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給料未払い:内容証明の使用で何が起きるか

給料未払いが発生していて、内容証明での請求を考えている方へ

 『内容証明』で検索すると、内容証明を作成する・作成の相談に応じるとうたう業者はいくらでもでてきます。『給料未払い 内容証明』でも同様です。

※弁護士のそれは3~5万円はかかるのが相場ですので、それと違う業者さんについて言及しています。

 彼らのホームページを見ていると、給料未払いをふくむ民事紛争の大部分は内容証明で解決できそうにみえます。もちろん世の中そう甘くはありません。

 そもそも彼らが給料未払いや不当解雇などの紛争の相談を行える根拠が不明なのですが、あちらの業界の広告規制はとても穏便なものなのでしょう。

 さて、彼らの失敗後つまり内容証明が望んだ効力を発揮しなかったときにはじまるさまざまな法的手続きの相談を担当する立場の僕からは、むしろ未払い給料の請求に関する内容証明をだしたあと、実際にはどうなるか、を述べていくことにしましょう。

給料未払いをめぐって会社側に放たれた内容証明郵便は、労働者の思惑を離れてどんな事態を巻き起こすのでしょうか?

 なお、当事務所は給料未払いに関する労働側での労働相談が専門です。給料未払いでお困りの方へのコンテンツとしては、この記事のほかに『こちら給料未払い相談室』・『ひとりで できるもん!?内容証明 -労働紛争編- 』も併せてごらんください。

1.まれに起きる、だから奇跡

 給料未払い発生との相談を受けて、まず直接的な給料支払請求という形をとらずに「労働者側としては○○円程度の給料未払いがあると考えていますが、この点につき裁判外で話し合いを行うことはできますか?」という趣旨の内容証明郵便を送って実際に裁判にせずに任意に交渉を開始させ、結果として数百万円単位のお金を支払わせる合意を成り立たせるとっかかりにできることはあります。給料未払い問題でも、うまく使えば内容証明も馬鹿にはできません。

 ここで気を付けなければならないのは、内容証明の文案として漫然と未払いの給料を全額請求する形にしていないことです。相手が分別のある会社なら、これをきっかけにして未払い金の支払い交渉が再開することがあります。

給料支払いを催告する凡庸な内容証明の文案のように「○月○日までに、金○○円をお支払いください。支払いのないときには法的措置をとります」などと間の抜けた二者選択(全額はらうか裁判か)をとるようでは、こうした話し合いを始めることはできません。

ところが安直な内容証明作成業者は、こんな二者選択を迫る内容証明文案を作ってしまいます。法的措置に関与できる立場ではないのに。

2.支払い開始

 請求額通り未払いの給料の支払が始まってしまうパターンです。一括であることも分割の申し入れであることもあります。

 支払に応じてきた相手は水商売・ホワイトカラー・ブルーカラー等と、さまざまです。
 僕から見て比較的アウトローな世界に近いと思われた夜の商売の店長が、しかも退職後の労働者への給料支払いに応じてきたのは特徴的です。

これは労働基準監督署に、給料未払い事案として労働基準法違反での申告も行ったことが効いたのではないかと考えています。上記の請求金額は大きくても40万円弱〜20万円程度なので、未払いとはいえちょっとした企業なら払ってしまえる金額です。これも関係があるかもしれません。

 なお、給料未払いが主たる問題である内容証明作成の相談で、深夜・時間外の未払い割増賃金が請求できそうでも、内容証明郵便では請求しないことをお客さまに提案することが多いです。もともと当人すら気づいておらず、別に自分が請求したいのは当初未払いと思っていた給料だけ、あとはどうでもいい、という方には、特にそうしています。

ことを単純にしたほうが、相手も対応しやすいですからね。ただし訴訟になった場合には、未払いの給料に加えて残業代や立替金の請求やらをトッピングするコースもご希望により選択できます(笑)

3.なしのつぶて

 給料未払いで内容証明が使われる場合、発生する頻度が高いです。
 というより会社側から見れば労働者側からの内容証明を無視することは、ほとんど常に合理的な選択だと、相談の際にも説明しています。

 不謹慎ではありますが、僕でも仮に労働者側から未払い給料請求と称する内容証明を送りつけられた会社側から相談を受けた場合、状況によっては「放っておいていいですよ、そんなもん」と助言することはあるでしょう。どういう判断を行ってそういう結論にたどり着けるか、というのはいろいろ見るところがあるのです。
 いずれにせよ、給料未払い事案で内容証明による催告をおこなっても直接、会社になんらか義務を負わせることができるわけではありません。
 経営が苦しくてお金が払えない場合でも、なんとなく支払いたくない場合でも、これは同じです。

 当事務所のコンテンツ「ひとりで できるもん!?内容証明」で、給料未払いに関する内容証明の自作を勧めているのは、受け取った方が放置してよいような状況下で内容証明郵便の作成をあえて業者に外注するメリットが見いだせないからです。

 ここで挙げた会社側の対応パターンの一種として、内容証明郵便そのものを「受け取らない」というものもあります。主として小さな企業で留守中に配達され、不在で郵便局持ち戻りになってしまうときに発生します。ですから送り先の定休日に到着してしまうような日に内容証明を発送するのは、避けなければいけません。もっと積極的に受け取り拒否する可能性もあります。

4.状況の、急激で大幅な悪化

 具体的には、未払い給料の請求をする内容証明を受け取った直後から、その社長が「こんな(請求をした)奴は雇っていない」と労働基準監督署の担当官に言いだしたり、「雇っていないことにしろよ」と従業員に言い含めたり、といった事案が今年は2件ありました。

 特徴としては、もともと雇用関係や就労時間の立証が難しいときに、つまり、経営側からみて給料未払いをごまかせると思いやすいときに発生するようです。未払いの給料があると称して文書を送ってきた労働者に対して、お前なんか知らんと言ってしまうというのは労働者から見ればかなり強引に思えますが、業種によってはよくある話しだと考えなければなりません。

少なくとも労働者であることを否定すれば労働法の規制を免れられる、と順法精神に劣る経営側は考えます。給料未払いに加えて残業代や解雇予告手当の請求を受けた経営者の対処として、労働者性の否定は魅力的選択肢なのです。このことは、内容証明作成をめぐる相談の段階から考慮しておく必要があります。

 怪しい新興企業と水商売で、これにはまってしまいました。給料未払いをめぐって安易に内容証明の利用をおすすめできない理由の一つはここにあります。

やぶをつつく前にどんな蛇がでてくるかを予想できないなら、給料未払いであれ貸し金の請求であれ内容証明の利用は思いとどまらなければいけません。

5.弁護士による反撃

 一つは僕がくらった事例です。当ウェブサイト「『おはよう』のない事務所で」にその顛末を記してあります。

 まだ開業するまえのこと。かつて勤めていた○○書士事務所に未払い割増賃金&解雇予告手当の請求を内容証明でおこなったら、相手は弁護士を代理人に立てて内容証明で支払い拒否してきた、というものです。これに対して最終的には少額訴訟を起こし、請求した金額より多い金額を払わせて和解するという形で結実しています。

 もう一つは最近発生した例です。
 ある内容証明作成業者が、相談者のいうままに『未払いの賞与○○万円払え』という催告書を作成送付しました。会社は当然、この内容証明を黙殺。
 この時点で当事務所が相談を開始して、未払い賞与ほかに賞与の約2倍の割増賃金が未払いであることを発見します。請求に盛り込んで通常訴訟で提訴しました。

 その後相手についた弁護士が答弁書でいうことには「原告は先行する内容証明で未払い割増賃金の請求をしていない。(つまり、未記載の未払い金を請求する意思は当初からなかったはずだ、と主張したいらしい)」とのことです。

 こんな主張が裁判所で通るはずもありません。でも、こんな間抜けな内容証明の尻ぬぐいや、裁判所に馬鹿な主張を持ち込まれて対応を強いられるこっちはえらい迷惑です。

 こんな内容証明2枚で1万8千円もとり、お客さまに面談もしない業者。北陸地方某市にいまも健在のご様子です。給料未払いをめぐる事態の解決に全く寄与しない、それどころか悪化させているように見えるこの商売、なんとかできないものなのでしょうか?

 上記の通り迷惑といえば迷惑なのですが、もし相手がどこかで何か反論してくる、というのは結構なことではあります。なんらか隙をついて、再度反撃できるかもしれませんから。
 だからといって、20万30万の給料未払いで普通の内容証明を作って終わりにするような業者に1万円以上出しちゃいけないね、お客さんだまされたのと違います?というのが、相談兼尻ぬぐい担当者である僕の正直な気持ちです。

6.会社が自作した反論書の送付

 社内に法務部門があるわけでもなく、かといって専門家に法律相談する気もない場合に、こうしたものが出てきます。
 僕に言わせれば、カモがネギしょってきてくれたようなもの。たいていの場合、法的には穴だらけの世迷い言がならんでますので、後日訴訟を起こす際に証拠として添付します。むしろ歓迎な対応です。

 ただし、その後の対処を労働者側が誤ることがあります。具体的には自分で作った内容証明で反論・再反論・再々反論を試みて、お金の無駄を延々と重ねてあるのをみたことがあります。

労働相談の際に「これ(内容証明のやりとり)は無駄だったってことですかね」と聞かれたので思わず「ハイ!」と断言しました。そんなことやってるお金で支払督促が出せるぞ、と。こうした場合には専門家への相談を含む別の手をさっさと考えないといけません。

 おおきく分けると、労働者側から給料未払いに関する内容証明を送った場合の企業側の対応は上記の通りです。
 結局のところ、普通の人が普通にアプローチした場合に受け入れられる結果は2.しかなく、しかもそれを積極的に実現する方策はまったくないといってよいです。

どちらかというと、給料未払い問題において労働者が内容証明でなにかできると本気で考えない方がよいだろう、というのが労働相談担当者としての僕の意見です。

だからというわけではありませんが、僕のところでは給料未払い事案で時効の成立を阻止する必要がない場合、普通郵便やファクス、あるいは簡易書留で催告書を送ることが多いです。

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コメント

パート賃金の未払いを喰らいそうな状態で、ネット検索をし、御社のサイトに巡り会いました。
労基署は「給与支払いがされなかったら内容証明郵便出して、それでも給与が支払われなかったら来て」というアドバイスをくれましたが、あまりあてにならなそうですね・・・。
パート先は会計事務所です。今まで何人もの社員・パートが辞めています。みんな泣き寝入りだったのかも。経営者である先生は頭いいケチンボだから、私ごときが抗議したところで、負かされてしまいそう。悔しい。
泣き寝入りを堪えきれなくなったら、相談に伺ってよろしいでしょうか?

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