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訴訟費用額の確定の申立書を作ってみましょう

 この記事は7月26日付『訴訟費用額確定処分を御存じですか?』の続きです。ここでは、本人訴訟で確定判決を得た人が訴訟費用額確定処分を得るための、訴訟費用額の確定の申立書を作ることを目指します。

 なお、何度でも強調しますがこの訴訟費用額の確定の申立に当たっては、かならずしも要した費用を全部算入する必要はありません。訴え提起の手数料なり出頭回数分の日当なり、わかりやすい部分だけに限って計算するのも、ご自分の意向としてそれ以外の費用(として認められるもの)を捨てていいならばOKなのです。それでも請求しないよりよほどましだと思います。気楽に行きましょう。なお、このことの裏返しになるのですが、うっかり何かの要素を落としたまま申立をした場合、単に過少な算定をしているだけだと了解されてそのまま申立が通り、結果として誰も助けてくれない、ということはあり得ます。


2015.317.追記

とらじろうさんからコメントをいただきました。どうもありがとうございました。

お尋ねのように被告側で訴訟活動をおこなって原告の請求棄却、訴訟費用は原告の負担とするという判決を得た場合もこの記事にそって訴訟費用額確定処分の申立をし、自発的に支払が得られないようなら強制執行することは可能です。

あとは、訴訟の勝敗によって原告の請求が認められた金銭上の請求にかかる部分と被告が得られる訴訟費用を相殺することもできます。

…というと、また誰かが何年後かに「請求額100万円の訴訟に被告側で応訴し、原告の請求が5万円だけ認められ訴訟費用は20分の19が原告負担、残りが被告負担となりましたがどうしましょう?」といったコメントをくださるのかもしれませんね。

当事務所では、あまり急がない方のために大阪-名古屋-東京一帯の裁判所であれば訴訟費用額確定処分申立書作成の代行のご依頼をお受けしています

では、記事に戻りましょう。計上している費用は本稿執筆当時のものなので、消費税率変更による郵券や交通費の額、登記事項証明書発行手数料には変化が生じています。注意して読んでください。


1.申立から処分確定まで

まず、この訴訟費用額確定処分が発布され、それをもとに強制執行できるまでの行程をざっとみてみましょう。

  1. 判決確定
  2. ★第一審裁判所書記官への、訴訟費用額の確定の申立書提出・予納郵券納付
  3. ※裁判所書記官から相手方への、催告書送付および相手方からの認否書提出
  4. 訴訟費用額確定処分発布および相手方への送達
  5. ★送達証明・執行文付与申立
  6. ★執行文付訴訟費用額確定処分正本を債務名義として、各種差押申立実施

ここで★をつけたのは、申立をする人がなにかアクションを起こす必要がある行程です。※印の部分は、場合によっては省略できることになっています。では、判決確定後の各行程をたどっていきましょう。

2.訴訟費用額の確定の申立書の提出先

 第一審の裁判所です。簡易裁判所に訴訟を起こしたらたまたま欠席判決が出てしまい、相手が控訴してきて地方裁判所でまた判決をとった、という場合には、申立書はあくまでも『簡易裁判所』に出すことになります。

 なお、ある程度大きな裁判所だと通常の民事受付ではなく、『事件記録』を扱う係に申立書を提出することがあります。申立そのものは郵送でもできるのですが、送付先は裁判所に確認しておいてください。

3.申立書の作成

 申立書本紙と計算書から成ります。たいていの場合は、A4判の紙二枚で済むと思います。下に見本を作ってみます。下線部が、申立の内容によって変わるところです。書かなくてよい場合もあります。なお、実際にはセンタリング・右寄せ等をそれらしく行っていますがそれは省略します。無くても通りますので。


訴訟費用額の確定の申立書

〒458-0801
名古屋市緑区鳴海町字長田32番地

原告  鈴木慎太郎
電話 052-895-7896

491-0899
愛知県一宮市荘園通一丁目2番3号
被告  有限会社おはようのない事務所
代表者代表取締役 砂上 清

 上記当事者間の御庁平成19年(ハ)第2345号賃金支払請求事件について、平成19年6月26日御庁において原告勝訴、訴訟費用は全部被告負担の判決があり、上記判決は平成19年7月25日確定したので、被告が負担すべき訴訟費用額を別紙計算書のとおり金13570円と確定されるよう、別紙計算書を添えて申し立てます。

添付書類
計算書 1通

     平成19年7月27日

     原告 鈴木慎太郎 (認印)
一宮簡易裁判所裁判所書記官殿

(別紙)

計算書

訴え提起手数料       金2000円
書類の作成及び提出費用      金1500円
商業登記事項証明書交付手数料及び同送付費用   金1160円
訴状副本及び第一回口頭弁論期日被告呼出状送達費用  金1050円
原告本人の出頭日当(第一回口頭弁論期日)    金3950円
原告本人の出頭旅費(26km)     金780円
判決正本送達費用      金1050円

以上の小計        金11490円

催告書送付費用 金1040円
訴訟費用額確定処分正本送達費用 金1040円

以上の小計 金2080円

合計 金13570円


 欠席判決をもらって勝訴、または少額訴訟で第一回口頭弁論期日のみに出席して判決、判決の内容は原告側全面勝訴で訴訟費用は被告の負担とする、という場合には、書類の作成及び提出費用を除いて大体このようになります。順番に解説します。

3-1.申立書本紙(1ページ目)

すでに受け取っている判決正本から、原告・被告・事件番号および事件名を転記すればあらかたできあがります。注意するべきなのは『判決が確定した日』です。確定証明書を取っていない場合には、知らないことになるので裁判所に電話して聞くことにしましょう。教えてもらえます。あとは、別紙で計算した金額の合計を書けばできあがります。体裁は適当に整えましょう。他のウェブサイトに出ているひな形も参考にして(笑)

なお、申立ての時点で判決に記載された当事者の住所や商号が変わっている場合があるかもしれません。この場合には

(判決正本記載の本店所在地)●●県●●市荘園通り●丁目…
(移転後の本店所在地)●●県●●市墾田町●番地…

と連記すればいいだけのことです。

 添付書類の表記で『計算書 1通』となっています。この部分は常に正しいのですが、その後に『疎明資料 各1通』と続くことがあるかもしれません。これは、交通費の実費償還を受けるための疎明資料として領収書等を添付する場合以外には必要ありません。

3-2.申立書別紙(計算書)

 ここが最大のミソなのですが、本人訴訟でなんとなくおこなえる訴訟の場合には、わかりにくいのは交通費だけだと思います。あとは、裁判所備え付けの事件記録から確認できるか、落としてもさしたる実害がない額のはずです。各項目ごとに見ていきます。

3-2-1. 訴え提起手数料

 原告側ならかならず請求できる、そしてわかりやすい費目です。具体的には訴状を出すときに買って提出した収入印紙代のことです。間違って多くつけたとか、訴訟の途中で請求を減縮(または一部とりさげ・放棄など)した場合をのぞいて、訴状記載の金額をそのまま書いてかまいません。設例では10万円台の賃金支払請求訴訟を起こして、2000円の収入印紙を貼っていた、という想定です。ここはわかりやすいので、かならず書くとよいでしょう。当然ながら被告側は、訴訟費用原告負担の判決を得ていても請求できません。

3-2-2.商業登記事項証明書交付手数料及び同送付費用   金1160円

 原告または被告に『法人』が関係してくるときに発生する費用です。具体的には労働者が会社を訴えた場合には、被告会社の商業登記事項証明書(昔の言い方なら、登記簿謄本)を1通取って訴状に添付しましたね。

 この実費として1通1000円と、その交付申請書の提出および受領に要する費用として1通160円、合計1160円が認められます。あくまで1通当たり1160円なので、2通取ったら2320円ですが、実際に裁判手続のなかで使っていることが必要です。未提出のものは一切カウントしません。

3-2-3.書類の作成及び提出費用      金1500円

 ここでは、『通常訴訟の、訴状の』作成及び提出費用という意味にとってください。訴状1通のページ数がどんなに膨大でも、1500円の定額です。そして相手方が5人まではこの金額です。

 ただし、少額訴訟による場合には常に『1000円』です。以下の加算は、一切ないことに注意が必要です。

3-2-3-1.通数加算(訴状・準備書面・答弁書)

 訴状につづく準備書面をたくさん提出した場合、それが実際に期日において陳述されたならば、訴状と合計して6通以上20通までで1000円、21通以上35通までで2000円…と加算はされます。

 訴状+第一~第四準備書面までで『5通』と数えて下さい。あくまでも期日において陳述したものに限ります。ですので、第四準備書面までしか出していない場合はつねに『1500円』になります。

3-2-3-2.通数加算(書証)

 給料明細など、書証をたくさん出した、というのは比較的よくあることですね。この場合は、『16通以上』で加算が発生します。16通から65通までで1000円加算、66通から115通までで2000円加算、116通から165通までで3000円加算…という形で50通増えるごとに1000円を加えていきます。なお、甲第●号証の1,2,…という枝番は独立した通数とみるかどうか、参考文献には肯定意見がついています。そうすると、たとえば一冊20ページの就業規則を単に『甲第1号証』として出すのと、各ページ毎に枝番を付して『甲第1号証の1~20』として出すのではお値段がちがってくることになりますが、複写作業の費用をおぎなうもの、という趣旨だと了解すればたしかにそれでいいのかもしれません。

3-2-3-3.例

 ・訴状と第一準備書面、第二準備書面を提出し、書証は甲第11号証までの場合。

 加算はまったくありませんので、書類の作成及び提出費用は1500円です。

 ・訴状と第一~第7準備書面を提出し、書証は甲第70号証までの場合。

 準備書面の合計通数が8通となり、5通を超えていますので1000円の加算があります。

 書証は70号証まで、これは66通から115通までに該当しますので、2000円の加算があります。よって

 基本1500円+準備書面等の通数加算1000円+書証の通数加算2000円=4500円、になります。

3-2-4.訴状副本及び第一回口頭弁論期日被告呼出状送達費用  金1050円

 これも原告側として勝訴した場合にはかならず計上できる金額です。被告への期日呼出状の特別送達は最低1050円かかりますので、とりあえずこの金額を計上しておけば間違いにはなりません。よほど重たい訴状を作ってしまったような場合にのみ、裁判所の送達記録を確認して使った郵券額を確認すればよいと思います…が、そうしたことのために交通費と時間をつかって裁判所まで出かけることを、僕はおすすめしません。
残りは明日の記事に続けます。では、今日はこれまで。


2015.04.18 追記

訴訟費用と訴訟訴訟額確定処分の申立書作成については本人訴訟を完遂された方を中心に関心を持つ方があり、当ブログのいくつかの記事がお役に立っているようです。

東京~大阪間の裁判所を対象に、このたび訴訟費用額確定処分申立書作成だけを受託するサービスをはじめました。

訴訟費用額確定処分申立書作成のページ

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コメント

よくわかりました。本当に訴訟費用請求に関する情報が見事にないため、困っていました。ご親切に感謝します。

> 訴訟の勝敗によって原告の請求が認められた金銭上の請求にかかる部分と被告が得られる訴訟費用を相殺することもできます。

なるほど、そういうこともできるのですね。原告に認められた額が10万円でも、被告が新幹線で毎回期日に出向き、交通費が膨らみ訴訟費用で原告が支払うべき割合が10万円を越えれば、逆に被告から請求できるということですよね(侵害行為をやめるよう求めた行為を名誉の毀損と主張されたいいがかりの裁判のため、反訴や別訴を考えているのですが、訴訟費用の請求という可能性も検討してみます)。

重ねて、ありがとうございました。

訴訟費用の請求について書かれたものがほとんどありませんので、先生のこのブログはとてもありがたいです。

被告の側で勝訴(棄却)した場合も、遠方の裁判所に出向いた交通費など、請求してよろしいのですよね。それとも、訴訟費用を請求できるのは、原告の側だけなのでしょうか。お伺いできましたら幸いです。

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