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労働審判本人申立雑感 その1

 先日、僕が申立書を作成した労働審判を傍聴することができました。訴訟代理人を選任せずに、自分でこの手続きを利用しようとしている人のために、気づいたことを記します。(平成24年9月、内容をアップデートしました)

労働審判とは?

 ここでは個別労働紛争解決のための法的手続きという観点から、他の手続きとの対比をしてみます。当事務所ウェブサイトの『こちら給料未払い相談室』でも説明しているほか、その特徴は以下のとおりです。

1.終結までが早い。少なくとも、早く終わることを制度として目指している。

 この点では少額訴訟と似るのかもしれません。少額訴訟は簡易裁判所において一回の期日での終結を目指すものであり、三回の期日でなんらか結論を出す労働審判と同様『裁判手続きにかかる時間が読めない・長い』という批判に答える性格を持っています。

 ただし、少額訴訟はお金の請求にかぎり、請求額60万円までの制限があるのに対して、労働審判にはこれらの制限がありません。また、少額訴訟は被告側から通常訴訟へ移行させる申述がでてくればあっさりと通常訴訟にうつる、つまり手続き最大の特色を失うのに対して、労働訴訟ではとにかく会社側が出頭してさえくれれば、初回の期日から裁判所が労使双方に、時にはかなり熱心に和解への説得に入ってきます。また、平成24年の時点で当事務所では労働審判手続に雇い主側が協力しない(出頭や答弁書の提出をしない)という例をみたことはありません。

 この点から見ると、労働審判の管轄を有する地裁本庁と同じ簡易裁判所に提訴する場合は、会社側がある程度法的知識を持っていて、それを用いてなんらか嫌がらせ・引き延ばしをしてくることを予想するなら少額訴訟ではなく労働審判を選んだほうがよいように思えます。一方、相手が反論も出頭もしない、つまり欠席判決を取れる可能性を重視するなら労働審判ではなく通常訴訟あるいは少額訴訟をとるべきです。

2.個々の期日の進行も早い。

 労働審判手続きは期日三回で終結を目指すものであるため、一回一回の期日も通常訴訟と比べて濃密です。証拠調べでもしなければ大抵の期日が数分で終わる通常訴訟の期日と比べて、労働審判の各回の期日はまず1時間ぐらいを要します。午前午後にまたがることはほとんどありませんが、2時間以上かかることもしばしばあります。

 これは、おそらく自分での申立をしようとする人および本人による申立を支援しようとする司法書士には欠点として作用することが多いだろうと考えます。

 今回傍聴した第一回の期日では、裁判官がリードを取って

  1.  申立書と答弁書から双方の主張を確認し
  2.  見解が対立しそうな所では釈明を促して主張を追加させ
  3.  さらにはこの際に事実上当事者尋問をやってしまい
  4.  心証を開示して和解勧試に入り
  5.  申立人・相手方双方交互に協議を開始し
  6.  この席でも当事者から事実関係についてしゃべらせて、さらに心証を形成する

 こうした作業をしていました。請求額や法的主張が同様な地裁の通常訴訟3~4回分の作業を一気にすっ飛ばして消化するという印象を受けます。

 このことは、労働審判の期日において『口頭でしゃべる・話されることを聞きとる』という行為がとても重要になってくることを意味します。自分が問われたことに正しく回答することの重要性もさることながら、裁判官・労働審判員が相手方会社に何をいい社長や上司が何を答えているかをよく読み取らないと、自分が有利なのか不利なのか、和解勧試や次回期日までにどう対応したらいいのかがわからなくなってきます。特に相手に訴訟代理人が付いてしまった場合、進行についていけないまま和解=譲歩を強要される危険もあります。

 少なくとも司法書士が労働審判に関与しようとする場合、第一回期日は傍聴または裁判所内での待機を心がけたほうがよいと思います。というより、労働法が一通り頭にはいってない人はこの手続きを選択すべきではないように思えます。今回の労働審判では、相手方会社の代理人を半ば置き去りにして会社担当者対裁判官で話しがすすんでいた面があったのですが、これは相手方代理人が

一瞬で負けるような法律構成を持ち込んだ結果、一瞬で葬り去られた

ためだと思われます。通常訴訟でならそうした愚劣な主張で期日複数回分の時間を稼ぐことは容易ですが、労働審判だと裁判官から

 それじゃ認められませんねー

 と言われて5秒で終わります。逆に、こっちがうっかり見当違いな主張を持ち込んだ場合、その期日いっぱい不利な立場で過ごすことになりかねません。


 明日の記事(労働審判本人申立雑感 その2)に続きます。今回の傍聴でわかったのは、普通の人向けに言えば

労審はやーい!

 と。でも早すぎてやばいかも、そんな感じですかね。

 専門職からみた場合、労働審判手続は相当の準備と相当恵まれた証拠を持ってる事案でないと恐くて選択できないといえます…が、それらが満たされた場合にはとても魅力的な手続きです。請求額140万円以下でも当然利用できますし、順当に労働法がわかっている裁判官に当たるので、これでいっそう簡裁代理権から遠ざかりそうな気もしますが(笑)

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