっていることが挙げられます。事件類型別に細分化されているわけではなく調査の対象が地位確認請求=解雇・雇い止めに偏っている感じはします。

ただ、この調査で出てくる数値は不当解雇事案で素人が書き散らしたウェブサイトのみから情報収集している労働者の妄想を吹き飛ばすに充分な破壊力をもっており、今回の調査にも期待しています。単行本化には2~3年かかるのかもしれませんが。

こうした調査を完全に民間在野の側で実施するのはまずムリです。

理由は簡単で、結果を追跡すべき事件の存在を知ることがムリ、または、それ自体にひどく手間がかかるから。特に労働審判は事件の存在そのものが公開されていません。公開データで事件の存在を知ることができるのは通常訴訟・少額訴訟だけです。

そうした手間をかけて集めたデータが当事務所には、270件ほど蓄積されております。

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さて、今年も開廷表調査の季節になりました。

当事務所では毎年この時期、2週間または4週間の期間を定めて名古屋簡裁・地裁・高裁の開廷表を調査し、労働関係の訴訟を把握しているのです。

…ついでに言うと、ご同業あるいは隣接士業の諸先生方が原告になったり被告になったりした訴訟なんかもときには調査票の余白に書き留めていたりしますが。

そろそろこのデータを使ってなにかの研究を世に問うことができないかな、と思っているのです。今年の業界誌の論文募集には間に合いませんけど(笑)

まず可能なのは把握している訴訟の記録を片っ端から閲覧して、事案ごとに請求額に対する認容額の割合を統計化すること。労働審判での調査は先行研究があるわけですから、むしろ訴訟のほうで取り組んで両者の結果を突き合わせると興味深いかもしれません。

僕の調査で把握された訴訟のなかには順当に中小零細企業の事件も混じっています。

先日のブログで、ある雑誌には東京地裁(主に大企業)の開廷表が連載されていると申しました。そちらで把握できる大企業の労働関係訴訟の記録と比較して、たとえば地位確認請求での解決金の多寡を比べられるのか、こうした調査も可能ではあります。

公開絶対不可と承知していますが、やってみたいのは訴訟代理人に関する黒いリストの作成です。手抜きな準備書面作成や低レベルな和解をした地裁代理人の名簿を作っておいて当事務所相談室内で随時参照するのは悪くありません。

お客さまがおびえるかもしれませんが(遠い目)

…いずれも研究費は数万円で済むはずなんですが、日常業務の片手間にやるには少々荷が重いのです。かかる費用よりは時間に耐えられません。

相続登記のご依頼がもう少し増えたらそんな大規模自由研究もいいね、といい加減な約束を子供にする親のように先延ばしをしてもう何年か経ちました。おそらく今回の調査で保有データが300件を超えるはずです。

第10次=偶数次の調査である今回は、調査期間を4週間取ることにしています。

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