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2年だけ幸せでいられる可能性

先月末時点でお受けしている登記事件は5件。今週末さらに2件を新しくお受けすることになり、まず有料相談が終わりました。

恐ろしいことだ、と思わず口走ったところ、いつもどおりに補助者さまが尋ねられるのです。「恐ろしいことなのですか」と。

来月1日で創業13年。この時期いつも当事務所の来し方行く末に思いをはせるのですが、今年はこれまでと、ちょっと違うかもしれない。そんな話しです。

業界平均からするときわめて低レベルな登記事件数の当事務所、ご依頼のほとんどはウェブサイト経由でのお尋ねから始まります。送信フォームからのものは創業以来の全件が保存されており、主な依頼類型(現時点では登記およびファイナンシャルプランニング/労働紛争/裁判事務/その他一般に分かれます)で送信フォームそのものが異なる関係上、フォームからの受信実績をざっと集計することはあまり難しくありません。

不動産登記と労働紛争のフォームからの受信件数を、2005年から比べてみます。

暦年 登記 労働

2005    20     51

2006    12     32

2007     9     48

2008   11     50

2009    6      52

2010    4      70

2011    9      47

2012    7      31

2013   14     46

2014   50     66

2015   40     81

2016   28     40 ※6月末時点

このほか一般の送信フォームからも登記その他の問い合わせが若干あり、2015年初頭までは両分野とも電話での問い合わせがほぼ同数あった、というのがここ12年の傾向です。

登記事件の問い合わせ件数が年20件ない、という時期を長く過ごしてしまった関係で、ある一時点で受けている登記事件が片手の指で数えられないことが異常事態である、ということはまぁ笑ってご容赦いただきたいな、と。

この件数の遷移を、もう少し考えてみます。

2005年ごろって覚えておられますか?まだダイヤルアップでインターネットに接続する人がおり、携帯電話は第二世代でデータ通信速度が9.6kbps(メガじゃなくて、キロが通信速度の単位)、当然ながら士業の事務所がウェブサイト持ってる自体が少数派で、『ウェブサイトを持ってりゃ依頼がくる』そんな呑気な時代だったのです。

僕のところも送信フォームとちょっとした料金表を置いておくだけで、抵当権抹消登記を1件1万円でお受けできたり(今なら1980円、なんて事務所が出てきていますよね)、特定調停のご依頼なんかも年に何回か、それこそ依頼を待っていれば向こうからこっちを探してきてくれた…そんな夢みたいな時代。

つまり2005年の問い合わせ件数は『ウェブサイトそのものが珍しい』ことで説明できます。士業によるウェブサイト保有が一般化しだす2006年以降、問い合わせ件数は横ばいあるいは減少傾向を示します。問題が表面化しなかったのは2006~2009年にかけて、過払いバブルの泡をすこし舐めていられたから。この時期のブログを読み返すと、この事務所で不動産登記は『たまにやってくる、なにか素敵なもの』として取り上げられています。

2008年にあったはずのリーマンショックとその後の派遣切り騒動が当事務所の労働紛争問い合わせ件数になんの影響もなかったと気づかれるかたもいらっしゃるはずです。もともと小規模企業の正社員の方が主たる客層で、派遣で働いておられる方があまり来られない事務所だったことと関係があるのかもしれません。

この分野は2010年を頂点にして問い合わせ件数が激減し、2012年に大底を打っています。

これはおそらく、同時期の過払いバブル崩壊後の身の振り方として『残業代請求』を選んでしまった(笑)士業の事務所さんとそのウェブサイトの増加に埋没したのが原因です。

ええ、F井総研の士業向けセミナーに『残業代請求』なんてのが出てきてたのがまさにこの頃です。

これに対してコンテンツの増強という遅効性の解決策を講じた結果、その後の問い合わせ件数は増加に転じたのですが問い合わせの中身はすっかり変わってしまいました。

問い合わせの中心は請求額の大きな残業代請求から1~2ヶ月の給料未払いや退職を巡る問題になってきています。最近は少し残業代請求の問い合わせが復調してきているのは、他事務所における労働紛争への関与が少しずつ消極的になってきたことの裏返しなのではないかと推測しています。

過払いバブル後に流入してきた方々に弾き飛ばされかけたが情報量の多さのおかげでしがみついている、ということで説明できる労働紛争に対して、不動産登記のほうは2013年以降、きれいに件数を増やしてきています。

実は2012年末にウェブサイトのデザインの大改装を不動産登記のページでおこなっており、時期的にはこれしか問い合わせの増加に影響する要素がありません。サイトをきれいなデザインに変え、登記の報酬を自動計算できるシステムをおいて計算できる類型を増やし、これらをレスポンシブ対応にし終わった今年春までのあいだに、電話とあわせれば『毎週、登記のお問い合わせがある』状態になりました。

でも。

こうして見てると、この事務所はウェブマーケティングにおいて『少し早く人と違うことをはじめるが、数年で他の人たちに追いつかれ、追い越される』ことを2005年から繰り返しているように思えます。追いつかれる期間は、短ければ1~3年。

僕の調べるところでは、現時点で僕に登記のご依頼をくださる方の意志決定に大きな影響を与えているのは文字情報に加えてウェブサイトで登記費用の自動計算ができることです。このシステムは全国的にもまだ珍しく、登録免許税以外に司法書士報酬も入力状況に応じて変化する計算ができるものは本県と神奈川県の事務所さんに複数ある程度でしょうか。

しかしながら、これはウェブサイト作成業者に50万円ぶん投げれば1ヶ月で実装できる程度のものなので…

結論。この幸せは長くは続かない(笑)

贅沢言わずにご依頼をお受けしていれば登記だけで暮らせる事務所の入り口に立ったことはことは事実なんですが、それを選んで2年もぼけっとしてたら、その後に長い長い冬がやってきそうです。

そんなわけで、来年か再来年から何をしようか考えねばなりません。できれば登記の件数を伸ばす方向で。

先ごろ古い悪い友人が持ってきてくれたマンション投資の相談が、これに何らかのヒントを与えてくれているような気がするのです。

きわめて漠然とした印象なんですが、『ふつうのひとがなんとなく関与したためにうまくいかなくなったなにかの復旧』は法律関係者にとって、大きな市場を形成するかもしれません。

どうしたらいいのかわからない空き家や山林/適当にやっちゃった遺産分割/いくらか抜いてるかもしれない親族後見人/キャッシュフローが不明なマンション投資計画/なんとなく作った会社とその社長/実は方針を誤ってた本人訴訟…そういったものを、とにかくどうにかする仕事が。

成年後見人による横領がこれだけ流行になったということは民事信託もいずれおかしくなると(同業者諸先生方のご努力をくさすわけではありませんが、そこは冷静に)見ているのですが、これはたぶん5年先のトピックスだと思います。

※士業の業務でおかしな連中が大量参入して市場が荒れるのは、F井総研がその分野でセミナーやったしばらくあと、と考えて同社のダイレクトメールをいつも楽しみにしています。もちろん私見です。

後見人や信託受託者を監督する業務にも可能性がありそうですが、これは業界団体がメンツを賭けて取り組む分野になるはずです。僕が関与できる分野にはならないでしょう。

次は、登記より件数・売り上げともに多い労働紛争に関する、これも困った話しです。

タイトルだけは以下の通り、決まっています。

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