法の日の…失策
廊下の奥の扉が開いて、男が三人出てきます。中年から初老といったところでしょうか。一人はお約束のように、ひまわりに天秤をあしらったバッジをつけています。こちらへの視線は、
- 結構な反感
- 若干の当惑
- 爪の垢ほどの好奇心
がほどよくブレンドされています。あえて吹き出しをつけるとするならば
てめーなのか悪の黒幕はっ(怒)
迎えるこっちはただ一人。やはりこんな事態のお約束として、首都の市民を締め出して建国記念パレードをやってしまう妙な隣国の報道官的な微笑を繰り出してすれ違います。
ややあって、その部屋からお客さまが出てきました。予想も期待もしていたとおり、今回の労働審判は第一回期日、しかも一時間弱で和解成立となったのです。
最低の防衛ラインをきっちり守って迅速な終結を実現でき、こっちは満足のこの和解。しかし会社側からは期日の冒頭、支払金額としてゼロ回答を出したとか。そういうお馬鹿なことを素人が裁判所で口にしないように訴訟代理人がいるはずなんですが、いったい何をしてたのやら。もっとも、もし期日前の打ち合わせをきっちりやってからゼロ回答を裁判所に持ち込んできたならば、期日終了後に依頼人から見識を疑われる憂き目にはあっているはずです。ご愁傷さま。
さて、今日は法の日なんだそうです。県内の多くの市区役所では、司法書士会による無料相談が開催されます。司法書士会支部の下っ端評議員たる僕は今朝はまず、区役所に寄って相談設営用品を配達するところから仕事をはじめることになりました。ともあれ、法の日に一勝を挙げることができたとあって気分よく裁判所を引き揚げ、近くの喫茶店に入ったところで事態はにわかに暗転します。
曇り空を見上げながら自分勝手な(ささやかな)満足感にひたっていると、アイスコーヒーを持ってきた素敵な眼鏡っ娘がそっと頬を寄せて、ささやいてきます。
…あの…お客さま?
苦しゅうないぞ申してみよホレ、と内心でつぶやきながら、もちろんそんな言葉はおくびにもださずに彼女を見上げると、少し戸惑い気味の表情で
クリーニングのタグがついておりますが。ズボンのうしろに
教訓。
裁判所内において敵対側から好意に欠けるまなざしで見られた場合、それは必ずしも訴訟の結果によるものとは限らない(合掌)
せっかく弁護士をつけておきながら、腰のうしろに黄色い紙をホチキス留めしてニコニコしながら廊下で待ってる妙な代書人に勝てない、というのは一体どんな気持ちになれるのか、願わくば一生味わうことなく済ませたいものです。
ちなみに今回の労働審判手続申立書一式の作成にあたっては申立書6ページ証拠説明書1ページ証拠数点を調製しておりますが、着手の際に二万円弱、期日一回で済んでしまったため成功料率部分としては和解金額の7%、しめて5万円を下回るのが僕の料金というかたちになっています。こうした点についてシローさんからは少々耳に痛いコメントをいただいておりますね。はじめまして。
さてさてシローさんのコメントは、一読してそれとわかる堅固な妥当性を持っており一般的にはとても正しく、通常は推奨される行動ですね。反論のしようがありません。
でも、嫌なんですそういうの。
別にコメントをした人がいやだ、というのではありませんのでご安心を。でも客観的には正しいけどやりたくないことってありませんかね?まぁそういうものです。
より具体的に言えば、この事務所の労働紛争解決支援各業務は僕が●●書士事務所の補助者だったころ=月間二百数十時間はたらいて手取り月収二十万円台前半、すなわちサービス残業時間を考慮すれば時給数百円台の労働者が気分よく費用を負担できること、に報酬負担能力の基準をおいて運営することにしており、お説を受け入れて普通の報酬体系に近づくという選択肢は創業以来もともと全く存在しません。
それに、売上が(たぶん利益も)多い事務所が品質の高い執務を実現しているかどうかは、全国ネットでコマーシャルに余念がない過払い歓迎型の事務所を見れば明らかだと思います。『人が一定の品質を維持して仕事ができる報酬の範囲』は相当広く、僕も現時点でそこからはみでた低水準に甘んじている気はありません。おそらく時間単価が10倍になっても作業品質はほぼ変わらないでしょうね。
ま、要するに労働紛争にあっては『わかっちゃいるけどやめられない』報酬体系でして、その価格と品質が気に入ってくれた人からファイナンシャル・プランニング業務のご依頼があればよいと考えています。そんな形でも5年半事務所を持たせることができたのだから、仮に今後、当事務所の経営破綻があるとしても報酬体系とは別のところからくるんでしょう。
そうした日が少しでも遅くなるように…閲覧者のみなさまにはせいぜい当事務所をご利用くださいませ。できれば不動産登記などで(笑)
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早速のコメント感謝します。やはりというか想像した通りのご返事でした。私も業種の異なる超零細事業主でありまして、自分も含めて人はなかなか変わらないものですね。安くてよいものをと信じて
過労入院した爺の戯れ言と受け取ってください。これからもご活躍ください。でもお体をご自愛ください。誰も貴方の代わりになれないのですから。
投稿: シロー | 2009年10月 2日 (金) 09時18分