古墳の街の簡裁で
昼下がりの裁判所庁舎から、男が二人出てきます。
幽霊よりも、若干たしかな足取りで。
賞味期限切れのイワシよりも、若干元気な眼差しで。
バッジを付けてない方が曰く
「『痛い! 痛い!』って感じでしたよねぇ…」
バッジを付けてる方が応じて曰く
「ええ、こっちにも視線が…きましたね」
さらに付けてない方が
「いままでかいたことがない種類の汗かきましたよ」
付けてる方が
「あ、瓶につめて『がまの油』で売れますよね、きっと」
双方が
「まぁ、裁判官の態度があれだけはっきりでてくるとは…ねぇ」
さてさて、本人訴訟をやったことがない幸福な皆様お立ち会い。
そこのあなた、『裁判官』って、テレビのニュースに出てくる開廷前の風景みたいな無表情な連中だ、って思ってませんか?
それは間違いです! いい意味でも悪い意味でも。
さすがに連中も人の子、あきらかにまちがった主張を維持しようとたくらめば怒るし、まともに仕上がってない書類がでれば焦れます。訴訟が長く続くうちに心証形成がなされるにつれ、原告に対するのと被告に対するのとで、少しずつ口の利き方も違ってきます。
その思いっきり極端なのを、見せられた、しかも自分たちに対する負の評価を。
これを受けての冒頭の光景です。理由はただ一つ、前回の期日と今回の期日の間に、相手側から、こっちの死命を制する決定的証拠が出ちまった、ってわけ。ただ、僕の見立てが正しいなら、その証拠をとらえてのこっちの訴訟活動の結果、裁判官は『原被告どちらにも』同様のまなざしを向けているようではあります。懐疑と軽蔑と怒りのまじった眼差しを。強いてその眼差しに、吹き出しをつけるなら
てめーら何やってるんだ お互いに
って感じです。
ただし。僕が書記官殿と実施しておいた事前調整の甲斐あって、不法行為をあつかう事案であるにもかかわらず不法行為に関与した当事者本人には、当事者尋問を実施せず裁判所に出廷する必要なし、になりました。これで僕のお客さまは、裁判所で弁護士から叩かれずに済む。強いていえばこれだけが、小さな勝利なのかもしれません。
今回やっぱり感じたのは、『傍聴は大事』ということ。裁判官の表情から読まねばならないことは、実に多いです。
もう日付が変わってしまいました。今日は伊勢市まで移動して、さらに宿泊です。
2020.12.01修正
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