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どう読むか、統計 ―無回答の彼岸―

僕が所属している業界団体の連合会のウェブサイトに、報酬に関するアンケートの結果が公表されています。よく見るとなかなか興味深い結果です。

説明によれば本アンケートは全国から2700名余(つまり、母集団の約14%)を無作為抽出し、さらに回答を回収できたのは1100名余(母集団の約6%)とのこと。すでにこの時点で、まずは『報酬を回答した』人の集団である、という一種のバイアスはかかっているのかどうか、にも本当は注意しないといけません。

さて内容はといいますと、不動産登記・商業登記・裁判事務・債務整理といった分野に分かれています。興味深いのはその回答件数です。というより、ある意味裏読みしたくなってしまう。

さて上記1100件余の回収件数のうち、不動産登記の申請類型として比較的単純な所有権移転登記・抵当権設定登記に関する報酬は、それぞれ1100件以上の回答があります。回答率97%以上といえましょう。

データが妙な挙動を示すのはそのあとです。この所有権移転登記で『本人確認情報』を作成する場合の報酬に関する設問への回答件数が、いきなり900件台に落下します。

ここで同業者さんではない人のために、本人確認情報というものについて簡単に説明します。

一般に不動産の名義をAさんからBさんに変える=売買や贈与で所有権を移転する登記申請をするための大事な添付書類の一つとして、権利証とか権利書と巷で言われる何者か、があります。ではこれはなにか、というと、要はもとの持ち主さんがほかの誰かからその不動産をもらう(買った、とか相続した、とかで)登記をした際に法務局から渡された紙切れの一つがそれにあたります。

じゃぁその紙切れなくしちゃったらどうするのよ?という事態へのソリューションの一つが『本人確認情報』でして、司法書士が不動産の持ち主さんと会ってその持ち主さんが本当に本人に間違いなく、かつその不動産を手放す意思がある、ということを確認して書面あるいは電子情報を作成して法務局に提出するならば、その権利書やら権利証だのがなくっても登記申請がつつがなく終わる、というものであります。

つまり!

この本人確認情報の作成が必要だ、という事案は権利証なくして困ってるお客を相手取るものであるため、言ってしまえばボッタクリが発生しやすい状況にあります。

僕がお客さまから聞いた例では、この本人確認情報作成報酬として金15万円の請求を受けたが、高いと言ったら11万円に負けてもらえた♪という例があります。

ちなみに当事務所では、面識がない人の場合には1件3万円もらうのですが。

で、回答を見てみると本人確認情報の作成事案では5千円から3万円程度高くなるだろう、というデータがでています。回答をした人の集団からは。

ただここでは、やっぱり『なぜ、回答した集団中の約20%が回答を忌避したのか』がとっても気になります。

ちなみにこの本人確認情報ですが、当事務所にあってもいままで3回ほど作ったことがあります。『司法書士が依頼人と、かならず面談して本人確認して作る』というのがミソですので、これの作成のために名古屋から石垣島に日帰りさせられた、というのが当事務所の伝説の一つです。

・・・そう。極論すれば、日本にある不動産を手放したいが権利証失くした、という困ったお方はなにも日本国内にのみ存在するとは限らず、いずれはこのネタで外国にいけるだろう、と僕は期待しています。

さて登記はさておき、さらに回答件数が減るのが裁判事務です。どこにでもありそうな例である、建物賃貸借契約の家賃不払いによる建物明け渡し請求訴訟の訴状作成ですがこれ

回答数246件

おーいあとの人、どこ行っちゃったのー(絶叫)

って感じでしょうか。ちなみに中部地方における平均額は74243円になってますがが、当事務所で提出先が地裁で全4枚の訴状のみを作ったとすると、おそらく25000円ちょっと、になるはずです(うわぁ)

 さらに泣けたのが、上記設例で勝訴後の強制執行の申立書作成なんですが、これ中部地方での平均額53375円。

・・・そういえば、養育費支払いの公正証書を債務名義にする債権差押命令申立書を1000円で作ったことあったっけ・・・(北風)

夏なのに北風が吹いてきましたよ。さて次へ。

みんなわかりやすいなー、と思わず微笑んだのが債務整理関係の回答件数。こちらは、裁判事務関係の設問であるにもかかわらず300件台の回答件数に達しており、なぜか100件台にとどまっている少額訴訟の訴訟代理とは顕著な対照をみせています。しかも、100万円の貸し金返還請求で勝訴した際の着手金+成功報酬額の合計より過払い金返還請求で70万円とって和解したときの着手金+成功報酬額の合計のほうが高い。

と、いうことは。

今後過払いバブルがはじけたときにどれだけの人が『債務整理以外の』裁判事務に積極的に進出し、かつ事務所の経営としてなりたつようなお金がとれるのか、がかなり難しい=作業がカンタンな割りにお金が取りやすい分野が消えうせた場合に、各事務所がどういう挙動をとるかがわからない、という気がします。現に名古屋では、すでに債務整理から再び不動産登記に強引にシフトを移す事務所もでてきているようですし。

また、司法書士にあってもやっぱり少額な訴訟の受託に積極的ではないんだろうな、ということも少額訴訟の回答件数と過払いの回答件数の比較から推測ができます。

ついでに言うならば、金銭を回収する、という点では一般の家賃だの貸し金だのと報酬算定の根拠を同じくしうる(請求額に対する一定率で算出せざるをえない)給料未払い事案、とくに少額の事案は今後もきっと…裏街道まっしぐら、なんだろうな、と。

ま、楽しく仕事して食いっぱぐれがない、という状態が続くから、いいかしらん?今月は関東から1件、すでに労働事案のご依頼がはいっています。もう一件もたぶん依頼受託となりそうですが、請求額が10万円だとのこと。

え?なにか問題でも?(遠い目)

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