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こちら『名ばかりワーカーズコープ』相談室

当事務所で読者のみなさまからの真剣なコメントをお寄せいただく件数が多い記事の一つに、三年前に執筆した『名ばかりワーカーズコープに気をつけて!』があります。労働者が出資する協同組合(またはNPO法人や任意団体)での協働労働=一般名詞としてのワーカーズコープあるいはワーカーズコレクティブの一つである某団体を相手取った労働訴訟の結果を受けてのこの記事、当時被告にした某団体はいまも健在らしく、昨日もコメントをいただきました。

まず、このコメントをくださった方へ。

どんなきっかけでこんな団体に入ってしまったのか存じませんが(こうした団体は案外、外面はよく見えるという点は他の方のコメントでも指摘がありますよね)、まずはあなたがこの団体から離れることを、私は喜びます。無理にこの団体にしがみつかないことは、池袋の労働貴族たちを除く大部分の就労者にとって妥当な判断だと私は思います。

また、本来の業務を始めとするさまざまなご活動、お疲れさまでした。この団体と関わるなかで、おそらくは理想を持ってこうした活動に身を投じようとする人ほど残念な思いをして終わる、一般名詞としてのワーカーズコープにはそうした危うさがある、ということも痛感されたと思います。

せめてそうしたご経験を少しでも、あなたなりのやり方で世の人に伝えて、こうした団体が勢力を伸張するのを私とはちがうやりかたで防いでいただきたいと私は願っています。

今回あなたから直接のご相談をいただけなかったことは残念ですが、私は私なりのやり方でこの団体と対峙していくつもりです。この団体の問題は深く静かに広まっているらしく、いろいろな場所から毎日それなりの数のアクセスが私の記事には入ってきます。


さて、無料での労働相談を無分別におこなったり掲示板やブログで相談への回答をするようなことは開業当初を除いてやっていなかったのですが、久しぶりに昨日いただいたコメントの内容について僕なりにお答えしてみようと思います。今からコメントされた方の参考になるかと言われれば少々難しいかもしれませんが、後に続く人には役に立つこともあるでしょう。今回のコメントに限らず、一般名詞としてのワーカーズコープの問題については当分のあいだブログにコメントを投じていただければ問い合わせにお答えするようにします。

1.某団体に解雇予告は存在しない、という発言は正しいのか

 僕が持っているのはこの某団体の数年前の就業規則ですが、使用者団体側から労働者に対して契約関係から脱退させる=世間一般の解雇に相当する規定はちゃんと設けられています(解雇とは異なる特殊な用語を用いていましたが)。お勤めの事業場に就業規則が備え付けられているならば一度ご確認いただければと思います。

 つまり、この規定が現存しているならば皆さん方は本部の担当者から愚弄された、ということになりますが…それが法的に責任を追及しうるかどうかは全く別の話です。

2.事業所閉鎖は当該事業場で働く労働者のせいなのか

 言語同断です。たとえ営業活動に専任の労働者がいたとしても(もちろん、コメントをくださった方の在職事業場にそんな人はいないはずですが)指定管理者の更新を含む世の営業活動には大抵競争相手がおり、それに勝つことも負けることもある以上、その責任をひとり現場労働者だけが負わねばならないはずがありません。

 なお、雇用保険の被保険者である労働者の場合は『事業所の廃止 (事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者』は特定受給資格者=自分の都合でなく離職を強いられた人に該当します。自己都合で脱退するという届け出を出しているか否かはこれに関係ありませんので、勤務先団体と争いたくないなら離職理由を自己都合と表示している離職票を黙って受け取って(下手に争うと、手続きを意図的に遅延させられる可能性があるので物体としての離職票入手を最優先するのがスマートな対応です)、あとで直接職安に経緯を説明して本当の離職理由が事業所の閉鎖であることを納得してもらえばよいでしょう。

また、出資がまだだとか組合員でないから、などという理由で雇用保険ほか社会保険の被保険者としての資格取得の手続きをとらない、というのも同じく言語同断ですがこの団体では相談事例があります。雇用保険については職安に雇用保険被保険者であることの確認請求をかけることによって、過去2年にさかのぼって被保険者資格を取得することができ、それによって失業給付の受給に結びつけることができますのでさらにご不明なら直接ご相談いただきたく思います。雇用保険の離職理由で争いがあるなら、審査請求をかけるという対応もあります。

3.本来の業務でない活動がサービス残業にあたる余地はないか

 あります。
今回のコメントでは、そうした営業類似の活動に従事することを、『やらなければ退職(この団体では脱退といいますか)してもらう』という不利益を示して事実上強制しており、そうした活動の成果は当然使用者である団体にもたらされる以上、この活動時間は労働時間に当たると考えなければなりません。

 ただし、完全に自発的におこなってしまうと労働時間ではないので、何らか争えば相手は全力で言い逃れに走ると断言できることと、こうした活動に従事していた時間数を立証する責任は労働者側にあるため、訴訟をやって勝つのはとても困難です。

4.自己都合での退団の届け出をしないと出資金を返還しないという扱いに問題はないか

 大問題があります。これだけは詐欺等の犯罪に該当するかもしれません。

 この団体に限らず、合法的な出資の受け入れに対してその出資を返還しないことを合法化するには、出資の段階で出資者と出資を受け入れる団体との契約あるいは定款に規定があり、その場合にのみ可能と考えなければなりません。

また、仮にそうした規定が設けられているとしても、その規定は公序良俗に反しないものである必要があります。

労働者に責任がない理由で事業場を閉鎖する、という状況の発生に際して、労働者から出資金を没収することはどんな理由をつけてもまず不可能です。そんなことができるとしたら使用者団体そのものが経営破綻するか、それに近いような純資産の減損が発生しているようなときだけでしょう。

 これらの事情を隠して労働者に故意に『自己都合で退団届けを出さないと、出資金を返還しない』と言うことは、出資金が返還されないと労働者を欺して雇用関係解消の意思表示をさせたことになりますので、民法上の詐欺にあたり、この意思表示の取り消しは可能です。

 ただし、これにも立証責任(訴訟になった場合、自分に有利な事実の立証は自分がする責任がある、程度に理解してください)の問題がかかわってきますので、実際に訴訟に勝つにはやりとりの録音や同僚労働者の皆さんの大々的な協力が必要です。

5.本件解雇の有効性を争えるか

 これはなかなか難しいです。
あの団体がいま名古屋にどれだけ事業場を持っているかに影響されると考えなければならないでしょう。いくつか拠点が残存している場合には、事業場の一つが閉鎖になっても配転等によって雇用を維持するように調整した後でなければ、その解雇は正当化されないと考えます。整理解雇の四要件のうち、人員整理の必要性と解雇回避努力義務のことを申し上げているのですが、他の事業場等が現存していて(できれば、欠員があったりして)、それなのに配転等の提案が全くない、というような実情があれば解雇無効を争うのも悪くないと思います。

6.結論として『どうすればいい』か?

これは相談者のパーソナリティによるのでしょうが、あの某団体と争うと不毛な訴訟を延々と続けることを覚悟する必要があります。当ブログのコメントやトラックバックには、それを選ばれた方の情報が記載されています。そうしたことをお好みでないならば、次のようにするのがスマートです。

  1. 戦略としては、離職票の取得と出資金返還を最優先する
  2. 前項の目的のため、すでに出した退団届け等は撤回しない
  3. 離職票については離職理由を自己都合のまま発行してもらい、受領する。その後、職安に対して経緯を説明することで特定受給資格者として扱ってもらう
  4. 出資金の返還を受けた時点で、積極的にはなにもしない
  5. 自分の大事な人がこうした団体に入ろうとした場合、全力で阻止する


以上、手短ながら今回のコメントで気になった部分を説明させていただきました。今回コメントをくださった方は、なにかありましたら、コメント等でお知らせください。コメントについては非公開を希望される場合には、そのご希望にそうようにしますが、質問や回答は他の方々も参考にできるようご配慮ください。

個別の相談・裁判書類作成については、労働相談業務のサイトに記載通りの条件でご依頼・労働相談をお受けしています。

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