立場の微妙な介添人
冷えた麦茶を一口すすり、そっと窓の外に目を向けてみます。隣に広がる神社の木々のおかげで、相談室がいっそう広く見えます。
・・・いや、正確には
麦茶をすするふりをしつつ
窓に目をやるふりをして
二人の様子をうかがった
というべきでしょうか。ここは繁華街にほど近い綺麗なビルの一室、その7階にある、某大先生の法律事務所。ある意味で滅多に見られないものを見せてもらっているのですが、それと引き替えにいささか微妙な立場にたどり着いてしまった、今日はそんな話です。
さて、いま僕の隣にいるのは、僕が連れてきたお客さま、というより「お客さまだったひと」対面におわしますのは、この人とは利害対立する側の代理人弁護士さん。ただいま僕のお客さまから、事情聴取中です。追及中とは、申しますまい。この先生と僕には、マンモスタンカーと伝馬船ほどの能力差があるはずです。たぶんこの先生、いまでも手加減していますが、それでも時ににこやかに接して相手に存分にしゃべらせ、時に矛盾を突きつけて沈黙に追い込むさまを隣で見ていて、まぁ大変勉強になりました。
さて僕はこの件、ある所有権移転登記申請の代理の依頼を受けて関わった、というより巻き込まれたことになりました。弁護士さんは義務者(不動産を渡す人)の代理人、僕がこの先生の事務所にお連れしたのは権利者(不動産をもらう人)、というかたち。この仕事が、ある問題のためストップがかかり、その後キャンセルになり、さらに守秘義務にひっかかる諸々のために、今日の法律事務所訪問とあいなりました。
・・・が。
実は今回、僕はこの登記申請を
まだ、やってなかった(とだけ言っておきます。ここにもいろいろあって)
ため、結果としては感謝さえされかねないということで、さらに立場が妙なことになっています。もし言われた仕事をさっさとやっていたら今頃この部屋で半泣きで平謝り、その後タダ働きして所有権抹消登記云々、なんてことになりかねないよな、と思いながら麦茶を口にしてみる、というのが冒頭の光景。どうも僕もこの元お客さまから本当のことを教えてもらってなかったようで、目の前のやりとりは他人事とまでは言いませんが今更この人を積極的に援護する必要はないのです。
要するに今日は、自分は悪くないという立場を保証されながら弁護士サンが裁判外で対立側の素人とどう相対するか、をつぶさに見せてもらえる、という、当事務所始まって以来の妙な経験をさせてもらった日。今後数年ないでしょう。というより、ないことを祈ります。
で、久しぶりに思いました。
やっぱ弁護士って、すごいなぁ(嘆息)
たまーに、いいものを見せてもらえると安心しますね。弁護士も司法書士も、上には上が、下には下がいるということで。
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