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給料未払い:内容証明を簡易援助で作れるか?

あるサービスや制度について、あまり人が考えていなかったりちょっと違った使い方を見いだして実行してみる、というのが好きです。

…たとえば司法書士と社労士と鉄道ファンを組み合わせて云々、とか。

で、いま考えてるのは標題のとおりのこと。7月から毎月少しずつ、当事務所にも民事法律扶助制度による法律相談援助(無料の法律相談のことをこう言います。以下、この記事で●●援助ということばについてはすべて、民事法律扶助の制度の類型です)のお客さまがいらっしゃるようになりました。

そうすると、その続きを考えてみたくなります。

たとえば給料未払い(請求額は当然140万円以下とします)をめぐって初動での法律相談に来られた方に、さらに何ができるのか?

もちろんその先、裁判書類の作成(書類作成援助)や簡易裁判所への訴訟代理(代理援助)をお受けすることも当然可能なのですがどうもこれらの制度で最終的にお客さまが負担する費用は、平均的に当事務所の料金体系より高い(笑)

これ以外に、お客さまにとって安くて役に立つ利用類型はないもんかいな、と法テラスが出している規程類を探していたら、出てきました。それが標題の『簡易援助』というもの。

かんたんにいうと、法律相談援助の時間内で作れるような簡単な書類(その書類が、紛争の解決に役立つもの)を作ってお客さまに渡すことで、僕はお客さまから2100円、法テラスから2100円、合計4200円のお金をもらえる、という制度です。

お客さまからみると、無料の法律相談+2100円の自己負担で僕から簡単な書類を作ってもらって持って帰れるわけです。

ならばこれで、給料未払い事案で支払を催告する内容証明郵便を作ってあげることはできないのか?

すでにやってる人はやってるかもしれませんが、なにも考えずにやったらマズイ気がします。簡易援助の要件として

  1. 法律相談援助の時間内に作れる文書であること
  2. 相談に来られたお客さま名義の文書をつくることが
  3. (その紛争の)迅速かつ適正な解決に資する事案であること

手続き上の要件を除けば上記三つを満たしている必要があります。

パンフレット(民事法律扶助のしおり)には簡易援助の提供形態の例として『内容証明等の簡易な法的文書』と言っている以上内容証明そのものは作成OKということになります。いろいろ調べると、より具体的には時効の援用・クーリングオフ・敷金返還請求などが考えられている、とのこと。

さてそうすると?

時効の援用ってのは援用して吹き飛ばす債務を相手がわかる程度に特定しないと意味がないわけだから、それが法律相談の過程で十分に把握できていれば作成OKなはずです。逆に考えると、相談時間内に把握できるような内容であれば時効の援用で踏み倒すのがOKでお金の請求がNG、とはちょっと考えられません。仮に経営不振の個人事業主から相談を受けたとして、未払い賃金債務について時効を援用する書類は作れるのに労働者が賃金を請求する催告書は作れない、などというはずがありません。

敷金返還請求がOKということは、送付後に最悪の場合法的措置を視野に入れて争うような事案で使ってもかまわない、ということになりそうです。つまり、請求の当否や書面到着による効果は必ずしも決定的なものでなくてもよさそうに思えます。少なくともクーリングオフのように、書類が相手に届けば契約解除、というほど劇的なものでなくていい。

なら、実務的にはどうなんでしょう?

まず解雇無効を争うものは、司法書士には作れないと考えたほうがよさそうです。請求額が算定できませんから、そもそも司法書士の法律相談になじみません。

残業代を請求するのはどうでしょう?

これは『相談援助の時間内で』作れればOK、とみるべきでしょうか。月給制の労働者で残業時間が毎日違って24ヶ月分の残業代請求、これを法律相談の時間内に処理しろってのはそりゃ物理的に無理(苦笑)ただ、請求額が140万円を超えないビジョンが確立できていてどうしても時効消滅を阻止したいときには頭を抱えそうです。道理を引っ込めて作ってしまうかもしれません。

アルバイトの残業代で残業時間がわかりきっていて140万円以下、ならこれはOKになる公算が高そうです。解雇予告手当は平均賃金の計算が手早くできればこれもOKになりそう。

基本給は?

もちろんこれが一番簡単なはずです。どこかのウェブサイトみたいにテンプレートや文章ユニットをいくつか保有してしまえば、それこそ1件あたり10分で作れます。

ただ、相談内容からすでに労働者が自分名義で内容証明を出していて会社側が争う気まんまん、という場合には紛争の解決には役に立たなさそうです。

一方で、労基署への申告を今後視野に入れてあらかじめ内容証明で催告しておきたい、というのであれば、労基署に相談に行った時点で内容証明を出すように言われることが多い実情がありますから、あらかじめ内容証明を出しておくことは紛争の解決(というより解決の行程を進めること)に資すると思えてきます。

こうして考えていくと、適用できる事案を慎重に選ぶ必要はありますが、給料未払い事案の法律相談を法律相談扶助でお受けして相談料を無料にし、併せて内容証明郵便による催告書を作って簡易援助を適用し、お客さまの費用負担を低廉に済ませる、というのは可能に見えてきます。

いつかやってみたい、と思っています。ちなみに、当事務所の民事法律扶助による法律相談のページはこちらです。

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