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2011年8月

法務局に行くつもりだったのに

法務局に行くつもりだったのに

本日の東海地方はお天気もよく、仕事も一段落しています。担当中の賃金請求訴訟の準備書面は明日作ればよく、新しい労働審判手続申立書文案はお客さまに文案をお渡しして回答待ち、といったところ。これは絶好の登記済書類回収日和、といったところでしょうか(そんなものはないっ!と登記中心な同業者さんから怒鳴られそうですが)。

さて岐阜地方法務局に来るのは13年ぶり。前回は、司法書士試験合格者への合格証書授与式のときに来て以来です。ウェブサイトでちゃんと行き方を調べてバスにのったはずなのに。

それなのに!

なぜか金華山のふもと、岐阜公園にたどり着いてしまいました。稜線に岐阜城が見えています。

普段から常に自分の知性を疑いながら日々の業務にあたっておりますが、今日はまたかなりな衝撃です。正直言ってなぜこうなったのかわかりませんが、ともかくバスで徹明町までもどってひたすら東へ歩き、予定より1時間ほど遅れて法務局にたどり着きました。この岐阜公園から金華山へはロープウェーで行けるのですが、さすがにこれはやめておきました。

間違ったバスに乗っているあいだに、お客さまから先頃実施した債権差押命令申立の結果に関する連絡を受けたのです。しかし。

…天にも昇るような気持ちになるには、少々早そうです。

まぁ自分の知性や作業能力が疑わしくなるような結果ではなかったので、胸をなで下ろしているところですが。

説明スレドモ補正セズ

この記事は、労働訴訟で発生しうる1円未満の端数について細かく考える前回の記事の続きです。故意にか偶然にか乙地方裁判所労働部の訴状審査にひっかかったのは、こういう請求を持っていました。

  1. 解雇予告手当の請求
  2. 残業代のうち、会社側が認めていない時間の請求
  3. 残業代のうち、会社が設定した単価がこちらの計算額より少ないことによる差額の請求

この訴状の作成に際して、まず上記1.は平均賃金の30日ぶんなので、日額を銭単位まで算出して(たとえば7549.52円。当記事で数値はすべて架空の値です)30日を掛け、解雇予告手当は即時解雇に際してただちに支払わなければならないため残業代とは支払い日が違うと認識して、この手当だけで端数を丸める計算を行いました。7549.52円×30日=226485.60円となるので、円未満を切り上げて226486円、というような計算をしています。

上記2.3.は各賃金支払い日までの1ヶ月分ごとに合計し、端数を丸める計算を行いました。たとえば原告側で計算した時間外労働割増賃金額は厘単位まで計算して1354.812円、会社が認めた時間外労働割増賃金額が1300円、実際の時間外労働時間は3時間だが、会社側は1時間を認めて1300円を支払った、という場合は次のように計算を行っています。

・会社が認めていない残業2時間につき

 1354.812円×2時間=2709.624円

・会社が1300円の残業代を支払った1時間につき

 1354.812円-1300円=54.812円(表A欄)

この二つを、賃金締め切り日に合計して

2709.624円+54.812円=2764.436円(表B欄)

これの端数を丸めて、2764円


そんな訴状を書いて出したら…10日ほどかかったでしょうか。裁判所から事務連絡がやってきた、とお客さまから連絡が入りました。上記の計算について、

  • 時間給1354.812円、平均賃金7549.52円の端数処理についてご検討ください。
  • 表A欄の2709.624円と表B欄の54.812円については、合計する前に端数処理をするのが正確かと思います。

とのご指摘です。僕からすればもう全力でひっかかってきた、というべきですが、全般的に『おまえのほうが直せよな』といいたい気配が漂っています。

こりゃ面白い♪ということで、嬉々として釈明書を執筆、下記のようにして提出しました。

・時間外労働割増賃金の一円単位の端数については、通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律(昭和62年6月1日法律第42号)第2条2項により、1厘(0.001円)まで計算しました。
 平均賃金については昭和22年基発第232号通達で、1日の平均賃金の算定にあたり銭単位の端数を生じたときにはこれを切り捨てる旨示されておりますので、これに従い1銭(0.01円)まで計算しました。
 ですので、時間給の計算額について1厘まで、平均賃金の計算額について1銭までの計算を行うのはやむを得ないことと考えます。
 表A欄およびB欄については通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律第3条1項カッコ書き所載の、数個の円単位の端数を持つ債務である賃金の弁済を同時に(各月ごとに約定の賃金支払日に)行う場合に該当すると考えましたので、同条の規定にしたがい、各月について表A欄の金額とB欄の金額を端数処理する前に合計し、合計額の端数について50銭未満を切り捨て、50銭以上を切り上げる処理をおこないました。

ここまで書いて…ちょっとだけ上から目線に感じられた上記事務連絡に、ちょっともの申してみたいなということで二つばかり蛇足な文章を付け加えてみました。

  • なお、原告らの調査において、表A欄とB欄で算出した金員について個々に端数処理することを義務づける法令または通達の存在は確認できませんでした。
  • 以上のとおり釈明します。結果として、訴状記載の請求額に変更はありませんでした。

数日後、乙地裁労働部はお客さまに対し、粛々と第一回口頭弁論期日を指定しましたとさ。めでたしめでたし。

以後この訴訟において、上記各計算部分には誰からも何も言われていませんので割増賃金や平均賃金の端数処理の仕方は、前回と今回の記事のとおりで特に間違いはないと思います。でも労働専門部からもちょっかいがかかるほどマイナーな方法である、ということは承知しておく必要があるのかもしれません。

2.時間の端数

 お金の端数がこれまで述べたとおりだとすれば、時間についてはどう把握すればよいのでしょう?これは、タイムカードをはじめとする世の時間管理システムが『分刻み』で維持されていることを考えれば、秒ではなく分まで認識できればよさそうです。

 よさそうです、と言ったことに注意していただきたいのですが、僕も割増賃金や労働時間の計算において『分まで計算せよ』と規定した通達等の存在は確認できていません。単に『秒単位の記録ができるタイムカードや出入管理システムは存在しないから』というのが根拠にすぎない、ということをお断りしておきます。

 1分は1時間の60分の1なので、さしあたりそれよりは細かいように1時間の100分の1、つまり少数第二位まで時間数を計算できていればよいのではないか、と考えて、時間の計算では少数第二位を採用しています。ただし、僕の場合はなるべく●時間●●分という数値の形式を保ったまま計算を行わせて、誤差の発生を防ぐようにはしています。


自分でいうのもなんですが、まさに重箱のすみをつつくようなお話です。でもまぁ、落ち着いて根拠を探すとそれはどこかにあるし、聞かれたことに根拠を示して回答できる、というのは結構重要なことだと思います。このあたりの、『その辺の本やらウェブサイトでは適当にごまかされているが、実際に直面するとわけがわからなくなる各所の処理』を解説するコンテンツがあったらいいな、とも。さすがに自分では作れませんが、面白いものがでてきたらネタにできるかもしれません。

細かいこと、ではあるんですが

月給制労働者の時間外労働にともなう割増賃金の計算や平均賃金を算定しての解雇予告手当の計算をおこなっていると、『小数点以下の端数をどう処理すればいいのか』に悩むことはありませんか?

今年はこの点について、某地裁本庁で訴状審査にひっかかり補正の要求を受けましたが、説明の結果なんの補正もなくパスした、という事案に会いました。さらに今月は、乙地裁労働部で付加金の請求認容額が一円単位で全額認められた残業代請求訴訟の判決を得ました。

つまり、訴状提出のときと訴訟終結=判決のときに裁判所の判断に接することができましたのでこれをネタにしてみようと思います。

1.金額の端数

1円に満たないお金の存在を、どう認識したらいいのでしょう?具体的には、時給1000円のひとが10分間時間外労働をした場合の時間外労働割増賃金額には端数がでてくるはずですが、これはどう表示し、積算し、請求すればよいのでしょうね?

これについて、労働基準法第24条関係の通達(昭和63年基発150号)を適当に持ってくる見解は必ずしも正しくないと僕は考えています。文理解釈が多少できる人ならそれらの通達の書きぶりが『(適示した扱いは)違反としては取り扱わない』という表現にとどまっていることにそのヒントがあると推測すべきで、監督官庁の判断として違反とは扱わないと言っていることと民事上の請求がどうなるかは別だ、と考えなければなりません。むしろ、違反のように見える面があるからわざわざ違反としては取り扱わないと通達出してまで言っているのだ、と考えるべきです。

ではこのほかに規定はないか?と探すと、労働債権に限らず一般的な扱いについて定めた法律がありました。通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律がそれです。同法第2条で

  • 一円未満の金額の計算単位は、銭及び厘とする。この場合において、銭は円の百分の一をいい、厘は銭の十分の一をいう。

としていますので、円未満の端数は1円の1000分の1までは認識してよい、ということになります。これ未満は切り捨てざるを得ません。

ではこの端数、どこで精算するべきか?実際にお給料をもらうときには1円単位でしかもらえませんから、どこかで何とかしなければいけません。これについては同法第3条が少々難しいことを言っています。

  • 債務の弁済を現金の支払により行う場合において、その支払うべき金額(数個の債務の弁済を同時に現金の支払により行う場合においては、その支払うべき金額の合計額)に五十銭未満の端数があるとき、又はその支払うべき金額の全額が五十銭未満であるときは、その端数金額又は支払うべき金額の全額を切り捨てて計算するものとし、その支払うべき金額に五十銭以上一円未満の端数があるとき、又はその支払うべき金額の全額が五十銭以上一円未満であるときは、その端数金額又は支払うべき金額の全額を一円として計算するものとする。ただし、特約がある場合には、この限りでない。

特約がなければ1円未満の端数は四捨五入、と言っているのですが、そのタイミングは『現金の支払いにより行う場合』であると読み取れます。しかも、いくつかの債務(円未満の端数がでる支払い、と思ってかまいません)の支払いを同時に行う場合には、それらを端数のまま合計したあとの金額に対して四捨五入の動作を行え、と言っているように見えます。特約がなければそうせよ、と。

より具体的には、小数点以下3桁までを用いた1時間あたり単価で同じく小数点以下3桁まで時間外労働・深夜労働・休日労働割増賃金を計算し、その総額を小数点以下3桁まで合計した1ヶ月分の金額に対して、賃金支払い日=債務の弁済をするとき、に1回だけ端数を四捨五入する操作をおこなって…1円単位の桁に丸めるのがよかろう、ということになります。

でも。

平均賃金の計算についても端数が出ることが多いのですが、この計算法については拘束力の高い表現で通達が出ています。昭和22年基発232号では、

  • 1日の平均賃金算定に当たり、銭未満の端数を生じたときにはこれを切り捨て、各種補償等においては、これに所定日数を乗じてその額を算出する。

と示しています。『~する』と言い切っているのでそれに従わざるを得ませんが、ここでは小数点以下2桁までだ、と言っています。

ある訴訟で、解雇予告手当と残業代を同時に請求する事案がありました。つまり、解雇予告手当は平均賃金ですので小数点以下2桁まで計算をおこない、残業代は通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律によって小数点以下3桁まで計算する一方、裁判所は法律を知っているものだという(そんな法諺もありましたね)仮定にのっとってこの根拠を説明しないまま訴状を出したら…

裁判所の訴状審査に、しっかりとひっかかったわけですよ。訴状が引っかかったのか裁判所が訴状に引っかかったのかは、まぁ次回の記事でご判断いただきたいと思います。次回の記事はタイトルだけが決まっています。『説明スレドモ補正セズ』ってことで。


さてさて病院職員さん、元照準手さん、コメントありがとうございました。皆さまごきげんようお過ごしでしょうか…?僕はまぁ、このとおりふらふらしています(笑)あまり進歩のない日々を送っておりますが、このほど携帯電話のデータをようやくデスクトップPCに取り込めるようになりまして、携帯電話の中に滞留していた写真のうち見栄えのしそうなのをいくつか公開しようかと思っています。病院職員さんに気に入っていただけるのがあるといいのですが。

先日の長船では30分ほどしか時間が取れなかったのですが、少々不思議な光景を見ました。あきらかに観光客とわかる女の子3人があきらかに目的を持ってタクシーに乗ってどこかに走り去ったのです。備前長船刀剣博物館のウェブサイトにたどり着いて、納得しました。つまりあれが、歴女さんだったのか、と。駅に降り立ったときには見事なまでの田園風景だと思ったのですが、もう少し時間が取れれば行ってみたかったですね。このほかにも赤穂線沿線には赤穂や日生(駅の前から小豆島へのフェリーが出るんです…鉄道連絡船宮島航路より便利そう)など、ちょっと楽しげな駅があって気になります。案外その辺を、またふらふら旅してるかもしれませんよ。

丸亀から( 長船経由) 神戸へ

丸亀から(<br />
 長船経由)<br />
 神戸へ
昨日南に渡った橋を、今日は北へ渡っています。

今日の予定は丸亀からまず神戸まで。神戸付近でもう一件、仕事が追加されそうです。

岡山に向かうマリンライナーの中でふと思いつきました。
相生まで赤穂線経由で行けないかな?

山陽本線岡山ー相生間の普通列車は本数が少なく、特に青春18きっぷ期間中はあまり愉快ではないのです。内陸部を走るので眺めもよくありません。

同区間を海寄りに行くのが赤穂線。少し時間がかかるのですが、神戸への新快速が播州赤穂まで乗り入れています。接続さえ取れれば、余裕で座席を確保できます。

マリンライナーは少々遅れて9時53分、岡山に着きました。調べてあった10時25分発播州赤穂行きの前に、9時55分長船行きが先発します。
覗いてみると…この通り、がら空きです。

岡山駅で時間潰すよりよさそうだ、ということで乗ってしまいましたが、
さて長船って、どんなところなんでしょうね?

圧搾!圧搾!また圧搾!!

圧搾!圧搾!また圧搾!!
松山では午後から予定が入っています。昼ご飯を食べる時間はないが少々お腹が空いてくる、という中途半端な時間に到着してしまいました。こんなときには…

前回は清見タンゴールのジュースをいただいた、大街道のジューススタンドに行ってみましょう。
愛媛県産という表示がでているいくつかの候補のなかから、河内晩柑のジュースを注文します。それが何かは知りませんが、このお店で提供されるものなら間違いないはずです♪

オーダーを受理した眼鏡ッ娘の店員さんはおもむろに、グレープフルーツ大の、ただし形はレモンに似た果物を二つに切ったものを出してきます。
それよりやや小さい、でも家庭用レモン絞り器よりは大きな円錐形の突起物の上に載せ、ハンドルを回転させて上から挟んで締め付け出しました。これぞまさしく、『圧搾』。

よ〜いしょ、とばかりにハンドルを一回転弱させて果実半分を搾り終えた彼女、続いてもう半分を搾ります。なるほど。

さらに、もう半分。よしよし。

続いて、もう半分。…これで出来上がりかな?

と思ったら、さらに圧搾動作を二度行い、文字通り果汁100%のジュースを差し出しでくれました。

この河内晩柑、グレープフルーツに似ていながらそれよりあっさりしていて、後味が軽いです。ここで食通を気取るなら、機械での圧搾と違って人力でゆっくり搾るメリットはどうこう、などと述べたくなるのかもしれませんが、僕はそこまで違いのわかる男ではありません。おいしいから是非とも行ってごらん、と申し上げるに留めます。


ところでこのお店の流儀なのか彼女の個性なのか、僕の聞き間違いでなければカップを手渡す瞬間、彼女はこう言い添えたようです。

ハッピーになれるといいですね!

さて、彼女の仕事は僕のライフワークより、幾分か顧客を幸福に導く可能性に近いかも、と思っているのですが、どうなんでしょうね。

ともあれ、松山での楽しみが一つ増えました。今夜は丸亀で泊まり、神戸で仕事をして帰ります。

岡山から松山へ

岡山から松山へ
二両編成の列車は、お気に入りのボールを見つけた子犬のような加速で駆け出しました。

6時24分、児島を定刻に出発した快速マリンライナー3号は瀬戸大橋を目指しています。
東側の窓の向こうに、三角形の島が見えてきました。アポロチョコレートみたい、と思いかけて苦笑する、一人の旅です。朝からお腹がへってきました。

いろんな理由で日程変更

いろんな理由で日程変更
岡山駅新幹線上りホームから、今回の出張を始めます。いくつかの理由で29日に実施予定の松山出張は、明日実施に繰り上がりました。今日は岡山に泊まります。

さらに、一つ失敗をやらかしました。
今治市内でこの春実施した現地調査のデータを吹っ飛ばしたのです。
…ということで、再調査(失笑)
別の出張と抱き合わせて行うため、費用としては500円程度を失うだけですが時間が無駄になるのが痛いところです。

明日は6時過ぎ岡山発の列車で、まず今治へ向かうことにします。

それでも付加金が取れると思いますか

さきごろ某地裁で得た判決正本を、しみじみと味わって読んでいます。

内容はなかなか痛快です。割増賃金の請求の95%以上と、割増賃金に対する付加金請求の100%を認めてくれているのですからこれ以上贅沢言いようがありません。『勝訴!』とお習字で書いた紙持って裁判所正門前で記念撮影できるくらいの勝ちっぷり、ということができます。

労働訴訟の提起をお考えの労働者のみなさんが妄想するような勝利ではありますが、付加金の請求認容判決を取ったこのタイミングで書いてみたかったことがあります。

    1. 労働基準法第114条の付加金は狙って取れるものではありません。
  1. 残業代等の不払いに際して付加金が取れると主張するウェブサイトの運営者の見識は大いに疑うべきです。

今日はそんなお話です。

1.労働基準法第114条の付加金とは

僕が付加金の制度をお客さまに説明するときに例として出すのは「キセル乗車で捕まって運賃三倍取られた奴ってときどきいますよね?」という話です。これは、各営業者の約款で不正乗車に対しては所定の運賃と、支払を免れた運賃の倍のお金を徴収すると定めているからそうなるわけです。

労働基準法第114条の付加金も、考え方としてこれに似た要素を持っています。同条によれば『労働基準法所定の割増賃金・休業手当・解雇予告手当・年次有給休暇に対する賃金』の不払いに対して、不払いの金額そのものに加えて、さらに不払いのお金と同額の特殊なお金=付加金の支払いを裁判所が命じることがある、ということになっています。あるお金の支払いを免れようとした人に、そのことを理由にしてさらにお金の支払い義務を課すことを法律で定めているという点で、とても珍しい制度です。

2.これによって、だましたりだまされたりするとどうなるか

この付加金の制度、実際に機能しているかどうかは後で論じますが、こうした制度があるんだな、と聞きかじった人たちがどんな間違いを犯すか、を考えてみます。

  • 労働者

ネットでこれだけ情報が漁れるようになっても、どうやら人は自分に都合よい情報に注目したがるようです。嘆かわしいことに、『残業代が支払われなければその2倍請求できるんだ』という態度の相談者は毎月やってきます。こうした方々には、当初はわりと冷淡に接しています。「これだけ個人が情報発信できるようになって、付加金が簡単に取れる実情があるならそうしたブログや掲示板がいくらでも見つかるはずですが、そうしたものを実際見たことありますか?」とはっきり聞いてあげれば冷静な人は考え直してくれますし、そうでないお方には他の事務所の利用をお勧めしています。彼らが、付加金を確実にゲットできる事務所を発見できることを祈りはしますよ。祈るだけですが(失笑)

  • ウェブサイト運営者・投稿者

こちらはなかなか罪深い存在です。一般的な表現としては『残業代の不払いに対しては、不払いと同額の付加金の支払い義務が発生することもあります!』程度の説明にとどまるのですが、他の要件や実情を説明しないので実際に困ってる人がこれを読むと本気にしかねません。各種士業の事務所や情報商材の販売者のように営利目的でウェブサイトを運営する連中の場合には、こうした表現で依頼を誘致するメリットもあるのかもしれませんが誠実な方法とは言えません。特に、付加金の支払い義務が判決でしか発生しないことを考慮すれば、裁判に関係しない人たちが付加金の存在を云々するのは『自分が関与できないことをあてずっぽうに言っている』に等しいと考えます。社会保険労務士が運営する在京某NPOにそういう労働相談をやっているところがあり、彼らはあっせん代理を勧誘するためのセールストークとして付加金が必ず支払われるかのような表現を使っているとお客さまから聞いたことがあります…素人は黙っててくれよ、と言いたいです。お客さまではなく、そのNPO運営者に。

では裁判手続きに関与できる弁護士・司法書士なら付加金取れるというのは妥当な表現かというとそうでなく、付加金の存在を声高に主張する法律事務所のウェブサイトで依頼を集めて提案するのは労働審判あるいは任意交渉=付加金が取れない手続き、だったりします。恐るべし。

結局のところ、情報提供者は依頼誘致あるいは法的蘊蓄のひけらかしのために付加金をトピックスとして取り上げ、自分に都合のいい情報に高感度なアンテナを張ってる素人がそれに引っかかる、という構図は今後も改善されないと思います。むしろ、ウェブ上に氾濫していない情報にこそ真実が隠れています。もう一度お尋ねしますが…

「付加金取れるとお考えのあなた、では付加金実際取ったと言ってるブログをどれだけ見たことありますか?」

3 制度

誰かをだますウェブサイトが語らないところで、付加金の制度を落ち着いて考えてみます。労働基準法第114条の条文を見ると、付加金は

裁判所は(中略)付加金の支払を命じることができる

と言ってるだけです。単純に日本語としてみても、「使用者は(中略)付加金を支払わなければならない」とは言ってません。つまり付加金は純粋に、裁判官の判断で使用者に支払義務が課せられるものです。また、こうした支払を命じることができる裁判所の判断の形態は判決しかありません。調停や和解は当事者が合意するものですから、裁判所が何かを命じるという要素が入りません。労働審判手続きで出される審判は駄目か、というのは疑問ですが、付加金支払を命じる審判は出せないということになっています。

つまり、付加金の支払いを得るためには、訴訟を選択し判決を目指さねばなりません。

4 実情

 だったら判決とりゃいいじゃん♪と軽く言われてしまいかねませんが、これが結構難しいことは司法統計に示されていると考えます。この国で民事訴訟の大部分は当事者欠席による判決か、そうでなければ和解で終わってしまうのが大部分です。特に請求額が大きくなりやすい残業代請求訴訟で会社側が欠席してくれるなどということを期待するのはまず無理です。したがって、付加金が取りたければ『会社側の積極的妨害を排除して、判決を目指せ』ということになります。

実際それやったらどうなるか、という一例が先頃得た判決の訴訟でして、この訴訟にかかった期間は1年9ヶ月強、書いた書類は文案を要するものだけで100枚超、相手側からもほぼ同量の書面が出てきて、判決はというと別表込みで五十数枚、このほか証人尋問対策の打ち合わせだけで一泊二日を2回やったりもしていますので、書類作成ごとにお金をもらっていたらお客さまが途中でひるむことになりかねません(笑)

今回は会社側訴訟代理人が途中で解任されて交代してしまい、その後で一段とグレードダウンした訴訟代理人が出てきて手続きが空転したという面がありますが、ここまでやらないと付加金給付判決が取れない、という展開はむしろ実情に近いと思います。さらに、この判決はあくまで第一審のもので、判決が確定しないと実際に支払を請求したり強制執行することはできません。

つまり会社側は、控訴してしまえばもう数ヶ月間は訴訟ごっこで遊べるということになります。労働者側、辛いです。

5 結論

 おそらく上記の実情を反映して、付加金を実際に受け取るところまで行ったという情報がほとんど得られないのだと思います。一方で制度の存在だけはくだらない思惑で一人歩きさせられているに過ぎず、安易に付加金を得ようとする人ほどかえって付加金が得られるだけの訴訟遂行能力を持ってない、と僕は考えています。

そんなわけで、付加金が取れるはずだと言ってくるお客さまには一歩引いた対応をしてしまっているのです。

それでも、付加金が取れると思いますか?

 


ところで、僕の予想では被告側会社は控訴にあたり、3人目の訴訟代理人を別に探してくると思っています。で、3人目はさらにグレードが下がるとも。

こいつが着手金を請求する際には、やっぱり『未払いの元本と着手金』を基準にして金額を算定するんでしょうか?控訴しなければこの金額の支払い義務が確定する以上そうならざるを得ないのですが…

だったらその分、こっちに回してくれりゃいいのにさ、と取らぬ付加金の皮算用をしてしまいます。判決正本を肴に飲むビールも、なかなかおいしいものです。

2020.12.12修正

東京に寄って帰ります

東京に寄って帰ります
東京に寄って帰ります
静岡県東部にある岳南鉄道では有人駅で硬券を扱う一方、東海道本線と連絡運輸を行っています。ここ岳南原田駅できっぷを買ったら東京山手線内までの硬券で発券され、別に特急券を買えば新幹線にも当然乗れる、ということでいまどき東京駅に硬券で降りられる数少ない駅なんですが、あいにく夏の青春18きっぷ期間中。今日から青春18きっぷの利用を始めます。

どうやら今月は泊まりがけで東京に出る余裕がなさそうなので、富士市内の実家からいったん東京に出て帰ることにしました。東京発17時41分の普通列車沼津行きまで約6時間、都内に滞在できることになります。

判決の夏、勝訴の夏

今日の名古屋13時発東京行き超特急16便は、所定では二階建て三列シートのバスを補助席付き四列シートのバスに変更しています。
さらに浜名湖までで34分の遅れで運行中。

ですが、特に不満はありません。

昨日、当事務所二例目となる付加金給付判決を得たのです。請求額元本・付加金ともに●百万円を超えました。付加金については、訴状記載の全額が認められています。遅延損害金まで全部取れたら、僕の実家がある街でなら中古の一戸建てが買えるかも(笑)

僕のリーガルマインドにそった結果を得られたことにしみじみと満足していますが、これで労働紛争関係業界内でも中流に位置していると自称してもよさそうな気がします。原告側は本人、会社側は代理人付きの労働訴訟を戦い抜いて、勝つことができる、と。

お客さまから判決正本が送られてくるあいだに、久しぶりの帰省のためにバスに乗りました。これで付加金給付判決が取れていなければさぞかし憂鬱な旅、というより年内いっぱい憂鬱に暮らしていたところですが、まぁしみじみと幸せを噛み締めているところです。

でも、そうやって実際に勝訴判決を取って改めて言えるのは、付加金は狙って取れるものではないということです。これはまた、いずれブログの記事にしたいと思います。

今月の出張日程

東京へくる用事はないのか、とお客さまに聞かれてしまいました。

いくらこの事務所でも名古屋から東京に出る出張はそうそう都合よくあるもんじゃないんですが、先月は依頼料金が少々高めのお客さまからそう言われてしまったためにその方のご希望にしたがった出張を設定していたりします。請求額が百数十万円を超える手続きを新しく受託できる、ということであれば、それに合わせた自腹出張をすることもあるわけで。

さて、今月は西日本への出張が2件入っています。8月23日に、神戸まで日帰り。29日には、大阪を経て松山まで。こちらは、片道を船中泊にしようかと思っています。

あとはいつもどおり国会図書館への書見のための出張を入れようと思っていたのですが、月初めに急ぎの仕事があったのと自分で壊したLANディスクが県立図書館の資料で復旧できてしまったために、特に出張するまでもない状況になりました。着手の際の料金数万円レベルの方が依頼をかけてくれればなんとなく自腹の出張してもいいかな、という感じです。

さらに隣県への帰省と、純粋に私用での旅行予定が入っています。これで合計7日は事務所にいない、ということになりました。あと1件泊まりがけの出張を設定するくらいなら大丈夫そうです。

『山師業』って業種があるのか!?

東京商工リサーチのtsr-van2を使っています。毎月3千円の料金で使えるこのオンラインサービスは、登記情報提供サービスと違って『代表者の氏名だけ』をキーにして全国の企業を一気に探せるのが最大の魅力です(全企業が収録されているわけではありません)。このほか、ここに書かれている取引銀行の支店に片っ端から債権差押をかけるとか、会社側から訴訟で出された売り上げデータとここに表示されているのが違う点を指摘して矛盾を描き出すとか、裁判書類作成の仕事でも結構使えるのです。

先頃被告側会社によって設立されたらしいダミー会社の取締役たちを、このサービスで一人一人検索していたら一件該当が出てきました。業種は…ええと、

山師業?

●国データバンクには及ばないとはいえ国内最大手の企業情報サービスで、山師業という業種の表示があるってことは山師というのはこの国において、職業として認知されているということでしょうか?

まさか、『一攫千金を騙って他人から金品を騙し取ることを業とする者。またはその会社』を言うはずはありませんが(笑)

念のためいくつか調べてみると、鉱山(というより、主として探鉱)技師、あるいは木材伐採業者のことを職業としての山師ということは一応ある…ようですが、やっぱり語感が怪しすぎ。しかもダミー会社という素性にマッチしすぎ(爆笑)

代理人としてこの社長に会ったら、言ってみたいです。

おたくの会社、東京商工リサーチでは山師ってことになってますが本当ですか?と。

復旧までの14日間

先月末に、LANディスクを誤って使用不能にしてしまいました。IODATAのHDL-S500というこの機種はLANとUSBの2系統で接続できるLANディスクで、これをUSBで接続中にWindows2000から領域を開放してしまったのです。

昨晩、これをようやく復旧できました。一時はヤフオクで代品をポチりかけたり業者に●万円出して復旧依頼をかけようともしたのですが、費用をかけずに済んで大変満足です。

さまざまな依頼や相談の合間をぬっていろいろ調べたところ、僕の場合は単にハードディスクの領域を開放しただけでその後領域を確保したりフォーマットしたり、といった操作を加えていません。こうしたときには何か復旧支援ソフトを導入するか、CDからLinuxを立ち上げてそれに付属のツールで復旧を試みることができるらしい、ということが最初の十日ぐらいでわかってきたのです。特にKNOPPIXを使うのがよさそうだ、とも。

ならば、と県立・市立の各図書館でこれらに関する本の所蔵を調べたら、一番頼りになりそうな下記の本が県立図書館で先月末現在、貸し出し中(苦笑)

ようやく貸し出し可能になった昨日、図書館を巡ってこの本とLinuxの基礎の本、コマンドリファレンスマニュアルを借り出してきました。大学時代にUNIX端末を少々いじったことがあるくらいで、Linuxにさわったことはなかったのです。

しかし作業工程には特に難しいところもなく、まことにあっさり復旧しました。いつも通りにLANディスクをUSB接続して、上記の本に添付のDVDからKNOPPIXを起動(ISOイメージをダウンロードして手持ちのDVDドライブで起動用ディスクを作る、というのさえ面倒なので、図書館で借りてくるというのは悪くないと思います)し、TESTDISKなるツールを使ってパーティションに関する情報を復活させてしまった…ということのようです。具体的には上記の本の274~283ページを、そっくりそのまま実行しただけです。

作業完遂の祈りを込めてカツ丼を食してから実施した作業でしたが、これで何事もなかったように復旧してしまいました。14日ぶりに動き出したLANディスクを見ながら飲むヱビスビールのうまいことうまいこと!

今回、いろいろとLANディスクの破壊と復旧に関するコンテンツを漁ってみてわかったこと。

いまこの瞬間も、世の中には大容量ハードディスクに詰め込んだ●●な画像や動画を保護救出するために格闘している数多の漢たちがおり、僕が今般LANディスクを復旧するまでの知識を得られたのも、ひとえに彼らの努力や犠牲のたまものだったんだ、と(爆笑)

取り下げまでの四日間

5月に70kg台に達していた体重が、このほど63.8kgまで落ちてきました。

…身を削るような仕事をしてきたから、というわけではありませんが、今週はなかなか面白い経験をさせてもらいました。

先日申し立てた債権仮差押命令の申立を、申立の3日後に取り下げてしまったのです。おかげで陳述書から担保取り消しの同意書まで、大小さまざまな書類の作成に追われることになりました。名古屋簡裁に申し立てられる債権仮差押命令申立事件の件数は、おそらく年100件に満たないらしい、というのも今回得た知識です。このうち何件くらいに司法書士が関与しているのかは、なかなか楽しい想像になります。

ただ、期待はしていた展開です。問題になっている未払い額は給料の1ヶ月分(こちらは証拠あり。ただし就労実績が不明なので一般先取特権の行使は困難と判断)と、証拠はないが数万円の費用が未精算という事案だったために疎明可能と判断した給料部分のみについて仮差押をかけたところ、第三債務者に仮差押決定が送達されたその日に債務者会社の社長から連絡がありました。

昨年はこの人、電話を取った僕にいきなり『しんたろうさんいる?』という名言を放ってブログのネタにされてしまったのですが、今回は打って変わってご丁寧な口調です。

曰く、仮差押を取り下げていただくにはどうしたらいいですか、と。
どうやらようやく僕も彼にとって、先生の仲間入りを果たせた、ということのようで(笑)

狙ってゲットしたこの立場、当然生かさねばなりません。仮差押で被保全債権とした未払い給料全額に加えて未精算の経費全額、さらに和解日までの遅延損害金全額と仮差押申立ですでに使った実費も全額の支払い義務を認めさせ、会社のほか社長個人の連帯保証をつけて、未払い額の4割ほどを即金で支払わす、という内容で和解してあげることにしました。裁判所の窓口に債務者社長をひきつれて出頭し、取下届けを交付送達させるのと同時に現ナマをお支払いいただく、ということで、カウンターの向こうの書記官ご一同さまにはさぞかし挙動不審な連中に見えたことでしょう。

この一連の申立-取り下げでわかったこと。

  • 債権仮差押申立に際しては、裁判官の面接がない。

以前、東関東某簡裁に債権仮差押申立の代理をやりにいき、裁判官から「なぜ名古屋から?」とか「費用倒れにならないんですか?」とか申立の当否に全然関係ないことを言われてしまった僕としては面接で根掘り葉掘り聞かれずに済むのはありがたいことです(申立の内容にやましいところは全然ありませんが、一ヶ月ぶんの給料債権を守るために全力で仮差押をかける、という行動が正しいと言ってのける度胸はありません)。だって今回の申立も、当の労働者からみれば深刻な金額でも見る人がみれば少額の事件、と思われかねない面をもっていますからね。

  • 申立の提出から担保提供命令の告知までは約3時間。ただし別の何かがあるかも。

申立書の提出段階で「特に急ぐことはありますか」と聞かれて、そうでもないと答えたところこの処理時間、ということですのでこれが通常の扱いだと考えてよいでしょう。ただ、急ぐと言ったらなにか特殊な扱いが発動されるのか、は何かの含みを残していたようでもあります。この所要時間は、前記の東関東某簡裁とほぼ同じ。労働専門部がある某地裁に書類を出したときには、若干速かった記憶があります。

ところで僕は昼過ぎに申立書を出したため供託金の額がわかったのは16時過ぎになり、官庁街から離れた当事務所からその日のうちに供託に出向くことはできませんでした。

  • 債務者会社の本店所在地の不動産が、債務者会社の所有でないことの疎明を要求する

この扱いがどうなるかは迷いがありました。以前大阪高裁管内の裁判所では要求され、東関東の簡裁では要求されなかったのです。念のため、鶴舞の図書館でブルーマップの該当ページをコピーしておいて正解でした。このコピー+インターネットで提供される登記情報サービスの印刷結果(土地および建物)+これらの資料を集めた僕の上申書で審査にパスしています。これは、申立人である債権者の方の陳述書に入れてしまってもよさそうです。

※でも、これって何も対策していないまま申立を出しに行って、その日が月曜日=図書館休館日だったら恐ろしいことになるでしょうね(笑)

  • 書証の原本は、仮差押決定が出るまで裁判所で預かりたいらしい

僕は、お客さまの預金通帳(さすがにこれは預かれない!)以外は原本を裁判所に預けています。と言っても供託金額を申立日の夕方に告知されて次の日の朝に供託し、供託書のコピーを持って裁判所に行き仮差押決定正本を裁判所の窓口で交付送達してもらうまでの一晩あずけていただけですが。

上記のことに気をつけておけば、あとは市販の実務の本を見てつつがなく申請がかけられると思います。今回は第三債務者の送達先が関東だったため、速達で送達をかけてもらう上申書を出して270円の切手を追加しておいたところ、決定が出た次の日に第三債務者方に送達され、第三債務者-債務者間でなんらかの騒動が発生し(ま、狙って引き起こしたとも言えますが)、結果として債務者からの未払い金一部支払いと和解の合意につながった、ということです。

この8月1日に創業8周年を迎えました。9年目の最初に出した申立が予想を超える好結果となり、たいへん満足しています。

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