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残業代請求:カモられるか捨てられるかの二択

数年前に僕がゆるやかにかかわっていた某合同事務所における債務整理業務は、なかなかステキなものでした。

  1. きれいなウェブサイトで甘言を弄して全国より依頼をあつめ
  2. 『残債務がなく』『銀行への債務がなく』『ヤミ金その他やっかいな貸し金業者の関与もない』おいしい案件だけを厳選して受託し
  3. 県外の依頼人になんか会わない
  4. 訴訟なんか起こさない
  5. 破産も再生もやらない
  6. 稼いだ報酬は、そのきれいなウェブサイトを構築した他士業の方と案分

当時代理権をもってなかった僕は、その事務所が問い合わせを食い散らかすのを眺めながら、ときおり『残債がのこる』『銀行そのほか利息制限法に触れない金利でお金を借りている』『過払い金があまり発生しない』そしてなにより『僕がお客さまに直接会いに行くことを認め、報酬分割払いの一番最後にその旅費を払ってくれる』そうしたご依頼を時折紹介していただいて、まぁノンビリと…過払い金返還請求やら特定調停やらをやっていたものでした。


いいか悪いかはさておいて、そうしたステキな業務の余韻をもって残業代請求を眺めると、これは少々割が悪い業務なのではないのか?なのにどうしてPPC広告でお客をさそったり残業代請求専門を標榜したりする事務所がごろごろ出てきたのか…?それが不思議でならなかったのです。

このほど、そのナゾが解けました。

当事務所の労働相談には、弁護士に断られた・相談にならなかった、という方が時折こられます。そうした方の一人がおっしゃることには、その方が残業代の請求について問い合わせた法律事務所では

  1. まず、残業代の請求をしようとする期間が2年あるかどうかを確認し
  2. そうでないと知るや、たちまち消極的になった(ま、事実上断った)

そうした対応をとった法律事務所が愛知県内に複数あった、というのです。このほかにも、同一の会社に対する複数の労働者による同時の請求を推奨した事務所もあったとか。

・・・こりゃいいや(苦笑)

まず残業代を請求する期間が2年あるかどうかで依頼人を切り分ける、という発想は、まさに考えてもいませんでした。残業代請求専門事務所では、残業代は2年以上在職した労働者がまるまる2年分請求する…というより、してくれないと、依頼人というよりカモとして美味しくない、ということなんですね。

で、そうでない問い合わせは速攻で廃棄処分する、法テラスの存在すら伝えない、と。

そんな事務所が複数あれば=そんな応対を弁護士から複数回受ければ、そりゃ通常人ならあきらめて泣き寝入りしますって。

この頃妙に残業代請求関係の問い合わせが減ってる理由が、本当にわかりました。

逆に、この分野における当事務所の存在意義は、まだ残ってることもよくわかりました。たとえば、適当なPPC広告に

残業代請求:一ヶ月分でもやります。当たり前でしょ』

とかいうのを出せれば…ちょっとおもしろいことが起きそうです。

もっとも、上記のようなふるい分けの基準で儲かる依頼だけ導入するなら、おそらく残業代請求でも一案件で請求額200~400万超、報酬として40~100万円ゲット、というのを目指せるはずですので、PPC広告に対しても過払い請求と同じくらいの費用を投下できるはず。

先週の東京出張で読んだ本によれば、過払いバブル華やかなりし頃、債務整理の依頼を一件誘致するのにPPC広告に費やす費用はこちらもバブル化して急騰し、最終的に10万円程度が投じられるようになったとか。

ま、それでも一案件で100万円稼げるならPPC広告に10万円突っ込んでペイするわけですがね。

さてそうすると、過払いなみにPPC広告の料金が上がるなら、1クリックあたり1000円程度は覚悟しろ、ということになります。

だめだこりゃ(呆然)

広告出すにしても、なにかよほど工夫しないといけませんね。割とゆっくり真剣にコンテンツをよむ人が多い休日や、稼働中の他事務所からクリックされない夜間に出すとか。

まぁ、一番健全なのはこの記事を皮切りに少しずつ『残業代』という語を含むコンテンツを増やしていって、検索結果で上位を取りに行くいつもの手法なんですが…

これやってる間に残業代バブルが終わっちゃいますよ、きっと。


念のためお断りしておきますが、僕は依頼類型としての残業代請求を嫌っているわけではありません。残業代請求を企図する労働者を軽蔑しているわけでもありません。昔からこの分野に真っ当に取り組んでおられる諸先生方もおられると思います。

ただ、上記のとおり身も蓋もない実情を笑いながらも当事務所なりのソリューションを示してみたい、とあれこれ考えているところです。

いっそ『間違いだらけの事務所選び:労働紛争編 -見捨てられた労働者たちの告発-』みたいな扇情的コンテンツを作るといいのかもしれませんが、よほど表現に気をつけないといけません。

もしそんな暴露系コンテンツができたらできたで冒頭の債務整理事務所はこうした表面的には真剣な問題提起で依頼人をひっかけるのが大好きだったので、そうした事務所と混同されそうな気がします。さりとて匿名でブログを作ってうんちくを傾けて遊ぶほど無責任にもなれないし。

困りましたね。

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