再会 -わたしの声がきこえますか-
もう少し話がしたかったな、と思いながら離れた人が、僕にもいます。
未練、という人もいるでしょうか。
尊敬…しています。この事務所がこのかたちでできあがるのに、とても大きな影響を及ぼしています。
迷惑…かけました。そのひとは大事な時間のいくぶんかを割いて、僕の話につきあってくれました。
感謝…しています。もちろん!いろんな意味で。
願わくば次に会うときには、もう少しましな人間になっていたいものだと思っていたのですが…その機会は予想より大幅に早くやってきました。
先週の控訴審の法廷で(爆)
ちなみにその相手、裁判官です。男性ですが(笑)
なにか妙な方向での空想をたくましくしたお客さま方?ごめんなさいね。ここにはそんな気の利いたものはありません。
ここは言葉で敵と戦ったり味方を欺いたりする代書人のブログですから♪
妙に甘酸っぱい表現にしてみたのは単に、ある程度継続して当ブログを読んでる何の罪もない読者ご一同様を引っかけて遊びたい、という程度の思惑に過ぎません。
ただ、なぜかその状況下で竹内まりやの『駅』
が頭の中に流れたのは事実です…自分がわからなくなる一瞬です。
さて。●●●高等裁判所における被控訴事件は、第一審から継続でのご依頼です。延べ320万円の請求をぶつけられている僕のお客さまですが、第一審での請求認容額は10万円。半ば当然ながら、相手方が控訴してきました。第一審とおなじ弁護士サンを代理人に立てて(笑)控訴理由にはとくに見るべきものはなく、できればさっさと蹴散らして終わらせるかさもなくば適当に附帯控訴して戦争を泥沼化させてしまいたい、というのが依頼人の軍師たる僕の思惑です。まずは第一回期日で代理人のセンセイ様のご尊顔を拝見してみたいところ。なにしろ地裁で一回すでに勝ってるわけで、控訴人席から見た場合傍聴席にいるなんの力もない司法書士、というよりは本人訴訟で無駄な抵抗をする被控訴人を扇動する悪の黒幕にちかい立場を与えられています(もちろん実際には悪でも黒幕でもございませんが…一回勝った弁護士さんとご対面するのはこれが初体験です)
その控訴審第一回期日のこと。時間より7分早く法廷の廊下についてのぞき窓を開けると、お客さまは既に傍聴席におられます。その前の期日が開かれているようです。
こっそりと扉を開け、お客さまには目で挨拶して傍聴席に座ります。控訴審ということで、法壇の上には裁判官が三人。合議体、というやつです。真ん中の裁判長が熱心に、和解勧試をおこなっています。
声に聞き覚えがあります! 心臓の音が心なしかアップテンポになりだします。目をこらします。
これは!
お客さまを目で引っ張り出して廊下に出ます。開廷表を確認します。
やはり!
いまは●●●高等裁判所、しかも合議体のど真ん中に陣取っているその裁判官は、平成13年に僕のはじめての労働訴訟が津島簡易裁判所から名古屋地方裁判所に裁量移送された際の、名古屋地裁の裁判官だったのです。その後平成15年、●●地裁でダム建設差し止め訴訟第一審の裁判長として、住民側完全敗訴の判決を出したものの水資源機構に水需要予測の見直しを求めるよう付言してみせたその人は、順当に偉くなって名古屋に戻ってこられたようで。
でも、もしあのころと変わっていないなら…お客さまに助言します。
~あの人は能力的に極めて高いレベルの人なので、指示には必ず従ってください!特に和解勧試が出た場合、絶対に乗ること!彼は僕のはじめての訴訟を当時の名古屋地裁労働部で担当した裁判官で、僕の訴訟を自庁調停に回して一気に妥結させてしまった人で、なにか思い切ったことをしてくる可能性があります!
…が。しかし。裁判官の対応は、ある意味でよくある、しかしこちらがもっとも期待したものでした。7年前のように「すいません…遅れまして」と言いながら開廷を宣言、素早く控訴人には控訴状陳述・控訴理由書・控訴の趣旨変更申立書陳述、被控訴人には答弁書陳述の確認を取ると、
「控訴人被控訴人双方にお尋ねします。訴訟の進行についてなにかご意見はありますか?」
「では特にご意見がないようなので、これで弁論終結、判決言い渡しは2月●●日午後●時●●分とします。判決は郵送しますので出頭の必要はありません。ではこれで終わります!」
あとでお客さまに聞いたところでは、この裁判官の印象として『話し方に変化があってわかりやすく・そして進行が速い。(判決はまだ見ていないが訴訟指揮としては)的確でもあるのだろう』とのこと。僕もそう思います。
今回控訴人から出てきた控訴理由書にはそれなりの分量があったのですが、それをサクッと蹴って第一回で弁論を終結したのは…期待していましたが大変結構な判断でした。僕のお客さまにとっては、不当な訴訟で漫然と訴えられ続けるよりはよほどいいわけですから。
でも…僕の答弁書はあの裁判官にとって、少しは読めるものに仕上がっていたのでしょうか。当事者として法廷に入れるならば言葉を交わす機会もありますが、今はもうそれもできません。せめて何回か期日を重ねたならば、わかったはずなのに。それが少々不満です。
ただ、僕はやはり、ひどく幸せな司法書士であることは確かです。
自分の初めての労働訴訟がこの人に担当されたおかげで、
- この人が移送後の第一回目の期日の冒頭で被告側の弁護士に『いくら採用時の合意があったって、雇用保険に入らないのは被告が悪いですよ』ときっぱり言ってくれたから…
- その後1時間30分以上の時間をかけて、僕の話を聞く時間を作ってくれたから…
- その訴訟を自庁調停に回して、司法書士と社会保険労務士の大先生を調停委員に据えてくれたから…
僕が労働事案の本人訴訟を支援する、そして(あくまで理想であり、完成してはいないけれど)お客さまと話をする時間を長く取って、ゆっくりと話ができる事務所を作るきっかけをつかむことができたのだし、その人が変わらず元気でいい仕事をしているところに、間接的にとはいえ関わることができるのですから。
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