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社会保険労務士はいかがですか? -司法書士なあなたへ-

 緊急だった書類の起案は、納期を18分遅延するも無事終わり。昼ご飯を食べてお茶を飲みながら、不快な依頼を断って(当事務所規定以下への値切り交渉なら、よそへどうぞ♪)、とりあえずは大変いい気分の昼下がりです。

 さて一服ついでに、数ヶ月ぶりにやってきた当ウェブサイトへのリクエストにお答えするとしましょう。掲示板にいただいたのですが、司法書士と社労士兼業について話してみよ、というのが今回のご注文です。

 ご興味をお持ち頂けるだけで、そりゃ大変ありがたいことだと思います。おっしゃるとおり、司法書士と社会保険労務士を一人でやっている、というのはマイナーですからね。平成16年11月現在の愛知県司法書士会の名簿をみても、愛知県内の諸先輩方で社労士兼業と表示しておられる方は片手の指で数えるほどしかおられません。

 だからと言って、おどろいてもらっちゃ困るのよ、という話です。司法書士の資格取得者を基準に考えた場合、この両者を兼業するメリットはかなり大きいと言うべきです。

理由です。

 事業主側について、会社設立→労働社会保険新規適用→労働保険の年度更新や健康保険(厚生年金)の定時決定など、毎年発生する定型的イベントで安定的収益を確保することも可能ですし、

 僕のように労働側について、労働相談→労基署への申告→蹴られたら本人訴訟、でお客さまを徹底的に支援することも可能です。

 これらは両極端な例でしょうが、『あるお客さまに、あるライフイベントが発生したときに、必要になってくる知識や技能』の組み合わせ、として世のさむらい業者達を見ていった場合、マイナーな割に使える、ことは推測できる・・・と思いませんか?

 もう少し穏便な実例を出しましょう。定年退職前のご夫婦を想定してください。

相談第1回。退職前に年金相談実施。旦那さんと奥さんの厚生年金受給見込額から、世帯でどれだけ受給できるか算定。併せて、退職後の健康保険・雇用保険の扱いについて指導。

第1の依頼。旦那さんの退職金で、抵当権抹消。住宅ローンを一括返済したため。

第2の依頼。老齢厚生年金裁定請求。

~2年後、奥さんについても年金相談開始。当然ながら、年金裁定請求へ。

・・・ここまで気に入って使ってもらえると「じゃ○十年先の相続登記&遺族年金裁定請求もやらせてくださいね。なるべく先にしてもらってかまいませんから」と言ってもOK(笑)

 その他、

  • 協議離婚公正証書案を持ち込んできた人に死亡時の遺族厚生年金との調整条項を入れるよう策をめぐらしてみたり、
  • 住宅取得の登記の相談に来た人に「ところで、いまご加入の生命保険は、公的年金からの給付を考えて入ってますか?場合によっては家一軒建つほどの無駄金がでるんですが」と言い放って顔色を変えさせてみたり、
  • 相続の相談に行った老人ホームで、お客さまを脇に置いてそのお子さん(と、言っても60代)の年金相談に突入して未支給年金を発見してみたり、

 司法書士事務所にやってくる老若男女とわずいろんな『ちょっと役に立つ、お話のきっかけ』を、社会保険労務士という職能は極めて豊富にもっている、と言っていいでしょう。もちろんそのいくつかは、依頼につながります。

※ただし社会保険からの給付を一切無視して債務整理の計画を立てる司法書士事務所、なんぞにおじゃまして話をきいていると、思わず卒倒しそうになることもありますが。

 こうした点で社会保険労務士と司法書士の組み合わせは、不特定多数の個人客を相手にのんびりやっていく事務所の構築に極めて適すると言えます。これが特許・税務・測量だと労働者個人に関わりがなさ過ぎるし、官公署手続きも同様、です。

 ここまでは一般論です。ここからは手前みそです。

 上記については司法書士と社会保険労務士の資格がいわば『1+1=2+α』程度の効用に過ぎない=資格者2人あつめればできなくもない、のに対し、労働紛争にまとをしぼった裁判書類作成、しかも100%労働側、というのは、この2つの資格が強烈に生きてくる分野です。というより、この分野において『素人さんの背後に立ってプロフェッショナル(敵の訴訟代理人)と戦わせ、所期の成果を収める』ことを目的として、当事務所は存在しています。元はと言えば○○書士の補助者時代に、1年の内に賃金未払いと即時解雇を2回くらったのが、僕がこの事務所をつくったきっかけなのですが。

 この問題に対処するにあたっては、司法書士の知識だけでも社会保険労務士の知識だけでも対処不能です。もちろん大きなローファームなら、専門家を2人あてがってやることは可能でしょうが、相談実施に要する賃金単価が必然的に上がります(労賃で競争する場合、この業務分野では大きいことがいいことではありません)。

 例えば。賃金未払いになったといって、お客さまが相談にきます。紛争初動でなにを仕掛けるか、ですが、事案ごとに全然違います。

  •  電子メールで支払催告
  •  単純な内容証明
  •  内容証明をもってする提訴予告通知&提訴前の照会
  •  源泉徴収票の交付の請求
  •  離職票の請求
  •  雇用保険被保険者資格の確認請求
  •  雇用保険被保険者資格の確認照会
  •  支払義務だけは認める書類への、署名捺印の要求&文案作成
  •  支払督促申立
  •  訴訟提起(今までのお話を聞いて、関係が破綻していると判断できる場合ですが)
  •  一般先取特権に基づく債権差押え(同上。場合によっては会社が傾きますが)
  •  何もしないで待ってみる(笑 これで成果があがることもあります)

 ざっとこれくらいは考えます。当然、実際にそれぞれ複数回やったこともあります。(一般先取特権の行使は、ある意味『一度使うと、くせになる』面があります)

 これらは、労働社会保険諸法令の知識と民事訴訟の知識をつかって、手持ちの証拠や相手の状況やお客さまの懐具合(あまりこれを優先させたがる方には、本稿冒頭のようにお帰りいただくことになりますがね)その他諸々を勘案して、一番よさそうな(常に一番いいとはかぎりませんが)ものを提案し実行するのですが、ときには・・・

○失業給付だけは受けたいので離職票をください、と労働者に言わせて離職票をもらうのですが、実は雇用契約の存在と賃金支払いの額と未払いの期間を立証する公文書が欲しいのよ♪とか。もちろん、離職票の提出先は公共職業安定所ではなく、民事訴訟の管轄裁判所、で。このあたりは初歩の初歩です。

離職票だけでも、もういくつかのバリエーションがあって、上手く使えば敵に回した社長とそっちについた弁護士をまとめて出し抜くこともできます。なおこれらの戦略立案および戦術行動にあっては、

代理権は要りません(笑)

ワタシ簡裁代理権持ってません(爆)

 だって必要なのは、書類作って『これやって来てね(実際にはもっと複雑ですが)』とお客さまに頼むだけなので。逆に代理でどうこう動いたら、労賃に制約されてコストパフォーマンスが落ちます。もちろん教科書的正解をいうならば、簡易裁判所に係属する労働紛争の訴訟や民事調停で訴額140万以下なら代理は可能ですし、任意での交渉も可能ですが・・・

恐くて使えません(汗)

 当事務所で書類作成を行った賃金未払い請求の訴訟において、『簡易裁判所から地方裁判所への裁量移送』が結構な頻度で発生するからです。去年1年で10件弱の提訴について、実際に移送を食らったもの2件、和解できなければ移送と言われて相手が折れたもの1件、計3件ですので30%を上回る割合で『地裁に吹っ飛ばされる可能性あり』だ、と。それに、書面主義をとってくれる我が国民事訴訟では、多少時間をかけて念入りに書類を作れば、たいていの弁護士は向こうから和解を口にします。または、裁判官が適当なタイミングで。債権差押申立にしても、申立書の作成と提出が出来れば代理権がある必要はないし。よって訴訟代理そのものには、魅力を感じません。

※その意味で現在、業界団体としての社会保険労務士さんの集団が簡易裁判所での代理権獲得を目指しておいでであることに、非常に不可解なものを感じたりもします。むしろ全審級にわたる補佐ができるようになればずっと使いでがあるのに、と。

 ともあれ、現行制度上『社会保険労務士の知識と司法書士の技術で、給料未払いのための裁判書類を作成し本人訴訟を支援する』というのは、当然に可能であって無理が無く、しかも人数だけは多かったり名前だけは有名だったりする法律事務所の弁護士さんを敵に回して訴訟初体験の素人さんが勝つところを見られる、大変いい仕事、です。

 とりあえずこれで、掲示板でご注文いただいたことへのお答えには、なっていようかと。あとは時折でてくる話のネタを、このブログで時々お見せすることもありましょう。

 さて来週は、大阪へ行ったその足で栃木へ出張です。

大阪へは、一般先取特権で差押えた預金債権の請け出しに、お客さんと。

栃木へは、第一回口頭弁論で簡裁から地裁に移送を食らった割増賃金支払い請求訴訟の傍聴に。

 ま、たしかにマイナーなのですが、それゆえに楽しいこともたくさんあるってもんです。

 儲からないんですが(上記とも出張日当無し・交通費は高速バス利用なんで)

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コメント

旅行書士先生、詳細に書いてくださってありがとうございました!
とても興味深いです。
司法書士と社労士のダブルライセンスはメリットありですね。
依頼者の方に喜んでもらえるような仕事ができるのでやりがいがあるように感じました。
私も将来的にはぜひチャレンジしたいです。
まずは、司法書士取得ですが。
それから、今まで司法書士は簡裁代理権が無ければ訴訟において依頼者をサポートできないと思い込んでいましたが、そんなことは無いのですね!
たしかに必要的口頭弁論とはいいながら現実には書面主義ですもんねぇ。
なんか、がぜん受験勉強にヤル気が出てきました。
これからも応援してます!

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