その紹介で、いいんですか?
電話の向こうのお客さまにお尋ねします。というより言い放った、というべきなのかもしれません。
「本当にそれでいいんですか?言ってしまえばそれって、たまたま紹介された事務所に飛びついた、って状況になってますよ」
・・・言葉が足りなかったかもしれません。付け加えてみます。
「まぁ、紹介された事務所からそう言われるのも妙なものでしょうが」
そのお客さまとはいくつかのやりとりを経て、とりあえず打ち合わせの時間をお取りすることになりました。
この事務所は依頼経路の95%以上をウェブサイトからのアプローチに依存しています。一方で依頼の2~3割程度しか地元で扱わないため、口コミに期待するところがありません。言ってみれば観光地の水商売みたいなもので、多少怪しくてもわかりませんよ?とまで何の罪もないお客さま方を脅かすことはしませんが(『観光地の土産物屋みたいなもの』『時として知的水商売』と申し上げることはありますがね)、ちょっと身構えるのが誰かから紹介されてきたお客さまです。
法律関係に限らずどんな商売でも紹介あるいは口コミというものを肯定的に捉えるものだと相場が決まっています。しかしながら僕の商売-特に裁判事務ではこれは結構恐いな、と。なぜなら僕を誰かに紹介したくなった人、というのは僕がなんらか実績を上げるのを見てしまった人、ということになっていて(そりゃそうですよね。自分が依頼してしくじった事務所を普通は紹介しませんって)、そうすると紹介された方は『なにか、よさそうな結果』を期待する方向でいらっしゃる傾向が強い。これはいけません。紹介されてくる方の紛争が紹介してくださる方の紛争と全く同じはずはないのですから。
もっと悲惨なのが半年に一度程度発生する、同業者の方からの紹介です。
これはすごいんですよ。僕の専門分野たる労働紛争において、いままで受託実績皆無です。まるでマーフィーの法則でもあるかのように、誰も彼も決して依頼人にならない(笑 というより実は泣きたい)
まぁこちらはもっとわかりやすい理由でして、どうも余所の事務所の諸先生方は相談者に対して代理権重視&法律家的に振る舞っておいてのご様子なのです。
そうしたルートに乗っかった方々がそのノリでこの事務所にきてしまうと、本人訴訟重視のこの事務所の流れにどうにも乗り切れないと言った感じになったり、あるいは本当に自力での対処能力がないことが早期に露呈するために法律事務所による全面的代理を推奨して撤退、ということになってしまうんですね。
そうしたことがありまして、お客さまであれ同業者の方からであれ、紹介を受けて裁判事務・訴訟代理のご依頼をなさろうとするお客さまにはその方が早まって私への依頼に踏み切らないようにまず力を尽くす、という倒錯的な作業をしているところであります。明日いらっしゃるお客さまにも、こう付け加えました。
「まぁ話をしてみてこの人(僕)では駄目だ、と思ったら迷わずほか(の事務所)を当たらないといけないし、ここがよさそうだと思ってもセカンドオピニオンをとることは常にいいことですよ」
誤解のないように申し添えますと、このご依頼を受けたくない、というわけでは決してないんです。ここで提供できるのはベストエフォートサービスの一種に過ぎないから、冷静にほかと比べて決めていただきたいわけで。これが相続やら過払いなら、気持ちよく飛びつけばいいんでしょうけど…
そんな紹介は、決してこない(笑)
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