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最後の仕事に、あの街へ

 明日大阪へ行くことになりました。三年前から続いていた労働事案の最後の手続きをする日がやってきます。感慨深いような気恥ずかしいような、なんだか妙な気分です。

『市役所の無料相談で、担当の弁護士から「あきらめろ」と言われた

 という、今ほどスレていなかった僕にとってははなはだショッキングな電話での問い合わせにはじまったその依頼、最終的には労働者三名合計一千万円弱の未払い賃金の60%ほどを回収して終結したのですが、その手段として敵の会社と社長個人を破産に追い込んでいます。

 もちろん狙ってそうしたことで、今回終結させる仮差押申立のほかこの会社には、

  • 一般先取特権実行としての債権差押命令申立二件
  • 地裁通常訴訟一件
  • 簡裁通常訴訟(のち地裁に移送)一件
  • 未払賃金立替事業の適用の申請一件
  • 破産申立後も免責不許可を求める意見書一件
  • 免責許可に対する即時抗告一件

これらの申立を次々にぶつけています。いまにして思えばよくこれだけやったもので、身も蓋もない言い方をすればこの会社と社長を踏み台にして経験を積んだ、ということもできるかもしれません。もちろん労働紛争のすべての依頼においてそういう面はあり、キレイな文章を業界誌に書き散らしたい先生方はそうは言わない、というだけだと思います。

いわゆる法律家、という人達の暗部もかなり具体的に見せてもらえた事件ではあります。冒頭の弁護士による問題発言あり、被告側司法書士による審理妨害(破産申立までのよくある、だが決して誠実ではない引き延ばしの一形態。だがそいつ、最近の業界誌に元気で寄稿しています…ふん)、破産後の強制執行をめぐる、どうみても破産申立の趣旨に反する弁護士間での和解あり、とまぁいろいろ。おかげで手続き各行程で、だいぶやる気がでました。

人の善意にも会いました。移送後の地方裁判所労働部では、被告に破産申立の可能性があると知るやかえって審理を高速化し(最後の1ヶ月で、判決言い渡しを含めて3回期日が入りました)被告側から仮執行免脱宣言の申立がなされているのをサラッと無視して仮執行宣言付き原告全面勝訴の判決を出してくれ、さらに被告の行いを評して『誰にも、報いはあると思います』と法壇から原告席に語りかけてくれたことを思い出します。

『ただ、この世でかどうかはわからないけどね』と、少し苦笑して付け加えられたのは立場上の限界、というべきものでしょう。お客さまにとって法律的のみならず、精神的になんらか救いが見いだせる訴訟活動というのはやっぱりあって、これは僕にとって最も印象に残った傍聴の一つです。

手続き上の齟齬から破産廃止後に仮差押申立を取り下げることになり、会社としては破産手続き終了に伴って消滅しているために会社に特別代理人を選任して、供託金に関する権利行使催告をすることになりました。特別代理人には破産管財人と同様、弁護士を選任する必要があるとのことで裁判所側からは特別代理人選任のための予納金として

通常は20万円からですね

という示唆がありました。ところが世の中実に素敵にできていて

上記の訴訟をやったときの裁判所書記官さんが同じ労働部に2年後もご健在(わーい!)

以後、事実上その書記官さんの関与でするすると手続きは進み、なぜか予納金は2万円で済むことになりました。これが昨年12月。以後一冬をかけて権利行使催告の手続きは完了し、晴れて明日、供託原因消滅証明書を発行してもらえるはこびとなったのです。正直言って嫌な弁護士も司法書士も見せられましたが、最後に豪気な弁護士さんに会えて僕も救われた気分です。

いつかこのときのことを小説かドキュメンタリーにしてみたいのですが、身勝手ながらそのエンディングが暖かい春でよかったと思っています。半年分以上の給料回収の成否を託した一般先取特権での差押申立や書記官から補正指示がでるたびに書類と不安を抱えて新大阪へ通ったときの空は、いつも雨か曇りか、そうでなければ雪だったから。

仕事が終われば和歌山には、当事務所の自称産業医が国内留学中です。和歌山駅東口にお気に入りのお店を見つけたので、思い切り呑んできます!かえってきたらまた、あの裁判官や書記官さんに笑われないような書類作りに邁進するとしましょうか。


 おまけで本を一冊おすすめします。先取特権での差押え、というとーってもマイナーなテーマを扱った貴重な小説。ここで扱うのは動産売買先取特権や船舶の先取特権なんですが、仮にも債権回収を業とする以上つぶれかけの会社を相手に知恵と技と運を競わねばならない局面は本当にあって、そうした攻防戦をまがりなりにも戦い抜いた目から見ても「いかにもありそうな展開」が小説にされています。難しいと思うひとと面白いと思うひとに分かれるかもしれませんが、先取特権に興味があればさわっておいていい本です。名古屋市立図書館には所蔵がありますので、東海地方の方は相互貸借など使ってくださいませ。

もっとも、実際に上記一連の手続きを終えたあとでこれを読んだ僕の読後感、一言で言って

(登場人物である弁護士が大阪から広島へ新幹線で移動することに)

う、うらやましい

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