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勝訴判決はお好き?

 それが『判決』だと、無条件で喜ぶわけにもいかないのよ、という話です。

 さて先週もう一件、地裁で判決を取りました。未払い給料に関するこちらの請求をすべて認める、文字通りの『完全勝訴』の判決です。つまり、百○十万の支払義務+数ヶ月前から起算する14.6%の利息つき。

 さあ、これが全然嬉しくないのです。

 言ってみれば、部屋の中にいたゴキブリを追い回して新聞紙で思いっきりひっぱたいたら、潰れたゴキブリが壁紙に飛び散ったのを見ているような気分。

 ・・・一定の成果はあった、だが強烈に憂鬱だ、ということ。

 いまご自分の給料未払いでお悩みの方からすれば、あるいはうらやましいのかもしれません。ですが全然そうではありません。問題はゴキブリを潰したあとの壁紙掃除=勝訴判決を得てしまった後の利益実現(と、いうより復旧)にあるからです。

 今回の勝訴事案の特徴。

○当事務所では珍しく敵も本人訴訟だったが、相手の社長が強烈に馬鹿だった。具体的には

  •  創業3年弱で最盛期の年商とほぼ同額の債務超過に陥っているといえばわかりやすいのだが、言ってしまえば『労働者として使われるにはいいが経営者にはなっちゃいけない』タイプ。会社としてはこの馬鹿の放漫経営のみを理由として、すでに事実上終わっている。
  •  自分の過ちが認められず駆け引きもできない。よって和解をもちかけて支払額を減額する、という作業が行えない。答弁書すら出さず手ぶらでやって来て裁判官に自分の都合のみをぐだぐだ述べるが、しびれを切らした裁判官に『契約上(請求額を)減らせというのは難しいですよ』と言われ、一瞬で斬られる
  • 紛争全体を見渡したトータルコストの最小化、などという発想は薬にしたくてもないので、『遠くの会社を原告の住所地で訴えたのに、わざわざ200㎞向こうから交通費自己負担でやって来て、しかも100%負けて帰る』欠席判決でもおなじ結論が出たので、もう来るだけ無駄(冷笑)

 当然ながらこうした場合裁判官は『じゃ和解が出来ないということなので判決だしますね』となって・・・原告完全勝訴(嘆息)。

 しかしながら、支払意思のまったく見えないところで勝訴判決だけがでて、担当司法書士は○千万円債務超過の潰れかけ零細ベンチャー企業を相手に引き続き策を巡らせなければならなくなる、ということで、僕は傍聴席で既に死にそうになっておりました。

 さあ、実はこれからが仕事、ってわけです。しかもこの呑気な依頼人からは、出張料金がもらえない(号泣)強制執行で利用する裁判所はその、『200㎞向こう』なのに・・・

 当事務所創立以来の短い歴史と少ない依頼件数のなかで、裁判所への手続きを行って勝訴判決をとったのは本件含めてたった2回。いずれも潰れかけ会社のお馬鹿な素人社長が本人訴訟で出てきて、第一回口頭弁論期日で終わった事案です。結局強制執行しないと回収できない、んだろうな、と思ってもいますし説明もしています。これに対して和解で終われた回数は4回。いずれも弁護士が向こうに回ったもので、こういう形でみると弁護士様が向こうにつくのも悪くないな、と思えます。あとは一般先取特権でいきなり強制執行をかけたのが2回。いま継続中の案件2件にはいずれも会社側に弁護士が付いてすでに和解希望が向こうからでてており、新規に書類作成中の4件のうち3件は、請求額の大きさからしておそらく、敵には弁護士がつく事案です。なお、完全敗訴・敗訴的和解は皆無で、訴訟手続き中に会社が破産したことによる中止、が1件。これで労働紛争関連の裁判手続きの成果は全部です。

 その他大多数の依頼(延べ数十件ある)は、実は極めてソフトな手段(労基署・内容証明・電子メール・なにもしない等々)でちゃんと回収が出来ているのです。つまり勝訴判決というのは、労働紛争が裁判手続きを利用せざるを得なくなったごく少数の不幸な人たちの、そのまた特に不運なお方だけが取れるもの・・・だと。

 とは申せ。判決取ってしまったものはもうしかたがないので、淡々と強制執行していきましょう。会社だけでなく、個人からも連帯保証をとってます(笑)ま、このへんの策を巡らしたのは他ならぬ僕、なんですが、

この辺のことを、親友に愚痴混じりに話したら、

「そりゃ、刺されるよ(笑)」

なるほど。あちらにはあちらの都合も感情もございますからね。


 さてこれからは、年14.6%もの利息と百数十万円の請求額と個人保証と勝訴判決をひっさげて多重債務者をいじめる書類の作成者、というのがこれからのワタクシの役回り、になりそうなのですが・・・

 最近多重債務がらみの依頼は全くないし、実際のところ受けたいとも思えない、それどころかこの社長に破産されたらメーワクだ、と言い切ってしまえそうな自分が、ちょっと恐いです。発想として不謹慎だ、というのは簡単ですが、零細債権者たる労働者の味方をしていると、それこそどこかから借りてでも自分の依頼人への未払い給料だけは払って欲しい(もちろん思うだけです。でも払ってもらえるならサクッと受け取りますね)。

 だから、というわけではありませんが、会社設立と多重債務については、なんやかやと理由をつけて『一見さんお断り』にしております。安易な起業にも安易な破綻にも、くみすることはできないので。

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