言ってみたいな、『意味不明』
めずらしく朝8時台に、固定電話が鳴りました。そんな時間に電話受付の表示をしているわけもありません。いったいどちらに電話をかけたのか、と尋ねたら
「弁護士の事務所ではないのですか」
と、電話の主。違います、(一緒にされると困りますいろんな意味で!)と申し上げてお引き取りいただいたのですが…
僕は何かの依頼を逃したのかもしれません。これで登記の気配がしたらもう少し食い下がったのでしょうけれど。
さて、当事務所のウェブサイトのみならず誰かが書いた文字情報に接して、そこから自分の好きなように意味をくみ取る、という誘惑から逃れるのはどうやら難しいらしいです。今日は久しぶりに、旅行でも加湿器でも携帯端末でもない話をしてみましょう。
本人訴訟で相手側、当事務所にあっては会社側が本人訴訟で対応されている事案で時折見かけるのが『原告の主張は意味不明である』と言って対応を打ち切るもの。
さぞかしいい気分、なんでしょう。「あいつの言ってることは意味がわかんねーよ」と言えるのは。
ところがこれが結構な落とし穴でして、こう言って勝った奴を見たことがありません。僕が相手にそうした表現をして対応を打ち切ることも、実はほとんどありません。むしろ積極的に釈明を求めたり、そうでなければできるかぎり考え得る意味を提示したうえで総当たり的に論破しにかかる、という行動をとります。
少々手間はかかりますが、そうしたほうがおかしな主張を持ち込む輩にとどめを刺しやすい、ということもありますし、そうまで行かなくてもさらなる反論=迷走を誘いやすい。議論がある、ということは議論がないよりましなことが多いのです。相手側の書類の意味が不明だと言ってそれで終わりにするリスクは、実は意味が読み取れる記載を相手がしていてそれを裁判官も読み取れている場合に意味不明だと上から目線に立った当事者のほうが文字通り自滅できる、というところにあります。
これの亜流として、相手側の書いている内容に接して自分が決めつけた意味に従って盛り上がる→そして滑る、というもの。
今日の口頭弁論期日は僕が訴訟代理人、相手は経営者本人が出頭しました。今回の出席でようやくこのひと、欠席と出席と回数が均衡しました…頼むから気ままに裁判所来るのはよしてほしいもんですがこの人、出て来れば来たで言いたいこと言ってくれるんです。こいつの言うことを聞いていると完全な真実と正義が奴らにあり、僕のほうが狂人か法匪、そう思えてくる(笑)
で、今回の期日もこのおばさん、ノリノリでしゃべり出します。先日こちらが出した準備書面の記載の一文をつかまえて、事実の把握が間違っている、と。
-こりゃ面白い-
こちらは左への上目遣いで裁判官を見上げます。裁判官は彼女の指摘した意味合いでは、僕の準備書面を読んでいない様子。
-ならしばらく、しゃべってていいよ-
最近は過払いバブルも完全に過ぎ去ったらしく、午前中の遅い時間の僕の期日も遅延の気配すらありません。あとがつかえているわけでもないので、あえて発言に割り込みません。一通りしゃべり終わった時点でおもむろに手を挙げて、冷静に意味を説明して付け加えます。
「むしろそちらの理解が誤っているのではないかと」
-はい、ご愁傷様-
仕事がらいろいろなお客さまや対立当事者のいろいろな書類や言葉に接して思うのです。
書き記された言葉たちの意味を正確に把握するどころか、その把握が間違っているという可能性を認識することさえ実は強烈に難しいのではないか、と。
まぁその辺りにこの仕事のおもしろさがあるのではないか、とも思うのですが。
と、綺麗にこの記事を終わろうとして気づきました!
当ブログの一つ前の記事が、善意の方からAndroidアプリの『画面を叩いてごらん』と文字情報=コメントをいただいてひたすら見当違いな場所を叩き続けた、って内容になってるじゃありませんか!
…そう。意味を間違えないようにくみ取ることは、本当に難しいんです(泣)
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