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オーダーメイドな書面をどうぞ

 給料未払いにあった人が本人訴訟でそれを解決しようとするとき、『(訴状などの)裁判書類の書式の見本』を探すことは、よくあります。当事務所ウェブサイトへのアクセス解析でも、

  • 給料 訴状 見本
  • 賃金未払い 少額訴訟 書式
  • 給料請求 支払督促 例

 といった検索キーワードでたどり着いてくる、ということはよくありますし、提訴の前段階で用いる内容証明について解説したコンテンツを数時間・あるいは延べ数日間うろうろしておられる方も見受けられます。

 大丈夫なのかね?この人たち、と思わずにはいられません。当事務所では『すでに書類を作った(正確には、作ろうとして破綻した)』人からの相談を受けることも月に一度ぐらいずつありますが、みなさんそれぞれ悲惨なことになっています。

 確実にまちがえるツボ、というのはあまりないようです。強いて言えば、頻発するのは『月給制をとる賃金体系下で、通常の労働時間1時間あたりの賃金が正確に計算できていない』パターン。これは時間外労働に関する全ての請求の基本なので、正確に出来てない人には

『あなたには、現時点で、自力での訴訟維持は困難です。自分で何か調べて解釈し正確に実行してわかりやすい書類を作る能力がありませんから』

と断言します。とは申せ、これがちゃんとできてきた、という人は割合として20人に1人以下、ですが(苦笑)

さて、そういわれても傷つかなかった人、あるいは最初からその作業を自分では行わないことを選んだ人だけが当事務所のお客さまになってくださるのですが・・・

 だからこの事務所はいつもあんまり忙しくならない(なれない)のだ、というのはさておいて。

 首尾よく受任して訴状作成を開始した場合でも、一言で『時間外労働の割増賃金の支払いを求める訴訟』といっても文字通り千差万別、本文から別表まで一度やった仕事の成果を他に流用できることがほとんどありません。

 これまでの仕事のなかで、裁判所の受付担当者に『わかりやすいと言われた・態度が好意的に変わった』等々、お客さま&書記官から好評だった訴状、というのは請求の類型ごとにいくつかあります。そうしたものを参考に、さらにブラッシュアップして行くのですが・・・

 目指すところがそもそも

  • 書記官から見てわかりやすい(お客さまに好意的な感想を言ってくれることが理想)、法的に手落ちがない、ということに加えて、
  • 口頭弁論期日で、裁判官からお客さまになんの質問もでない
  • お客さまが読んで、理解できる

 このあたりにあると、お客さまの理解力あるいは法的知識に応じて、訴状はだいぶ太ります。提出前に一度必ず訴状案をお客さま方に送って、それを見てもらって、論理構成としてわかりにくいところや事実と違ってしまっているところ、その他のご希望を聞いて、いわば仮縫いを繰り返してそのお客さまだけの書面を仕立てていくので、結果としてだいぶ毛色の変わったものになってくる、あるいは、僕の個人的な試行錯誤を紛れ込ませることもあったり。

お客さまのOKがでないかぎり出荷しないのは当然として、このあと僕が理想にするのは『お客さまが訴状を出しに行ったとき、受け付ける担当者から何か好意的一言をもらえること』です。

 なぜなら彼らから見てわかりやすい、真っ当な書面に仕上がっている、そうした書類だと認識してもらえれば、書類を出しに行ったお客さまがその対応を見て、この怪しい代書人はどうやらちゃんと仕事したらしい、と安心してもらえますからね。もちろん裁判所の隅っこで仕事をさせていただく者として、裁判所職員の皆様の負担軽減にも協力せねばいけません。結局のところ、裁判所だけ相手にするなら書式の空欄に数字を落とし込んで適当に書類作成、というのもできなくはないのですが、『それを作成する過程での、お客さまが知っていなければならないことの説明』を書類に落とし込むと書類が膨張する、ということでしょうか。ものの本やインターネットで入手できる必要最低限の書式のボリュームの、数倍に

 さて、今週は民事調停申立書1件、訴状1件、準備書面1件をそれぞれ出荷、というのが僕のノルマです。

 現時点でなんとか前2者を発送してお客さまの返事待ち、あと1件の作業中。事案はもちろんすべて『給料未払い』そして書いてることはもう、全然違います。

  •  サラ金並みの利息計算を駆使するもの。
  •  契約所定外の出勤だけで7種類に分かれるもの。
  •  マイナーな下級審の裁判例を引っ張り出す必要があるもの。

 そしてこれらを、事案ごとにまったく異なる過程をたどりつつもそれぞれ結果としては順当な方向に持っていく、その過程になんとも言えないやりがいを感じているのですが、

 これじゃぁまず・・・補助者をン十人使って目指せ年商○億円、やってることはもっぱら債務整理だけ、センセイがいなくても補助者だけで仕事が回るよ、などという同業者とは、事業規模だけ見れば象とアリの違いが永遠に続くだろうな、と思ってみたりします。

 心境として、ときに複雑、です。レディーメイドの紳士服チェーンとフルオーダーの仕立屋さんほどの激しい競合にはないので、生存の危険はないのですがね。

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