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過払い書士 春の夜の妄想

※下記記載はすべてフィクションです。遅れてきたエイプリルフール、ということで軽ーく読み流してくださいませ。


平成21年4月1日。●ahoo!オークションに新しい出品カテゴリができました。

 そのカテゴリ名は『過払い金返還請求権』。

 平成17年ごろから始まったと言われる過払いバブルが沸点に達した平成20年。ここ数年で急速に財務体質を弱体化させた消費者金融各社が任意整理における過払い金の返還を渋るようになったことに業を煮やした某巨大掲示板利用者達は平成20年8月、その掲示板に集まる膨大なサラ金に対する『過払い金返還請求権者』から廉価で『債務整理後もサラ金への債務が残存する多重債務者』へと過払い金返還請求権を譲渡し、その債権を譲り受けた債務者は残存債務と自分が買った過払い金返還請求債権とを内容証明一つで相殺する、というスキームを、なかば自然発生的に構築するに至りました。

 たとえば今年に入って任意整理における過払い金返還割合がついに3割を下回ったと言われるヘコヘコクレジット(仮称)から、15年にわたって限度額70万円のお金を年利27%で借り続けた結果、実に100万円の過払い金返還請求権を持ってしまった蒲生さん(仮称)は、その債権を50万円で『ヘコヘコクレジットに90万円の貸金債務を負っている吉田さん(仮称)』に売却、その債権を譲り受けた吉田さんは、

吉田さんがヘコヘコクレジットから借りている90万円の貸金『債務』と

吉田さんが債権譲渡による取得した、ヘコヘコクレジットに対する過払い金返還請求『債権』100万円のうち90万円ぶんとを

相殺します。

これは内容証明二発(債権譲渡通知と相殺の、各意思表示)で済みます。

すると、過払い金返還請求で和解したら30万円以下しか手にできなかっただろう蒲生さんは、それより多い50万円の現金を手にすることができ…

吉田さんは、50万円の出費で100万円の債権を買って、自分がもともと負っていた90万円の債務を相殺により帳消しにできてしまいます。

・・・誰も損する人がいません。この方式は数ヶ月で某巨大掲示板をたちまち席巻し、これにより任意整理受託数の減少を見た弁護士・司法書士の地道な啓蒙活動にもかかわらず、例によって商売熱心な●●書士サンたちが内容証明作成代理権を振りかざして乱入、この『過払い金返還請求権譲渡→相殺スキーム』の勃興を加速させます。●●書士業界にも、遅れてきた過払いバブルがやってきます。

 これに目を付けた大手オークションサイトは、ついに自らのオークションに『債権』の出品を認める決定を下します。これが冒頭の情景。

 もちろん袋だたきにされて一人負けするのは当の消費者金融業者です。これまでなら能力の怪しい任意整理代理人たちを騙したり泣きついたりして値切りに値切ってきた『過払い金』は、相殺に用いられるかぎり常に100%全額返還してしまったのと同じ財産価値の消失を、企業にもたらすことになりますから。

 かくて経営悪化に一層の拍車がかかった消費者金融各社において、ついに大手の一角が崩れます。刷毛富士は平成22年3月会社更生法を申請、事実上破綻。直接的原因は、もともと機関銀行を持たなかったことで資金導入を迅速に図りにくかったところへ上記の相殺を受ける件数が異常に増加したことにともない、結果として資金ショートを誘発したためです。民事再生法を選べなかったのは、本業たる消費者金融業そのものがいまや『過払い金という時限爆弾』を抱えた状態では事業譲渡先が見つからなかったため、と言われています。

 そしてこのことは、新たな大紛争を誘発します。会社更生法申請直前の数ヶ月間に行われた相殺について、刷毛富士側管財人が否認権を次々に行使、結果として過払い金返還請求権を『購入した』債務者達は大損害を受けます。自らがおこなった相殺が否認された結果、手元に残ったのは大幅に減価した=というよりほぼ無価値になった過払い金返還請求債権と、全く減少しないどころか遅延損害金を科せられるようになった貸金債務だけなのですから。これに怒った債務者はオークション運営者に損害賠償請求訴訟を集団で提起、訴訟は長く無意味な消耗戦にもつれ込む一方、債権譲渡オークションは倒産直前の相殺が否認される危険をはらみつつも、ますます取扱規模拡大の一途をたどります。

…さて、次はどこのサラ金が破綻するか?取引されるのはある意味、自らも傷つけかねない諸刃の剣。それでもやってみますか?相殺。


 倒産の危機に瀕した会社に対してお金の支払い債務を免れるために、適当な値段で債権を買い集めてきて元々持っていた債務と相殺する、というのは比較的よくあることだ、と言われています。これを各消費者がやるようになったら、しかも不動産から誰かの下着までありとあらゆるものがネットオークションにかけられるこのご時世ならばどうか?ということでいろいろ考えて遊んでいたら…こんなストーリーにたどり着きました。

 実はこれ、同時期にクレディアに対する『過払い金返還請求権を持ってしまったひと』と『引き直し計算の結果、まだ残債務があるひと』に出会ってしまって…

あーあ いっそ債権譲渡させて相殺できんかなー

などとみだらなことを考えた(もちろん、民事再生法申請後ですのでできません!)のがきっかけなんですが、気息奄々ながらもまだ生きてはいる●コ●コクレジットあたりにぶつけるには、案外いい手かもしれません。問題は、過払い金返還請求権を持っている人と貸し金返還債務を負っている人の情報をどう結びつけるか、なんでしょうが、これはまさにネットオークションこそが適当でしょう。うまくやったら会社が一つできるだけの事業になりそうなしますし、案外我が国におけるホンモノの『債権証券化市場』ができるかもしれませんよ。

~ただし、倒産後に相殺を否認される危険性は常につきまとうので、文字通りのロシアンルーレットになるんですけどね(笑)

誰か、やってみます?

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コメント

さすがに相殺はまずいんだろうなあ…と思いながらも回収できない過払い金をどうしたものか思いあぐねています。

竹フシもそこまで危ういか、と一瞬ギクッとしてしまいました。フィクションとおっしゃっていますが、感覚的に胸騒ぎがしますよね…ああ、これも一刻も早く回収してあげなくては…

それにしても! お近くならぜひ、すずき事務所の留守を預かる事務員になりたい!! 


大変興味深い内容で着眼点がすばらしいです。

相殺は私も考えたことがありますが、ネットオークションという発想は思いつきませんでした。

すずきしんたろう事務所の益々の繁栄を期待しています。

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