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続 訴訟費用の話をしましょう

 これは昨日の記事の続きです。全2部中の2部めです。

 一般のひとが『裁判の費用』と思っているものの大部分は実は職業代理人に払うお金だということ、それゆえに(少なくとも給料未払いや私人間の貸金返還請求訴訟では)裁判の費用は相手に請求の『しようがない』こと、それとは全く関係ないところで『訴訟費用を相手に請求すること』は、制度はあっても実際には行われていない…ようにみえる、というのが昨日のあらすじです。

 さてさて、勝訴した判決にせっかくくっついてくる文言である、

 訴訟費用は、被告の負担とする

 という一文。これが見事に空文化しているのはなぜなんでしょう、というところからお話をすすめていきますが、この理由は単に『判決取ったあとに必要な手続きが独立して存在し、それはやってもやらなくてもいいから』と言ったところのようです。つまり、完全に本人のみで訴訟をやって勝った場合には、そもそもこうした手続きの存在を知りもしない可能性が高い。一方で専門家達はどうかとみれば、この話をいろんな同業者さんたちにすると、大体きまって

・・・そこまでやらなくてもいいじゃん

 という反応が返ってきます。確かに100万円の貸金返還請求訴訟で全面勝訴したあと、1万~2万数千円ほどの訴訟費用額を確定するために別途申立を起こすか、と言われたら、たしかに考えてしまいます。

 もう一つは、ここで訴訟費用額がいくらかかったのかを決めてもらう手続き=『訴訟費用額確定の申立』を一個の独立した事件の受託と捉えてしまうと、依頼人にとって絶対にペイしない、ということもあるとは思います。一番メリットがある完全な本人訴訟では手続きを知らないまま実行されない、手続きを知ってる専門家には頼んでもペイしない。よって誰もやらない、ということでしょうか。

 あとは、そもそも判決で訴訟が終わることが割合としてそう多くない=和解で終わってしまえば訴訟費用は各自の負担、つまり相手には請求不可になり、この申立をする機会は失われる(その代わりに解決金を増やしてもらえることもあるので、常に見捨てられるわけではない)、ことも理由と言えば理由です。これらが相まって、訴訟費用額確定の申立は広まらない、ということのようです。

 つまり、民事訴訟の知識があろうがなかろうが、実はだーれもやりゃしない。

 でも、それってあまりにももったいない、と僕は思うのです。まぁ当事務所は、300円の配達証明料金をケチって内容証明を出す事務所なので(笑)

 特に、訴訟費用が確定すればそれに基づいて強制執行はできるので、仕掛けて取れる財産があるならば見過ごす手はない、と考えています。

 当事務所でもいままでこれをやる機会がなかったのは、そもそもいままで判決で終わったことが地裁で2回、簡裁で1回(今回の事案)しかなく、先行する地裁の2回については、1回は元本と利息を強制執行で回収後、この申立を準備している間に会社が潰れた(我々の強制執行が引き金になったというご意見も)、もう1回は、通常訴訟の提起と一般先取特権に基づく債権差押申立を平行させた結果、判決を取るより先に一般先取特権で債権額の過半を回収しており、その結果やっぱり取れる財産がない状態になった、のが理由。

 なんのことはない、いままでは判決とった会社がその後生き延びた例そのものを見たことがないわけで(なんて嫌な事務所なんだろう…我ながら)

 確かに、給料未払い事案で完全勝訴したとしても訴訟費用は労働債権じゃないので、勝訴後に会社が吹っ飛べば(法的整理・私的整理含む)、訴訟費用額確定の申立そのものが意味が無くなります。つまるところこの意味でも、訴訟費用額を確定してそれに基づいて強制執行をかけることができる可能性はさらに少なくなるのです。

 だったら今後も無視していいのかよ訴訟費用は?と問われたら…そうではない、と僕も思います。ですので今回は、というより、事情が許す限り今回以降も、勝訴判決が出た場合は別途料金をとらずに訴訟費用額確定の申立を行うようにしよう、と考えています。

 たとえば今回の事案。請求したのは基本給を基幹とする18万円弱の請求、および14.6%の遅延利息です。これが欠席判決により、一応全面勝訴となりました。

 さてこれに、お客さまは実費としていくらかけたでしょう?列挙します。

  1.  収入印紙代 2000円(正確には手数料といいます)
  2.  郵便切手を使った分 4200円(特別送達4回分)
  3.  登記事項証明書代 1000円

 合計 7200円です。

 さらに。民事訴訟費用等に関する法律第2条により、原告本人が口頭弁論期日に裁判所に出頭する日当として、

 3900円

 加えてこの方、実は県境を越えて裁判所に来てますので旅費が請求できることに。民事訴訟規則第2条1項1号および別表第1により、これが1㎞あたり『30円』。よって、おそらく

 480円

 さらにさらに。訴状の作成および提出にも費用は請求できますので、同規則別表第2により

 1500円

 思い出したように出てくるのですが、登記事項証明書は『法務局』で取ってます。よって同規則第2条の3により、登記事項証明書の交付に要する費用の額として

 160円

 以上の、いわば見えない費用を合計すると、3900+480+1500+160=6040円。結構な金額になります。よって、債権差押え命令申立てで請求できる元本を18万円とすると、請求として

 18万円で終わるか

 18万円+7200円+6040円+8760円(18万円に対する、4ヶ月分年利14.6%の経過利息)=20万2000円請求するか

 は、結構な違い、になってきます。少なくとも僕には、無視できません。


ちなみにこの事案で僕がもらったお金は…

 まず着手時。

 東京-この簡裁最寄り駅(出張相談実施地)までの普通列車往復運賃として

 2900円

 書類作成開始時の料金 18万円×6%弱として

 1万円

 合計12900円。出張相談は実施してますが、相談料金は請求せず。これも、いつもどおりです。

 次に、強制執行で回収できたときに

 書類作成終了時の料金として

 18万円×10%=18000円(訴訟費用額確定の申立書作成の料金含む)

 債権差押命令申立書作成の料金として

 1万円

 合計、28000円

 総計 40900円になります。先ほどの20万2000円が回収見込額だとすると、

202000-40900(当事務所への費用)-7200(使った実費)=153900円が手取額。当人が回収できないと認識した=依頼のきっかけになった給料未払いの額は18万円なので、この8割以上は手取りとして確保できる、ということになります。

 反対に会社は、訴訟費用を取られ利息を取られ債権差押え命令申立費用は取られるということで、最終的には21万円程度ふんだくられることにはなりますが、これはべつに『ざまーみろ』と言っておけばそれで済みます。自業自得です。

 手取りといえばさらに制度上のおまけがつきます。ここで差押え命令により回収できる金額=訴訟上の請求額は、所得税や社会保険料控除『まえ』の金額です。よって実は、これらを控除されて支払われる場合の金額と回収できた手取額はほとんどかわらない、という可能性もこの例では一応あり、になってきます。

 この事例では、たまたま同時期に東京や宇都宮まで行く用事があり、そちらでは交通費(と、言っても高速バス代を基本としておりますよ)をもらっていたために、それと相乗りさせて交通費を圧縮したためにこの程度の請求で済んだ、ということもできます。ただし青春18きっぷが出る時期を選んでもらえれば交通費など2往復4600円で済み、実はこの事案でかりに名古屋-東京間高速バスを使って請求をかけても交通費としては2往復2万円程度しかかからない…ことにはなっています。

 まぁ、決して安いとはいいませんがこの程度なら、コストパフォーマンスにご注目いただいて受け入れていただけるのではないか、と思うのですが、どうでしょう。

 ところで友人の司法書士さんの言によれば、過払い金返還請求訴訟の裁判書類作成でも報酬として回収額の25%は取るののだとか。

 ・・・うーん、だから、なんでしょうか、最近コメントを頂いている『2万円』さんは、自営業者として大変優秀な経営者なのですが、当事務所の料金設定がおかしいといつもお説教をするのです。それを適当にはぐらかしながらお酒をお食事をいただくのがいつもの夜の宇都宮での風景。

 まぁ、いいじゃありませんか。それで事務所がつぶれるわけじゃなし、 ね?


2015.04.18 追記

訴訟費用と訴訟訴訟額確定処分の申立書作成については本人訴訟を完遂された方を中心に関心を持つ方があり、当ブログのいくつかの記事がお役に立っているようです。

東京~大阪間の裁判所を対象に、このたび訴訟費用額確定処分申立書作成だけを受託するサービスをはじめました。

訴訟費用額確定処分申立書作成のページ

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コメント

旅行書士さま

 2度目の投稿、「2万円」です。

 えーと、私が勝訴した場合は、美味しい食べ物が待ってますので、報酬+アルファということですね。

 いつも、私が酒の席で申し上げているのは、お説教ではありませんよー。

 だってー、私が以前相談した、開業弁○士の先生方は、皆一様に「あー労働訴訟って、勝ってもトントンか経費倒れで赤字になると思うから、やめたほうがいいよ」だそうですよ。(最低、着手金を○十万~に設定しているので、一般労働者は普通に依頼なんか出来ませんよ。)

 それからしたら、「旅行書士」先生はなんと良心的なんでしょうねー(すごく遠い目)いいんですかねーこの金額設定でー?

 老婆心ながら、心配しておりますです。ハイ。


 ところで、業務連絡です。例によって「2万円」で旅行書士を買わせて頂きます。
 もう振り込まれておりますので、確認の程宜しく                       以上


 

昨日、ブログのテェックをさぼっていたら2部構成の記事が出ていてびっくり!(ちゃんと毎日チェックしなくては☆)

敵は監督署の指導ぐらいですんなりと給料を払うような社長じゃないし、かといって裁判となると弁護士、弁護士と言えば費用が高い、だから諦めるしかない、でも諦めたくない!そこで、インターネットで検索したら…
少額訴訟? 弁護士はいらないの? 費用は?

電話で問い合わせ、その後直接ご相談して、ホントにそれでやっていただけるのですか?という感じでした。
世の中にはうまい話もあるのです。

事務所の料金設定がとてもおかしいおかげで、私は先生に依頼する事ができ、全面勝訴することができました。『ざまーみろ』と心の中で言ってやりたいので、この先の手続きもどうぞよろしくお願い致します。

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