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電話を録音するには

 労働相談をしていると月に一度は、会社側に内容証明などによる催告をするまえに電話での会話内容を録音しておきましょう、と助言することがあります。

 しかしながら、そうしたお客さまの大部分は電話での会話を録音する方法をご存じありません。その都度説明するのも面倒なので、というよりこうした手法について知りたい方もたくさんおられるだろうと思って、説明をしてみます。なお、労働紛争の現場でいつどのように何を録音するのか、は訴訟戦略にかかわる問題なので、ここでは触れません。

1.必要なもの

1-1.電話(あたりまえですね)

 固定電話でも携帯電話でもかまいません。電話機それ自体に録音機能を持っている場合にはなにも考えずにそれを使います。もちろん、以後の説明は一切読む必要がありません。

 録音機能の次に必要なのは発着信の履歴を画面に出せることです。必要があればその画面の表示を写真に撮っておき、その番号との間で会話をしたことを記録します。

1-2.録音機材またはそれに代わるもの

 これまたあたりまえですね。相談者ごとに所持している・または動員できる装備が異なりますので場合分けして説明していきます。

2.録音機材について

2-1.ICレコーダまたはテープレコーダなど、マイク入力端子を持った録音機器(パソコンを除く)を用いる場合

 テレホンピックアップを購入してレコーダのマイク入力端子に接続して録音することになります。テレホンピックアップは、電話での音声または電気信号を拾ってマイク入力端子への信号として持ってくる装置で、次の二種類に分かれます。価格は二千円弱~四千円で、ホームセンターで売っていることが多いです。

2-1-1.マイクとして音声を録音するもの

 イヤホンのような形をしており、録音者の耳に挿してつかいます。この状態で受話器を耳に近づければ、受話器からの音声をマイクがとらえます。録音者の声もマイクでとらえます。固定電話であれば側音(録音者が送話器に話した声が、電話の構造上受話器に漏れてくる音)を受話器から拾ってもいます。下に示した品がその例です。受話器から音が出ればよいので電話を選ばないのが長所です。しかし、マイク部分と受話器がぶつかれば雑音となり、遠ざかれば音量が下がります。音質の確保に際しては、取り扱いに注意が必要です。

2-1-2.固定電話の配線に割り込んで電気信号を取り込むもの

 これは、部屋のモジュラージャックから受話器までの間で配線を分岐させる器具をつないで、電気信号の状態でマイク入力端子へ会話の内容を取り込むものです。よって固定電話を運用することが必須であるという短所がありますが、マイクによって集音するものではないので録音者の技量に関わらず雑音が入ったり音質が悪化する余地が全くないという長所を持ちます。ある場所の電話を常に録音できるようにする用途に向くと言えるでしょう。

 正確には配線のどこに割り込ませるかによって、以下の二つに分かれます。

 ・電話機-(テレホンピックアップ)-受話器

 ・モジュラージャック-(テレホンピックアップ)-電話機

 テレホンピックアップのところで配線を分岐させ、配線の一本をレコーダのマイク端子につなぐ形になります。

これらの各機材を買い足して、レコーダに音声を取り込むことになります。

2-2.マイク入力端子がないがマイクを内蔵している各種録音機器・パソコンに接続されたマイクを流用してパソコンで録音する場合

 専用の機材を買わずに実現できる可能性が最も高いのですが、音声をいったん汎用のマイクで拾わせる必要があるため、音質に注意が必要です。録音者の声はそのまま録音機材のマイクで取り込めますが、通話の相手の声をマイクで拾えるようにするには電話機にスピーカーホンの機能がついている必要があります。固定電話ではわりと一般的(民営化前のNTTが出していた安いプッシュホンにも装備されていた機能です)なので、固定電話がある人はまずそちらの説明書を当たってみましょう。ハンズフリー機能と言っていることもあります。

 これで、録音者の声も通話の相手の声も録音機材のマイクに届きます。スピーカーホンにはならないがボイスレコーダの機能を有する携帯電話は多いので、

  1. 固定(または携帯)電話一台をスピーカーホンとして使い
  2. 携帯電話一台をボイスレコーダとして使う

このようにすることで、特に機材を買い足さずに電話を録音することができます。ご家族や知り合いの持っている電話の機能を積極的に聞いて回って、よさそうなのを借り上げてください。よく探せば、家にスピーカーホンの機能を持つ固定電話が二台・携帯電話が一台・パソコンが二台あるなどというどこかの●●書士みたいな便利な知人に巡り会えるかも…しれません、よ?

3.録音機材がない、と思えるとき

 発想を柔軟に持ってよく探せば何かがでてくることがありますので、かんたんに諦めてはいけません。携帯電話がボイスレコーダの機能を持っていることがあるのはその一例で、これで助かった人は結構います。

 実家にお住まいの方なら、昔のラジカセが死蔵されていることもあるでしょうし、部屋にオーディオコンポがあってマイク入力端子がある、という人もいるでしょう。ただしこれらの場合にはカセットテープに録音されることになるので、訴訟の証拠に使うなら録音後速やかに複製するなりパソコンに取り込んでCDに焼くなりして、音質の劣化を防ぐ必要があります。

 次に有望なのはパソコンです。よほどのことがないかぎり市販のパソコンにはサウンドボードとマイク入力端子が装備されているため、パソコン用のマイクを買い電話機にスピーカーホン機能があれば録音可能になります。なお、上で紹介したソニーの製品は構造上パソコンに接続して使用可能なので、これを導入するのもよいかもしれません。

4.パソコンでの録音に用いるソフト

 Windowsには標準でボイスレコーダというソフトが付属してはいますが長時間の録音に耐えるものではありません。フリーウェアでこうした機能を持つものとして

 超録(フリーウェア版の連続録音時間は90分)

 audacity

 があげられます。いずれも、録音レベルの確認・調整ができたり波形が表示されるといった、ボイスレコーダより優れた録音機としてパソコンを利用するための機能を持っています。

 僕は通常、audacityを使っています。録音した成果に対する編集機能が豊富なためです。

5.録音成果の取り込みおよび反訳準備

 上記各機材で録音がすんだら、まず複製をとっておく必要があります。最終的に訴訟で提出するかどうかはさておいて、パソコンに取り込んでおくと複製・反訳が容易になり便利です。なお、録音成果を訴訟に提出する際にはカセットテープと音楽CDのいずれかが一般的に可能です。これは事前に、担当の裁判所書記官に確認しておいてください。音楽CDならCD-Rを積んだパソコンで作成できるので、この点からも録音成果はいったんパソコンにとりこむべきです。

 録音時間が長時間にわたるときには、反訳書の作成についてテープ起こしを支援するソフトを使います。

 Okoshiyasu2

 僕はこちらのソフトを使っています。好みのショートカットキーを定義して、音声ファイルの再生・停止・一定秒数の巻き戻し(3秒だけ戻る、など。これは結構使います)、再生速度の変更などができます。反訳書については、僕は表計算ソフトを使って録音した時間・発言者・発言内容をどんどん入力していくかたちをとっています。それで裁判所から別段の注文なりクレームがついたことはありません。ただし、立証活動上重要な箇所にはマーカーでチェックするなり文字の色を変えるなりしておくことと、適切な立証趣旨を記載した証拠説明書を添付するべきです。

…裁判所が反訳書のどこに注目するか知りたいため、わざとそうした作業をしない、というやり方があることも否定はしませんが、あまりおすすめしません。

6.おわりに

 以上によって録音からパソコンへの取り込みが終わったとしても、それで安心してはいけません。

 実は録音成果の反訳というのは、それはもう恐ろしく時間がかかるのです。自動車工場でのライン作業と一緒で、見学しているのと実際にやってみるのとでは難易度が致命的に違うと考えなければいけません。(まぁ、僕は三菱自動車の期間工を三ヶ月やっただけなのであまり殺人的なライン作業に従事してはいませんでしたが)

 おおざっぱな傾向として覚悟して欲しいのは、

  1. 理想的な音源で
  2. 標準語をゆっくりと話す普通の会話で

 最初は、録音時間の約10倍程度の時間がワープロ化した反訳書の作成に必要だと考えたほうがよいでしょう。ためしに5分やってみるとわかります。雑音だらけの飲食店で関西弁で押し問答、という会話を反訳したこともありますが、このときにはさすがに依頼人も含めてみんな●●になっちまえ、と本気で思ったものです(ごめんなさい)

 理想的な音源とある程度の打鍵速度を持っている人であれば、慣れれば録音時間の5~7倍程度の時間で反訳できることになります。いずれにせよ、30分程度の会話を反訳し終えるにはかなりの準備と根気が必要です。また、会話の内容を忘れないうちに反訳してしまうことも必要で、特殊な用語や人名などは他人が反訳すればわからないし、当事者でも何を言ってるのか忘れてしまうことがあります。業者に外注する、というのはお金がふんだんに使える人およびそうした人を顧客にする事務所のみに許された選択肢です。録音時間1分当たり、安くて200円弱、訴訟提出用で300円台の料金を取るのが一般的です。

 ちなみに当事務所では、上記関西弁反訳書の作成以後、反訳書の作成だけは別建てで料金をいただくことにしています。録音時間1時間あたり1万円としていますが、この事務所の料金体系では高い方に見えるかもしれません。しかし反訳書作成としては安い方だと思っています。

ただし!この作業だけは!

お金もらっても、イヤなんです(号泣)

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