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続 訴訟費用額の確定の申立書を作ってみましょう

 これは7月28日付『訴訟費用額の確定の申立書を作ってみましょう』の続きです。訴訟費用を巡るこの記事は今日で完結し、いずれウェブサイト上に転載します。段落毎の通し番号は昨日の記事から連続し、記載例も昨日のものを使っています。

3-2-5.原告本人の出頭日当 金3950円

 口頭弁論・弁論準備など、裁判所が定めた期日に一回出頭するつど、3950円の日当が請求できます。一回の期日が5分で終わっても3時間かかってもこの金額です。当然ながら出頭しなければ請求できず、単に書類提出等で期日でない日に裁判所の窓口まで行っただけでも請求できません。したがって、いつ出頭したかの記録は裁判所に残っていることになりますから、わからなくなった場合には記録を閲覧して把握します。複数回出頭している場合には、

原告本人の出頭日当(第1回口頭弁論、第2回弁論準備、第3回弁論準備、第4回口頭弁論) 金15800円

と表示して3950円×回数分を計上すればよいです。

なお、ここでは訴訟代理人がついた場合は考えませんが、たとえば簡易裁判所における許可代理人をつけた場合で、本人と代理人が同じ日に出頭したときは、本人分のみの日当を計上します。ただ、当事者尋問・和解などで裁判所の呼び出しがあって本人が出頭した場合のみ、本人+代理人の日当を同時に計上できます。代理人が出廷しているのを本人が単に傍聴しているだけなら、もちろん本人分の日当・交通費とも計上できません。許可代理人の日当を計上する場合には、『原告代理人の出頭日当』という項目を設けて上記とおなじように書きます。

3-2-6.原告本人の出頭旅費

 直線距離によって計算する方法が原則です。これと実費償還による方法とありますが、いずれにせよ、まず直線距離で把握することが必要です。計算過程はつぎのとおりです。被告の場合も、読み替えてもらえれば同じです。

  •  訴状記載の原告の住所地を管轄する簡易裁判所【1】を調べます。
  •  その訴訟で原告が『実際に出頭した裁判所の所在地【2】』を管轄する簡易裁判所【3】を調べます。
  •  【1】と【3】の双方が同じ簡易裁判所ならば、原告の住所地と実際に出頭した裁判所の所在地【2】の直線距離を測ります。その後3-2-6-1.の方法で旅費を計算します。
  •  【1】と【3】が違う簡易裁判所なら、原告の住所地を管轄する簡易裁判所【1】と実際に出頭した裁判所の所在地を管轄する簡易裁判所【3】との直線距離を確認します。その後3-2-6-2.の方法で旅費を計算します。

 簡単にいうと、簡裁の土地管轄を超えて別の裁判所に行った場合には『簡裁庁舎間の直線距離』、簡裁の土地管轄内で動いた場合には『自分の家と出頭先の庁舎との直線距離』をまず算出する、ということになります。

3-2-6-1.原告の住所と実際に出頭した裁判所所在地を管轄する簡裁が同じ場合

 名古屋市緑区に住所があるひとが名古屋市中区丸の内1-7-1にある名古屋簡易裁判所に出頭したような場合です。東京都23区の人が東京簡裁に、大阪市内の人が大阪簡裁に出頭した場合もおなじです。

 さてこの例では名古屋市緑区は名古屋簡易裁判所の管轄に属するため『名古屋市緑区の、自分の住所』から『名古屋市中区丸の内1-7-1の名古屋簡易裁判所庁舎』までの直線距離をとります。名古屋地方裁判所に出頭した場合には、名古屋では地裁と簡裁は道路を挟んで別のところにありますから、名古屋地方裁判所の庁舎までの直線距離をとります。メートル単位で500メートル以内の場合は旅費の請求は認められません。それを超える場合(501メートル以上)の場合には、出頭1回あたり300円が計上できます。自動車で行っても徒歩で行っても公共交通機関を使っても、この金額です。逆に言えば自転車で行っても、距離さえ規定を満たせば旅費の請求はできることになります。

 ・・・ですがいまどき名古屋市営地下鉄でも初乗り200円、東京メトロでも160円ですので往復300円で収まることなんかほとんどありません。こうした場合のために『実費で請求できる』可能性について3-2-7.で解説します。使った証拠が必要なので、無ければ諦めざるをえませんが。

3-2-6-2.原告の住所と実際に出頭した裁判所所在地を管轄する簡裁が違う場合

 この場合ですが、あくまで『二つの簡易裁判所の庁舎』の間の距離で算定するところに特色があります。ですので、場合によって損するひと・得する人が出てきますが、これは諦めてもらうか実費償還の可能性を探るしかありません。

 さて、何とかして『原告の住所地を管轄する簡易裁判所』と『出頭先の裁判所所在地を管轄する簡易裁判所』との直線距離を確認したら、その距離が10㎞未満の場合には出頭1回あたり300円が計上できます。不平があるなら3-2-7.で言及の実費償還を考えるのは前項とおなじです。

 10㎞以上の場合には、次の単価を掛けます。

 10㎞以上100㎞未満 1㎞あたり 30円

 100㎞以上301㎞未満 1㎞あたり 50円

 301㎞以上 301㎞未満の部分について、1㎞あたり 50円 301㎞以上の部分について 1㎞あたり 40円

 これは往復分です。よって、計算した距離が16㎞なら16×30=480円、200㎞なら200×50=10000円、500㎞だと、300㎞まで1㎞あたり50円、以後1㎞あたり40円なので、300×50+200×40=23000円になります。

 さて、いま名古屋-静岡間の直線距離を適当に測ると(あくまで設例ですので、この数値を使ってはいけません)136㎞と出ました。よって出頭旅費は、期日一回当たり往復分で6800円となります。

 一方で同区間片道のJR普通運賃は3260円、新幹線通常期指定席特急料金は2920円なので、原則に拠った場合には普通列車で出頭することになりかねません。名古屋-静岡間の東名高速バス都市間往復割引きっぷ4800円を使って差額をポッケに入れましょう、などというのはどこかの旅行書士でないとそうそうできない発想です(笑)。

 ではいま名古屋-静岡間の移動に新幹線を用いることが通常ありうることなのか、は断言できないのですが、ここでも3-2-7.で言及の実費償還について考えておく必要がありそうです。

平成22年8月5日追記

  • ここで問題になる簡易裁判所庁舎間の距離ですが、各裁判所にこの距離を算出するコンピュータソフトが運用されている旨の記載がある書籍があることに気づきました。実際に確認していませんが、出版社が司法協会で裁判所向けの執務資料に掲載してあることから、この扱いで間違いないと思われます。ですので庁舎間の距離は、裁判所(具体的には、訴訟費用額確定処分の申立を受け付ける部署)に確認することをお勧めします。

3-2-7.旅費の実費額の償還

 上記で述べたとおり、単純に二点間の直線距離によって旅費を決定すると時には不利な結果が出かねません。こうした場合に、下記の要件に当てはまれば使った交通費の実費が計上できます。なお、条文には、実際に支出した額が原則通り直線距離で計算した額を超えること、という要件もありますがこれは当たり前のことを言ってるだけなので解説しません。

  •  旅行が通常の経路および方法であること
  •  上記を明らかにする領収書・乗車券・航空機の搭乗券の控え等の文書が提出されたこと

 この二つに当てはまっていれば実費で計上できる可能性があります。まず、実際に移動した経路と値段を文書で証明できなければ不可なので領収書や搭乗券の半券などを保存してないような場合は、諦めて直線距離で請求せざるをえません。

 つぎに、『通常の経路および方法』の旅行とはなんぞや、というところで少々疑問が残ります。お値段がいくつかある交通機関の一番安いもの、とは言っていません。普通の人ならその区間を移動するのに使うんだろうな、と裁判所書記官が納得できる経路と方法、ということなので、これは試しに申し立ててみるしかないと思います。簡単に認められると考えられるのは、同一の簡裁管内で出頭した場合などで旅費が一回300円となっている際の、自宅最寄り駅から裁判所最寄り駅まで一番安い交通機関の実費です。それでも、利用したことを文書で明らかにできないと申立が通りませんが。

 最後に、代理人を出頭させた場合の旅費についてですが、これは『本人が出頭した場合の旅費』を超えることができない、と決まっています。本人より遠くに住んでいる親類を許可代理人にしたような場合には、代理人の出頭旅費はあくまで本人の額を基準として計算されます。

 3-2-8.判決正本送達費用 金1050円

 これは判決正本を被告側に送るための郵便切手代です。相当重たい判決でもなければこの金額です。

 3-2-9.その他

 本人でできる訴訟において、他に訴訟費用として計上できそうなのは証人の日当・旅費、鑑定費用がありますが、これらは費用を予納し請求がなされる過程で内訳が明らかにされているはずですので、それに従って記載すればよいと考えます。

3-2-10.催告書送付費用 金1040円

 これは、訴訟費用額の確定の申立書に添付の計算書を相手方に送って異議があるかどうかの催告を行う場合に発生する費用です。ただ、常にこの金額であるかどうかが不明です。資料によって『500円』とするものもありますし、僕が申し立てた某簡裁のように特別送達で1040円必要というところもあるようです。

 また、場合によっては相手方への催告を要しない(事件記録からただちに算定できる費用しか請求しておらず、かつ訴訟費用の負担が完全に相手側のみの判決が出ている場合)こともありますから、常に発生するかどうかすらわからない費用と言えます。ただ、直線距離によるにしろ実費償還を求めるにしろ、交通費を計上した場合には相手方への催告をする方向に書記官が動くように思えます。

3-2-11.訴訟費用額確定処分正本送達費用 金1040円

 こちらは必ず発生する費用です。ただ、金額が1050円になることがあるかもしれません。僕が申し立てたときは1040円でしたが、これが必ず正しいかどうかわかりません。


4.作成および提出にあたって

 提出先部署が把握できていれば、この申立書を郵送で提出してしまうことは一応可能です。提出部数は1部のみです。申立書本紙・別紙計算書(旅費を実費償還してほしい場合には、疎明資料)の順に重ねてホチキスでとめてください。

 さて、提出時に、おそらく予納郵券を納めるよう指示がくると思います。この金額がかならずしも一定しないので前もって提出予定の裁判所に電話で聞くか、あるいは計算書のうち催告書送付・訴訟額確定処分正本送達費用・合計額を空欄にして裁判所にもっていき、予納指示を受けた金額をさらっとその場で記入して仕上げるとか、そうでなければいっそ請求しない(あまりおすすめはしませんが)と言った策を講じる必要がありそうです。

 首尾よく受理してもらえれば、早ければ3週間程度で訴訟費用額確定処分が発布され、それが相手方に送達されるのですが…

 僕の経験では、特別送達された催告書一式を裁判所の窓口まで突っ返してきた社長、というのに出くわしまして、それを裁判所側が思わず受け取ってしまったために再度の送達を強いられた、という事案がありました。こうなると、もう一月あっという間に遅延します。

 それでも送達が済めば、訴訟費用額確定処分の主文記載の金額について強制執行可能になります。ただし、差押申立書提出までに

 訴訟費用額確定処分の送達証明申請(費用150円)

 訴訟費用額確定処分への執行文の付与申請(300円)

 をおこなっておく必要があります。これらは通常訴訟の判決正本によって強制執行を始めるときとおなじです。ですので同時に申請することになるでしょう。これらの費用は、執行費用として差押申立書のほうに計上します。

 さて、来月あたり気が向いたら、『判決正本と訴訟費用額確定処分の二つの債務名義を同時に使って、債権差押を始めるさいの申立書』の記載について説明しようと思います。いろんな記載例をみてもこの組み合わせでの請求債権目録の例がない(笑 そんなにマイナーなのか?訴訟費用額確定処分)ので、なにかの役にたつかもしれません。


 明日は掛川まで日帰り出張して、掛川での仕事を完結させてきます。明後日は伊勢市に行って当地泊、8月1日は創業4周年なんですが、どこか温泉地か静かな街のビジネスホテルにでも潜伏してゆっくりしようと思います。

 おかげさまで創業4年経ってようやく、『月末が近づいて預金残高が足りないと発生する偏頭痛』とか、『夕方になって窓から外を眺めていると不意に身投げしたくなる衝動』とかから解放されたので、今年はちょっと安楽な夏にしてやろうかと。かような呑気なことを考えていられるのも、ひとえにお客さまの皆様のおかげです…、が、少しゆっくりさせてください(遠い目)

 そんなわけで8月はブログの更新頻度が落ちるかもしれませんが、この続き=債権差押え申立編は、気長に待ってやってください。また、8月は大阪へ1~2回、東京へ1~2回の出張を実施するほか、どこかに放浪することがあるかもしれません。

・・・もし出張相談をご希望の方で、僕がまだ仕事で行っていない道県からのご依頼がありましたら・・・考えます。東北とか山陰とか四国とかから、お座敷がかからないもんですかねぇ?


2015.04.18 追記

訴訟費用と訴訟訴訟額確定処分の申立書作成については本人訴訟を完遂された方を中心に関心を持つ方があり、当ブログのいくつかの記事がお役に立っているようです。

東京~大阪間の裁判所を対象に、このたび訴訟費用額確定処分申立書作成だけを受託するサービスをはじめました。

訴訟費用額確定処分申立書作成のページ

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コメント

本当に大変参考になりました。(スピードアップの蘊蓄は脱帽します。)
明日、作成した訴訟費用額確定の申立書の金額と、判決の異議申し立ての有無の確認に行って来ます。6月8日午前0時に判決が確定します。そしてこれは10日に提出を予定しています。

貴重な情報ありがとうございます。わたしは沖縄の離島におりますが、弟とのいさかいに難儀しております。先生の掲載情報に感謝しております。これからも、どうかご活躍くださいますことを祈念して筆を置きます。

少額訴訟をかかえている素人です。
先生のブログを参考に、やっと今、「訴訟費用額確定処分の申し立て」までたどり着きました。
次は強制執行となるのですが、下記の費用についてお伺いします。
お忙しいところ申し訳ありませんが、お答えくださると幸いです。

>訴訟費用額確定処分の送達証明申請(費用150円)
>訴訟費用額確定処分への執行文の付与申請(300円)
>をおこなっておく必要があります。

カッコ内は印紙代だと思いますが、その額に
前者160円・後者580円を加算できると、あるHPで見ました。
が、色々調べてもそのような記載が見つからないのですがこれは本当でしょうか? 何の費用として認められるのでしょうか

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